資料(写真・グラフ)の読みとり能力を数字で表す

      松本 俊樹
 
1 資料(写真)読みとり場面で指導と評価の一体化を図る
 授業の導入で1枚の資料(写真)を示す。「わが国の食料生産(米づくりのさかんな地域)」である。米づくりの写真を示して次のように問う。

 写真を見て分かること、気がついたこと、思ったことをノートに箇条書きにしなさい。
 
 どの資料読みとりに際しても共通した問いである。(向山洋一氏による)
 なぜこの問いなのか。次の点で評価に関わる。

@ 授業導入場面では児童の経験
 や情報の差が大きい。
  この問いによって児童の経験
 や情報をできるだけたくさん引
 き出すことができる。
A どれだけ書けるか(質・量)
がそのまま写真資料読みとり能力
として評価できる。
 
 この問いは3つの内容を要求している。まずは「分かること」。これはかなり高度な内容といえる。農業についての知識や経験がそのまま求められる。「米づくりのさかんな地域である」「耕地整理がなされている」などの意見である。次に「気がついたこと」。これは「分かること」より意見が出やすくなる。「発見」「疑問」「はてな」の類である。「山がある」「川がある」と言った意見も「気づき」に入る。さらに「思ったこと」。「思ったこと」であるから要するに何でもいい。知識、情報が不足していても「思ったこと」は出すことができる。しかし、この「思ったこと」を手がかりに重要な追求課題を設定することができる。
 例えば「この仕事は簡単そうだ(難しそうだ)」と言う意見に対して賛成か反対かの立場に立たせその理由・根拠を調査活動させることができる。調査活動の中で「どのような仕事があるのか」「仕事に対してどんな工夫があるのか」「問題点は何か」などの
情報を得ることができる。
 「ノートに書きなさい」と作業指示がある。実際の授業場面ではこのような作業指示も重要である。意見を持った児童に発表させるだけでは一部の児童だけの学習活動に陥る。全員の授業参加を促すために「ノートに書きなさい」と指示するのである。
 ノートに書かせるからあとでも評価できる。もちろん児童自身に自己評価させることも可能である。
2 量も質も充実させる
ではどのように評価するのか。まずは「いくつ書けたか」と数を問う。自分の学年分(5年生なら5個)程度は書かせたい。やがて1枚の写真から5分間程度で(学年×5)個は書けるようにしたい。このような数のめあては児童にも示す。なかなか書けない児童もある。このような児童にはいくつか例示を示せばよい。例示は教師が示してもよいし児童が示してもよい。児童が示す場合は高度な例でなくてもよい。「山が緑だ」当たり前のことであるが「すばらしい」とほめる。「緑だから他のことも分かる」と言うようになぜよいのかも示してほめる。
 次にどのような読みとりをすればよいのか教える授業を行う。

ア「季節はいつですか」
イ「この写真はどの方角から撮っ
 た写真ですか」
 
 「季節」を問うことで箇条書きにした情報の取捨選択をさせることができる。「山に雪が残っているから春である」「水田が緑いっぱいだから夏である」など。庄内平野の米作りの学習では米作りのこよみも検討させることができる。このようにどの資料をどう解釈したかが評価のポイントとなる。
 「方角」を問うことも箇条書きにした情報の取捨選択をさせることができる。「山がある」「川がある」と発見した児童は「何という山か」「何という川か」を確定させなければならなくなる。その時に「地図」資料を活用せざるを得なくなる。どのように地図を活用したか評価のポイントとなる。
 さらに出された意見を個別に評定する指導も必要である。
 その時には教師自身がどんな意見がよいのか明確な「ものさし」を持っておかなければならない。例えば「他の資料や情報と比べた意見」「分布の様子を示した意見」「自分の解釈が入った意見」「見えない部分や空間に言及した意見(時間・季節)」である。(参照:雪小プラン1991年向山洋一氏による)また、たくさん書けるようになるということはひとつの資料を「解釈」する力が身に付いたと言える。それを評価するために問う。
「『庄内平野は米作りがさかんだ』という意見が出ました。米作りがさかんだと分かる資料や証拠を探しなさい。」
 
3「グラフの基本3つ」を読みとる 
 グラフを提示した授業の展開は次のようになる。

発問1 p22の棒グラフの題名
    は何ですか。
(東京書籍版5年上社会科教科書) 指示1 題名を指さしなさい。
 (ノートに書かせ発表させる)
 
「稲の作付け面積と転作した面積(庄内平野)」

発問2 このグラフは何を使っ
   て作ったのですか。
指示2 「出典」と言います。出
   典を指さしなさい。
 (ノートに書かせ発表させる)
 
「庄内経済連資料」

発問3 このグラフはいつ作られ
   たのですか。
 (ノートに書かせ発表させる)
 
 年度はいろいろ出てくる。「99年、平成2年、昭和35年・・・・」「99年より後だろうが『不明』」とする。
 次に縦軸横軸を確認する。

発問4 グラフの縦軸は何を表し
   ていますか。
   (ノートに書かせて発表)
発問5 グラフの横軸は何を表し
   ていますか。
   (    〃     )
 
 縦軸は「面積」である。単位も確認する。「haヘクタール」である。
 横軸は「年(年度)」である。
 さらに、グラフの変化を読みとる。

説明1 グラフの変化には5種類
   あります。
 (1)増える (2)減る
  (3)変化なし(4)山型
  (5)谷型
発問6 このグラフは5種類のう   ちどの変化に当てはまりま   すか。
 
変化の型をノートに書かせる。「(3)減る」はすぐに出てくる。しかし、このグラフからは3種類の変化が読みとれる。「(1)増える(2)減る(3)変化なし」の3種類である。「(1)増える」は「転作した田」、「(2)減る」は「稲を作った田」、「(3)変化なし」は「作付面積」である。

指示3 このグラフを見て分かる
   こと、気がついたこと、思
   ったことをノートに箇条書
   きにしなさい。
 
 教科書に示されている「まなび方コーナー」の事項が書けているかどうか評定する。(2〜3:B 4以上A)

ア・グラフのタイトルは何か。
イ・横とたてのじくは何を表して
 いるか。
ウ・全体的に見るとどのように変
 化しているか。
エ・変化の大きいところはどこか
オ・これからの変化を予想できな
 いか。
カ・このグラフから、日本の農業
 の問題点についてどんなことが
 考えられるか。
 
 変化の根拠を調べさせる。根拠の数は3つ以上をめあてにする。

発問7 変化があるということに
   は必ず理由があります。
    理由となる資料をさがし   なさい。
 
 ステップを踏んで調べさせる。「教科書から」「資料集から」「教科書・資料集以外から」。
 
4 思考判断力は仮説づくりから
 「次のような仮説をできるだけたくさんつくりなさい。」と指示して例文を示す。ここでも数がポイントである。

ア「〜〜だから増えた(減った)
イ「増えた(減った)のは〜〜だ
  からである」