向山型社会科授業の全体像の解明
  1 写真資料の読み取りと
         あと一歩の詰め(2)
      「写真資料読みとり指導微細技術10+α」
                                        松本 俊樹
 
■5年「水産業のさかんな八戸市」(東京書籍 5年上 p30)に次のような写真がある。
定石通り向山洋一氏の発問から始める。

 発問1 この写真を見て分かること、気がついたこと、思ったことをノー
    トに箇条書きにしなさい。
 
 必ずこの通りに言う。子供にはこの通りにさせるのである。
 必ず「分かったこと」「気がついたこと」「思ったこと」の3セットで問う。
番もこの通りでなければならない。
最後に「思ったこと」が来るから子供達は安心して何でも書ける。
 
■写真資料の読み取り指導場面において向山氏は次のような目安を示した。

A 子どもの意見は、はじめ二つか三つ位のものですが、いくつ考えられる
 か目安を与えた方がいいようです。
 五年生では、トップクラスで一枚から100ぐらいの意見を言います。
 
(「社会科教育」1992年5月号 明治図書・「TOSS小事典シリーズ 
向山型社会科 授業づくりQアンドA小事典」p70 明治図書)
 
■では、どのような指導で「100ぐらい」の意見が可能なのか。
前号で予告したとおり具体的な授業場面に即して示す。

2 写真(絵)資料からできるだけたくさんの情報を読みとらせるにはどの
 ような指導が必要なのか。
 
 
■発問1のあと質問が出るかも知れない。
 「箇条書きって何ですか?」→『@A・・と番号を打って書いていくのです。』
 初めて「箇条書き」なるものを聞く児童もある。「箇条書き」は大事な学習技能のひとつである。ぜひ身につけさせたい。
 「人がいるみたいなものでも良いんですか?」→『超高級意見です。どんどん書きなさい。』
 どんなことを書けばいいかとまどう児童もある。すべて認めるが原則である。
 質問が途絶えたころを見計らって次のような指示をする。
もちろんいきなりシーンと箇条書きに取り組めるクラスならばころ合いを見計らっての指示である。

指示1 ○個書けたら先生の所へもってらっしゃい。
 
 「○個」はクラスのレベル・資料のレベルに合わせればよい。
上記の写真資料ならば「5個」が妥当であろう。
ノートに書いた意見に対して基本的なスタンスは次の通りである。

 1 すべて認める。
 
 何かしらノートに書いてあるという点で○をつける。
ちなみに「○個書けたら」は時間差調整の意味とまずどれだけ書ければよいかという目安を示すことになる。余裕があれば次のような指導も行う。

@ 「日付を書いていますよね。」
 
 社会科に限らず全教科でのノート指導で行っている原則を確認するのである。
早々と5個書いてノートを持ってくる子に対してだからこのような確認が生きる。
番号ではなく「・」で箇条書きにする子もある。

A 箇条書きですから@ABと番号を書くのです。
 
 きちんと箇条書きの作法を教える。

B ノートの出し方
 
 算数など他教科でも指導している事項であろう。
きちんと教師が見やすい向きで出すこと。
見やすい向きで出すから次々とノートが見てもらえ結局は自分のノートも見てもらえる
回数が増えるという趣意説明も行う。
さらに次の約束も行う。

C 箇条書きは1行おきにしなさい。
 
 実際に試せば実感できる。
何よりも教師が見やすい。
子供も書いた意見に付け加えできる。
 
■発問1の時に次のような言葉を付け加えることもある。
子供達はとにかく高級な意見を書かなければならないと構えるものなのだ。
「ほんのちょっと」理論は向山洋一氏から学んだ。
このように「ほんのちょっと」も認めるのだ。
つまり必ず全員が何かをノートに書いている状態にする。
「全員参加の原則」が貫かれなければならない。

指示2 ほんのちょっとでも思ったことでも構いません。
 
 
■次のような質問が出ることもある。
 「疑問に(はてなと)思ったことでもいいんですか?」

指示3 「疑問」や「はてな」は気づきに入ります。どんどん書きなさい。
 
 この時「自分の予想も書き加えておきなさい。」と付け加えておく。
 
■数の目安も示しておきたい。
「5年生ですから5個以上書くのです。」と言うほか次のようなめあてを示す。、

指示4 5年生ですから5分で5×5の25個が一人の目標です。
 
 したがって次のような追い込みをかけることもある。
 『全員起立。1個書けた人から座りなさい。』
 この時『「人がいる」と書いたのですね。いいですねぇ。』などと
「どんなことでも書けば座れるんだ」と示さなければならない。
 
■次のように煽ることもある。
『今、何個ですか?』「5個です。」『もう5個書いた人がある!』
とにかくほめることと驚いてみせることが重要である。
 
■しかし厳然とした個人差がある。
「5個書けた人」と目安を示したもののなかなか到達しない子もいる。
次のような指示をする。
 『まだ持ってきてない人もってらしゃい。』数が5個に到達してなくても持ってきたことをほめる。
中には全然書かない子(書けない子)もいる。
『何も書いてない人も持ってらっしゃい。』
 この時には2回目、3回目を持ってくる子がいる中での指示となる。
だれが全然書いてないか見えにくい状況になっている。
もちろん持ってきただけでも大いにほめる。
何か書けばいいんだという意識に動く。
簡単なやりとりをしても良い。
『おもしろいかな?』」「はい」『じゃぁおもしろいと書けばいいんです。』
                               (つづく)