[行程]
2020年7月4日(土)
小樽グリーンホテル6:00→6:45キロロリゾート駐車場7:00→林道ゲート7:20→余市岳登山口8:22→10:00見晴台10:15→11:16山頂12:00→見晴台13:06→登山口14:31→林道ゲート15:30→15:45駐車場
16:00→18:05
千走川温泉泊
5日(日)
千走川温泉8:00→8:20狩場山登山口8:27→4合目休み台9:43→南狩場山12:13→12:47山頂13:15→南狩場山13:48→真駒内登山口19:25→19:30熊戻休憩所泊
6日(月)
熊戻休憩所6:10→真駒内ダム9:00→10:30狩場山登山口11:00→11:10千走川温泉12:05→16:10新千歳空港18:00→19:20羽田空港19:40:→20:50自宅
[山行日誌]
翌朝6時、東京に引き返す友人に見送られ妻と共に余市岳の有るキロロリゾートを目指した。札樽地域で最高峰の余市岳は札幌市と赤井川村の境界に位
置していて、傘状の山容をしており、山スキーや沢登りで知られている。1時間弱でキロロリゾートの駐車場に到着。準備をして林道ゲートで入山者名簿に記
入、登山口へ向かって約3,9kmの林道を歩き始めた。天候は晴れ、週末とあって登山者も10名前後いるのでクマの心配はないようだ。北海道名物の巨大な
フキを眺めながら約1時間でゲレンデ内に有る登山口にやって来た。ここから余市川源流に沿って登っていく。しばらく行くと渡渉ポイント。雪解けで水量が多
いので慎重に渡る。その後は急傾斜の樹林帯がしばらく続く。登山道の両側を満開のマイヅルソウがびっしり埋め尽くしている。やがて傾斜が緩み、丸い余
市岳の全容が見えてくる。ゴンドラの山頂駅も見える。稜線に出ると見晴台である。ここから少し下って余市岳直下の道に取り付く。雪解けの水が流れる岩
混じりの道をあえぎながら登っていくと、頂上まであと300mの標識が現れる。道が平たんになり、ハイマツ帯の長いトンネルと廊下が続く。お花畑が目を楽し
ませてくれる。ヨツバシオガマ、ハクサンシャクナゲ、シナノキンバイ、エゾノツガザクラなどの高山植物が所狭しと咲いている。
ようやくハイマツの中の山頂に到着。2組の夫婦が昼食を取っている。天気は相変わらず晴れ。独立峰の羊蹄山が優美な姿を見せている。札幌近郊や積丹
半島の山々もぼんやりと見える。遅れてきた妻を迎え昼食休憩。憧れていた北海道の大地の青空の下で食べる昼食は格別である。妻は4月の熊伏山以来
の登山で疲れたようだ。唯、北海道の山は昨年の大千軒岳もそうであったが総じて厳しい。谷の切れ込みが深く、峰も切り立っていて狭い。所要時間は2割
増しぐらいが実情に合っている気がする一息入れた後下山にかかる。まずはお花畑の中を浮き浮き気分で歩き、その後急傾斜を下って見晴台、「飛行場」
と呼ばれる緑の大地を眺め、、ミツバオウレンの白い花が目立つ道をさらに下る。渡渉ポイントを過ぎてゲレンデの緑あふれる登山口に14時半に到着、林
道歩きを無心になって済ませ、林道ゲートの入山者名簿に帰着時間を書き込み、車には16時前に戻った。ナビで千走川温泉を入れると到着時間が20時過
ぎと出た。慌てて出発の準備をし車を走らせる。徐々に到着時間が早まり、最終的には18時過ぎに現地に到着した。昨年も宿泊しているので気楽である。オ
ーナーの方も覚えていてくれたようだ。
赤茶色の温泉は疲れに効き目抜群、さっぱりした後、ウニ、ホタテ、アワビ、トコブシなどの海産物に舌鼓を打った後、すぐに寝床に入った。さすがに3座登
り終えて疲れが溜まっている。翌日は行程に余裕が有るので珍しく宿の朝食を食べ8時に宿を出発した。これが後々まで響いた。
狩場山という山名はアイヌ語のカリン・パ・ウシ・ヌプリの当て字で、「桜が群生する山」という意味だそうだ。道南の最高峰で、ブナの北限として知られ、ま
た奥深い広い山域はヒグマの生息地となっている。千走川登山口には既に4台の車が駐車していた。日曜日で好天に恵まれているから当然か。早速準備を
して赤い橋を渡って登山開始。千走川本流の左岸尾根に登山道が付けられている。ダケカンバの樹林帯が続く。合目表示が有り、気持ちよく登っていく。傾
斜が緩むと5合目、ハイマツ帯が広がっている。南狩場山の鋭い岩峰が視界に入ってくる。7合目を過ぎると雪渓が登山道に現れる。既に表面が融けている
のでいるのでアイゼンは不要だ。8合目を過ぎると急登となり、南狩場山の斜面に取り付く。
大岩、小岩の登りにくい道を慎重に登っていくと南狩場山の山頂に到着。少し行くと小丘のような山頂が見えてくる。親沼、小沼の辺りにはお花畑が広がっ
ている。ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、ハイオトギリ、エゾノコザクラなどが咲き誇る。やがて小さな赤い鳥居が建つ山頂に到着。出発が遅かったため他
の登山者はいない。昼食を取り、写真を撮って下山開始。だだっ広い平原を南狩場山へ向かう。次に南狩場山の急斜面を降りて8合目にやって来た。ここで
大失敗。雪渓を回り込んで左に行かねばならないとろを直進してしまった。何となく行きとは景色が違う気がしていたが、そのまま下りて行ってしまった。なか
なか6合目の表示が出てこず、道の両側にクマのフンが積み重なっている場所にきて間違えたことに気が付いた。すぐに引き返せば1時間ぐらいのロスで済
んだのにさらにミスを重ねた。遭難するときはこんなものだろうか。戻らずそのまま下降を続け、どうやら真駒内コースに入ってしまったことを確信した。本日
宿泊予定の五色温泉にはたまたま電波が入ったところでキャンセルの電話を入れた。その後日没の時間に追われ、クマの恐怖におののきながら、歩きにく
い登山路を何とか手がかりを見つけながら進み、ようやく前方に赤い吊橋を見つけてほっと一息。吊橋を渡って「熊戻休憩所」と書かれた避難小屋に入った
のが19時30分、暗闇になっていてヘッドランプを点けた。
飲料水がほとんど尽きていて、水が出なければ沢水を飲まざるを得ないと思ったが、幸い、トイレの水(おそらく天水)が出て、流しているうちに赤い水が透
明になった。休憩所の注意書には「水は必ず沸騰させて飲むこと」と書かれていたが、渇きに耐えられずそのまま飲んだ。布団と寝袋が置いてあったので借
用、セーターや雨具などすべて身に着け、ツエルトを掛けて寒さに備えたが、何とか寒さを感じず一夜を過ごした。翌朝6時過ぎに休憩所を出て国道に向けて
歩き始めた。国道まで17kmとガイドブックに書かれていたので4時間を覚悟したが、途中8kmぐらいのところでスマホが圏内となり、タクシー会社に電話をし
て迎えに来てもらった。千走川の登山口まで送ってもらい、車で着替えて千走川温泉に向かった。既に昨夜の時点で本日登る予定であったニセコアンヌプリ
は気力喪失で回避することに決めていた。汗を流した後オーナーに顛末を話したところ、呆れて開いた口が塞がらない、といった反応だった。オーナーに丁
重にお礼を言って新千歳空港へ向かった。およそ2時間半で新千歳空港に到着、レンタカーを返却して、空港内で夕食を取り、予定より2時間半早い便に乗
って羽田空港に19時過ぎに着き、2匹の猫が待つ自宅には21時前に戻った。
今回の北海道遠征は、目標の5座登頂は達成できなかったが、直前の予定変更で最難関のオプタテシケに登ることができ、狩場山では思わぬアクシデントが有ったが大事に至らず、盛りの高山植物を
たっぷり愛でることができて、50年近い登山人生の中で最も印象に残る山行の一つになったと今は感じている。