向山型社会科授業の全体像の解明
  1 写真資料の読み取りと
          あと一歩の詰め(3)

             「写真資料読みとり指導微細技術10+α」
                 TOSS関西中央事務局 松本 俊樹
              〒675-0057加古川市東神吉町神吉475-27 
                     mtoshiki@mvf.biglobe.ne.jp
 
 
■1枚の写真資料の読みとり指導場面である。たくさんの情報を読み取らせたいのにノートに書けない子がある。

 微細技術2 箇条書きの例を示す。
 
 このようなことを書けばいいのだという例を示せばよい。教師が子どものノートに書いてある意見を声に出してやる。また、教師が分かったこと、気がついたこと、思ったことの例を示してやっても良い。
 「空が青い」(子どもたち当たり前というような笑いがあるかもしれない)
 「そうだ、空が青い。空が青いと言うことからいろんな事が分かるよね」
 
■「3つ書けたら持ってきなさい。」といってノートをチェックする。「3つ」というのは持ってこさせるときの時間差を作るためである。「1個書けたら持ってきなさい」ではチェックするために列ができてしまう。持ってきた意見はすべてほめて黒板に書かせる。教師に余裕があればどれを書けばよいか児童に示してやる。通常は「なるべく前に書かれていない意見を黒板に書きなさい。」と指示する。
 実はこの黒板に書かせる活動も「箇条書きの例を示す」活動なのである。あと1個書けたら持って行ける・・・という時に黒板を見て「ああいう意見でいいんだ」と書き足して持ってくる児童もある。
 これは向山型算数の練習問題指導場面と共通している。「写すのもお勉強」「一番いけないのは何もしないことです」。

微細技術3 「黒板の意見を参考にしなさい」と指示する。
 
 3つ書けた児童が黒板に書くときに違う意見を書けないときがある。みな前に書かれてしまっているのだ。そういうときは「箇条書きの名前の横に自分の名前を書き加えなさい」と指示する。全員の名前が前に出ることになる。 

微細技術4 板書は縦書き。
 
 向山洋一氏に松本の授業ビデオを検討いただいたときに学んだことである。社会科教科書やノートは横書きなのになぜ縦書きなのか。縦書きならば一度に多くの児童が板書できるというのだ。多くの児童が板書できるということは待つ時間が短くなる。

微細技術5 板書の「・」をあらかじめ教師がうっておく。
 
 「3つ書けたら持ってきなさい」俊治をしたならば黒板に「・」を打つ。通常15カ所くらい。板書の高さをそろえるためである。このときに余りつめすぎずに・を打つ。詰めすぎないから児童は間に入って書きやすくなる。書く場所がなくなればさらに書く児童は間に・を打って板書する。もちろんチョークは20本くらい準備。折りに触れチョークの持ち方や向きも指導する。このとき次のような指導事項がある。

@ 白チョークを使わせる。
  何も言わないと子供はいろんな色を使いたがる。
A 「前に出て代表で書いているのです。
   だからすばやくていねいに書きなさい。」
B 文字の大きさは教師の文字の大きさが基準。
C 黒板消しは(なるべく)使わせない。
D できるだけ漢字を使う。
E 文責として自分の名前を( )内に書く。
F もし、同じ意見なら名前のみ書かせる。
 
 
■板書を発表させる場面の微細技術を示す。

微細技術6 板書中の児童が残り2〜3名場面で発表させる。
 
 「待たない」のである。「待たない」から授業にリズムとテンポが生まれる。「待たない」から緊張感も生まれる。さらに、前に書く児童は優秀な児童であると推定して良い。発表を聞きながら板書できるのだ。中には板書しながら発表するという場面もある。

微細技術7 黒板に書いてある通りに発表させる。
 
 付け加えや言い訳などいっさい認めない。書いてある通りに発表すればいいから誰もが発表できるのである。聞いている児童は耳と目から情報を得ることができる。

微細技術8 発表と発表の間に何も挟まない。
 
 途中でいっさい教師は口を挟まないのが原則である。口を挟まないからテンポがよくなる。リズムが生まれる。子どもの思考が濁らない。発表を聞いている児童は何をしているのか。板書を参考に新たな意見をノートに書いている。時には次のような評定を行う。

微細技術9 付け加えて書いた数をたずねる。
 
 
■板書された意見の発表が終わる。次に指名なし発表させる。(似ていること、同じ事も発表させる)このときも発表を聞きながら付け加えをさせる。(後で数をいわせる)机を顔が見える体形にさせる。
 「5分間ですべての意見が出るように発表しなさい。」と指示。発表の間にもいっさい教師は言葉を挟まない。教師の姿は子どもから隠れるのがよい。
 
■できるだけたくさんの児童に発表をさせたい。次のように言う。「『人が歩いている』という意見と『人がゆっくり歩いている』という意見は違うのです。」と。また、箇条書きの数が多くなるとクラス全体での指名なし発表がスムーズに行かないときがある。そのときはグループ別指名なし発表を指示する。例えば6列のうち2列ずつに区切って指名なし発表させるのだ。しかも、1グループの発表時間を2分間と時間を区切る。テンポよく発表が続く。発表を聞きながら意見をノートに意見を書いている。
 
■5年3学期の「放送局の絵の読み取り授業」では1グループ目の指名なし発表数36個だった。この発表数も児童に知らせる。かなり盛り上がる。このグループ別指名なし発表を2巡させた。12分間である。そのうち4分間(2分間×2回)は自分のグループが発表している。したがって10分間程度は書く時間を保障したと言えよう。最高85個、最低14個。発表された意見総計306個だった。たくさん出させた意見をどう展開させるか。一つは「出された子供の意見を分類する。」のである。この時KJ法が有効である。しかし、いきなりKJ法ではハードルが高すぎる。次のようなステップが必要である。

微細技術10 ある一つの意見を取り上げて「似ている意見を見つけなさい」      と指示する。
 
  例えば「マイクがある」を取り上げる。「この意見に似ている意見を見つけなさい」と指示。機械類に注目させることになる。意見のまとまりに題名(タイトル)をつける分類するときの観点を教えたのである。
 
■話がKJ法へそれた。元に戻す。以下の2,3を示してきた。

2 写真(絵)資料からできるだけたくさんの情報を読みとらせるにはどの
 ような指導が必要なのか。
3 たくさん出された子供たちの意見(30個、50個、100個・・・)
 を授業でどのように取り上げればよいのか。
 
 黒板にたくさん書かれた子どもの意見をどうするのか。KJ法などによる分類の他にもう一つ有効な方法がある。
 「子どもの意見を個別評定する」である。何を観点に個別評定するのか。向山氏が提案した「雪谷小プラン・読みとり表」にポイントがある。次号では子どもの意見をどう個別評定したかを具体的に紹介する。