関西地区には日本三百名山に名を連ねている山が17座有る。中国地方などに比べると圧倒的に数が多い。理由としてはやはり人口が多く、それぞれの山が地域の守護神としての役割を果たしている
からであろうか。宗教的な見地から見ると、やはり仏教の色彩が濃く、山名もそれに由来するものが多い。勿論、日本で最も歴史の長い地域なので、歴史に登場する山も数多くある。
今回、いつものP社のツアーに参加し、未踏の三百名山11座のうち、倶留尊山(くろそやま)、高見山、三峰山(みうねやま)の3座の登頂をを目指した。
[行程]
2020年2月29日(土)
自宅6:45→新横浜7:52→名古屋9:17→12:15曽爾(そに)高原駐車場12:30→11:30日本ボソ11:40→14:06倶留尊山山頂14:10→日本ボソ14:30→15:15曽爾高原駐車場15:25→17:15山林舎泊
山林舎7:00→7:20高見峠登山口7:30→8:20高見山山頂8:27→9:10高見峠9:13→10:05福本登山口10:15→八丁平11:35→11:40三峰山山頂11:45→11:50八丁平12:07→13:08福本登山口→飯高
道の駅→名古屋 16:26→新横浜→18:30自宅
[登山日誌]
うるう年の4年に1度の日に出発、印象に残る山行を期待して妻と共に名古屋に向かった。名古屋で待っていてくれたのはガイドのTさん、K2,ブロードピークなど8千メー
トル峰を登った経験のあるベテランだった。今回の参加者は妻と私だけなのでとても気楽だ。待ち合わせ時間を30分早め、3時間近く離れた三重県と奈良県の県境に
ある倶留尊山の曽爾高原駐車場には12時過ぎに到着、雨模様なので雨具、スパッツを着けて出発した。少し前に野焼きが行われたらしく黒色に変わったススキの草
原の中を登っていく。お亀ケ池の横を通り急傾斜の木段を30分ほど登ると亀山峠、この頃から雨が本降りになり、スリップに気を付けながら露岩の間を進む。
ちょうど前日、田中陽希さんの「グレートトラバース」で倶留尊山の紹介が有り、この山は室生火山群の一角に有って、火山灰が冷えて固まってできた柱状節理の六角形の岩がゴロゴロしているとのことだ
った。成程よく見ると皆岩は大体六角形である。
しばらく行くと料金所が有り一人5百円を払う。ここは私有地らしく、環境整備のための資金になるようだ。駐車場から1時間ほどで「二本ボソ」という奇妙な名前の山頂に到着。さらに一端大きく下り再度
登って、山頂に到着。写真を撮ってすぐに下山にかかる。雨が降り続き、水が登山道に溜まって滑りやすくなっているので、慎重に一歩一歩下りる。「二本ボソ」、料金所を過ぎて亀山峠までやって来て一
安心。赤い屋根の「国立曽爾青少年の家」を見下ろしながら階段を進み、1時間強で駐車場に着いた。雨具を脱いで本日の宿泊地「グリーンパーク山林舎」に向かう。
その夜の食卓には特産の「牡丹鍋」が出され、イノシシの野趣溢れた風味を味わいながら、ガイドの方の登山話を楽しんだ。3人とも同じ年の生まれと分かり、一層話が弾んだ。
翌朝7時に宿舎を出発、車で20分ほどの所にある高見峠登山口に7時半に到着。高見山は台高山脈の端に有り、三重県松坂市と奈良県東吉野村の境界に有
って、「関西のマッターホルン」と呼ばれるほど急峻である。伊勢南街道が近くを通っている。山頂には高角神社が祭られ、真冬には霧氷を見る登山客で大混
雑するとのことだが、今年は様変わり、暖冬のため霧氷は全く無さそうだ。今回、ツアーの参加者が我々夫婦だけであったのもおそらくこのせいだろう。木段を
登り急傾斜の登山道に入っていく。天気予報では終日晴れだが、まだ曇り、ガスが一面に立ち込めている。ブナやナラの広葉樹林が多く、露岩にはコケがびっ
しりと生えている。急登の連続で全く登り返しのない登山道を快調に詰めてひと汗かく頃山頂に到着。登山口から50分ほどであった。山頂の石碑には「霊峰高
見山」と刻まれ、神武天皇東征の折、案内を務めたと言われる八咫烏(やたがらす)を祀る祠が鎮座している。また、万葉の歌碑としては全国で最も標高の高
いところにある石上麻呂の歌碑がある。
木々の枝をよく見ると水滴や氷になりかけた粒が付いているが残念ながら霧氷は無い。10分ほど滞在した後下山にかかる。帰りは速い。この頃からガスが薄くなり薄日が見えるようになるが周囲の山々
はまだ見えない。一気に下って40分ほどで登山口に到着、次の目的地である三峰山の登山口福本へ向かう。天気は快方に向かい、福本登山口に着いたときには太陽が眩しいくらいに輝いている。いよ
いよ3座目の「奥宇陀の名峰」三峰山である。この山は約1億年前の大断層である中央構造線が通っていて、月出登山口の近くにその露頭が見られ、国の天然記念物に指定されている。
まずは人工樹林帯の杉林の中を登っていく。杉林はきれいに間伐され、枝打ちもしっかりと行われている。さすが日本三大美林の一つ吉野杉だ。1町(109m)ごとに表
示が有り、20町まで続く。中腹を過ぎると杉林はブナ、ナラ、ヒメシャラ、リョウブ、シロヤシオなどの広葉樹林に変わる。紅葉シーズンや霧氷のシーズンは多くの人が
訪れるそうだ。突然傾斜が無くなり、八丁平の広大な草原が現れる。ハイカーが大勢昼食を食べている。親子連れもたくさん来ている。その間を通って5分ほどで三角
点のある山頂に到着。山頂からは北東方面の視界が広がり、昨日登った倶留尊山や大洞山が見える。写真を撮ったのち下って八丁平で昼食休憩を取る。ここからは
南方が開け迷岳や台高の国見岳が遠方に、眼下には飯高の山村が望め、関東の山とはまた一味違った関西の山々を眺めながら、のんびりと休憩を取った日差しも
明るく暖かく晴れやかな気持ちとなった。
帰りは早く1時間弱で登山口に到着。車の中でパッキングを済ませ、途中「飯高道の駅」で特産物を購入し、名古屋駅に16時前に着き、16時26分の新幹線に乗って、18時半に帰宅した。
今回の3座ツアーは、歩行時間がトータル7時間弱で普通の山1座分だったが、経験豊かなガイドの方の案内により、柱状節理の倶留尊山、「関西のマッターホルン」というニックネームがふさわしい急峻
な高見山、中央構造線が通り、山頂近くに八丁平という草原を持つ三峰山という特色を持った3座を楽しめて、素晴らしい山行となった。