北海道の日本三百名山は7座有るが、昨年(2019年)神威岳と大千軒岳に登り、今年残りのニセイカウシュッペ、オプタテシケ、余市岳、狩場山、ニセコアンヌプリの5座に登ることにした。昨年の12月
から友人と日程を検討し、北海道の最適シーズンである7月1日(水)〜6日(月)を選んだ。本州では梅雨の真っ盛りだが北海道では梅雨が無いので、高山植物が最も数多く咲くこの季節を考えた。幸い、
コロナ禍のために4月中旬から発令されていた県跨ぎの旅行自粛は、6月の下旬に解除された。外国人の入国制限、日本人観光客の激減もあり、何とか予定通り北海道遠征を実現させたいという思いが
強く、天候に恵まれることを祈った。
[行程]
2020年7月1日(水)
自宅発7:30→8:35羽田空港10:40→11:50旭川空港12:30→美瑛観光→16:30旭川 ホテル「キャビン」泊
2日(木)
ホテル「キャビン」5:50→7:50ニセイカウシュッペ登山口8:10→2,5キロ地点9:41→11:21山頂11:25→あと登山口まで3,5キロ地点12:27→登山口13:37→16:30白銀温泉「パークホテル」泊
3日(金)
「パークホテル」4:00→4:20美瑛富士登山口4:34→天然庭園6:28→8:12美瑛避難小屋8:20→ベベツ岳9:24→10:49オプタテシケ山頂11:10→→ベベツ岳12:28→13:30美瑛避難小屋
13:43→天然庭園15:16→16:47登山口17:05→21:00小樽「グリーンホテル」泊
[山行日誌]
観光客の激減で予約していた旭川行き1便がキャンセルされ第2便に乗ることになった。また、天気予報によると、オプタテシケに登る予定の7月2日(火)は雨、ニセイカウシュッペに登る予定の3日(
水)は晴れ、そこで今回登る山の中で最難関のオプタテシケを3日、比較的楽なニセイカウシュッペを2日に変更、それに伴い、宿も1日目を旭川、2日目を白銀温泉に変更した。直前の変更で予約をし
てもらった友人及び宿の方には迷惑をかけてしまったが、後述するようにこの変更は大正解となった。
羽田空港で友人と待ち合わせ、旭川には12時前に到着、レンタカーで美瑛観光を楽しんだ。ラベンダー、ストック、ベゴニア、日日草などが満開。丹精を込めて育てている人達に感謝するとともに、もっ
と多くの人達に鑑賞してもらえることを切に願った。
朝6時前に宿を出発、上川町のニセイカウシュッペ登山口に向かった。山名はアイヌ語で「断崖絶壁の上にある山」という意味で、層雲峡を挟んで大雪山と
向かい合っており大雪山の展望台として知られている。大槍、小槍の岩峰を従えているが、古川林道を起点に西尾根をたどる登山道は概してなだらかであ
る。国道273号線から何とか入り口を見つけ、古川砂金越林道、古川林道を走って登山口まで約1時間、登山口には8時前に到着した。天気は曇りから小雨
に転じ、雨具、スパッツを着けて、入山記録に記帳後出発した。山頂まで5,5kmの表示が有り、また1kmごとに表示が有ったので分かり易かった。クマが心
配なので同行者と共にスズを精一杯鳴らしながら歩く。ガスがかかり景色はほとんど見えず緩斜面を黙々と登っていく。マイヅルソウが登山道一面に拡がっ
ており、すでに開花しているものもある。3,5km地点を越え、見晴台へやってくる。ここからは表大雪の山々や大槍、小槍が見えるはずだが、相変わらずガス
と雨で視界はゼロ、何も見えない。大槍のコルを巻いて直進,前衛峰をトラバースし、ハクサンイチゲやチングルマのお花畑を眺めながら少し行くとなだらかで
広い山頂に到着、登山口から約3時間の行程であった。勿論他の登山者はおらず、写真を撮って早々に下山にかかる。
この頃から雨脚が強まり登山道は沢のように水があふれている。水が靴の中に入らないように浅瀬を探しながら急いで下っていく。クマも雨の日は活動し
ないようでその気配が感じられない。山頂から2時ほどで登山口に到着。雨具を車の中で脱ぎすぐに今夜の宿泊地、白銀温泉へ出発した。途中コンビニに
よって翌日の飲食物を補給し、3時間ほどで白銀温泉「パークホテル」に到着した。
翌日は早朝行動開始、涸沢林道を通って美瑛富士登山口に4時過ぎに到着、準備を整え、4時半過ぎには登り始めた。既に2〜3台駐車しており、先行者
がいるのはクマ対策として大変ありがたい。オプタテシケは岩稜帯の険しい登りが有り、所要時間12時間ということで今回の北海道遠征のメーンの山である
十勝連峰の北端にあり、山名は「槍がそこにそそり立っている山」を意味し、鋭い山容が特徴的である。降水確率はゼロパーセント、多少の強風は予想され
るが絶好の登山日和である。まずはアカエゾマツの林の中を進む。美瑛富士の秀麗な姿を眺めながら裾をトラバースしていくと「天然庭園」と呼ばれる岩石
帯が現れる。ハイマツ、アカエゾマツ、大岩の絶妙な自然の景観である。
昨日の雨や雪渓の融水で登山道はぬかるんでいる。ニセカウでは咲いていなかったマイヅルソウが咲きだしている。大小の雪渓が次々と現れ、涼風が心地
よい。やがて前方にマッチ箱のような可愛らしい小屋が見えてくる。美瑛富士避難小屋である。周りはキャンプ地にも指定されている平地で、満開のハクサン
シャクナゲが点在してしている。ここで一休み。ハクサンイチゲやヨツバシオガマなど高山植物も咲き誇って
大岩を越え、ベベツ岳山頂に至る。
さらに次々に現れる巨石を慎重にコルまで下り、さらにこのコース最大の難所である急登を登ってようやくオプタテシケの全容が見える西峰に到着。
山名は前述のように、「槍がそそり立っている山」ということだが、まさに山頂がそそり立っている。慎重に稜線を詰めて山頂に到着。360度の展望が広がっ
ていた。旭岳やトムラウシなどの表大雪の山々、美瑛富士、美瑛岳、石狩岳、ニペソツなど北海道の名だたる山々が勢ぞろい。いずれも雪を頂き、雪渓を幾
筋も走らせ、青空、白い雲、黒い岩に映えている。他の登山者と共にゆっくり山座同定。これからの予定などを話した後下山開始。先が長いので気合を入れ
直す。唯、山頂を極めたことによる安心感が有り気持ちが軽くなっている。
無心の境地で一歩を踏み出し、西峰,ベベツ岳の登り返し、石垣山の登り返しと道のりは過ぎて行き、気が付けば美瑛避難小屋の四角い屋根。今日宿泊す
る登山者がテントを張っている。ここで足指のマメにバンドエイドを貼り、ストックを伸ばし、靴のひもを締めなおし、下りの準備を整える。登山口まで約6kmの
道のりだが、ぬかるみ、大岩、雪渓が次々と現れ油断できない。疲労も蓄積しなかなかスピードが上がらないが、安全第一で慎重に下っていく。ようやく天然
庭園に到着。大岩を注意深くストックを使ってバランスを取りながら跳んでいく。慣れてくるとリズムよく下ることができる。あっという間に天然庭園を過ぎ、
1日中眼を楽しませてくれた美瑛富士と別れ、登山口へまっしぐら。17時前に到着した。好天に恵まれたせか平日にもかかわらず5〜6台の車が停まってい
る。他の登山者と会話を交わしながら出発の準備。これから小樽まで4時間のドライブだが、最難関の山を終えたことで安堵感、満足感に浸った。
旭川ICから高速に乗り道央道から札樽道を乗り継いで、妻の待つ小樽グリーンホテルには21時過ぎに到着した。朝の3時過ぎから行動を開始したので長い
1日となった。