四国の「日本三百名山」は4座、2泊3日で登るにはちょうど良いので10月の終わりに日程を設定した。四国は2008年の三嶺(みうね)以来で,懐かしさいっぱいである。
最初に登る篠山(ささやま)は四国の南西部、愛媛県と高知県の県境に位置し、江戸時代に拡がった四国遍路の目的地の一つとなっていた。山中には観世音寺、天狗堂、三所権現、矢はづの池が有り、
最初の遍路は篠山を参詣する習わしが有ったそうで、多くの遍路で賑わった。
次に登る三本杭(さんぼんぐい)は江戸時代に宇和島藩、吉田藩、土佐藩の三藩が立てた3本の境界標識に由来する。古い資料では「滑床山」と呼ばれていた。四国西南の宇和島市の背後に連なる山で滑
床渓谷の景観が素晴らしい。
瓶ケ森・伊予富士は石鎚国定公園の一角にあり、石鎚山と対峙している。瓶ケ森から伊予富士そして笹ヶ峰に至る長大な連嶺にはササの密集した縦走路が走っており、多くの登山者が訪れる。
[行程]
2020年10月28日(水)
自宅5:10→6:15羽田空港7:10→8:45松山空港IC→松山道・宇和島道路→津島高田IC→12:33篠山第一駐車場12:48→13:21山頂13:50→14:17駐車場14:20→16:30民宿「あざみ野」泊
29日(木)
民宿「あざみ野」6:30→6:45万年橋登山口7:15→千畳敷8:40→熊のコル10:00→10:50三本杭山頂11:20→12:05御祝山12:16→13:27万年橋13:35→津島高田IC→松山道→伊予小松IC→17:10道
の駅「木の香」
30日(金)
道の駅「木の香」8:00→UFOLINE(瓶ケ森林道)→8:43瓶ケ森駐車場8:53→9:10瓶壺9:20→10:04山頂(女山)10:23→10:29男山10:42→11:07駐車場11:09→11:14伊予富士駐車場11:15→12:
24東黒森山12:30→13:09伊予富士山頂13:18→14:05駐車場14:10→UFOLINE→14:50道の駅「木の香」15:30→伊予小松IC→松山道→松山IC→17:30松山空港19:35→21:00羽田空港→22:35自宅
[山行日誌]
5時過ぎに家を出発、朝一の飛行機に乗って松山に9時前に到着、レンタカーで篠山第一駐車場を目指した。四国は岩手県より少し大きい程度で移動距離は
100キロを少し超えるぐらいだが、山道が多く油断がならない。松山から宇和島道路の津島高田ICまでは順調に来たが、宿毛に抜ける県道4号線でナビがトンネ
ルを認識せず、峠を抜ける道へ誘導した。車が何日も通っていない岩や落ち葉が重なる道を、パンクと転落におびえながら15キロ程運転した後、篠山第一駐車
場に到着した。 靴を履き替え早速登山開始天気は晴れ、寒くもなく暑くもなく登山日和だ。いきなり階段の急登から始まる。しばらく行くと観世音寺跡が有り苔む
した歴代住職の墓石が並んでいる。右奥には樹齢千年と言われる大杉が聳えている。長い石段を登ると2匹の狛犬に守られた篠山神社が鎮座し、その背後に
2等三角点の山頂がある。
枯れることのない不思議な矢はずの池が山頂わきに有り、直下には多くのアケボノツツジの枯れた葉が風になびいている。山頂からの景色は霞でいまいちだが、ぼんやりと西に宇和海から豊後水道、北に
鬼ケ城連峰が見えている。
松山からやって来た夫婦としばらくおしゃべりをした後、下山にかかる。階段を慎重に下り、狛犬に別れを告げ一気に登山口へ。30分弱で到着、今夜の宿泊先
民宿「あざみ野」に向かう。トンネルのある道を使い全く危なげなく通過できたが、民宿の近くでナビが再び新しいトンネルを認識できず、峠越えの道に導かれ
5キロ程ひどい道を走ったのち、宿泊地に到着した。民宿のご夫婦はとても親切にもてなしてくれた。食事も部屋も布団も気持ちよく、三本杭のコースについて
も詳しく説明してくれた。最初は時間的に難しいと思い、周回コースではなく御祝山から三本杭をピストンのつもりであったが、滑床渓谷の渓谷美を是非味わって
ほしい、また、3時間ほどで次の宿泊地である高知県いの町の道の駅「木の香」まで行けると言われ、万年橋からの周回コースを行くことにした。
翌朝、7時過ぎに万年橋わきの登山口を出発、ゴーゴーと音を立てる四万十川支流の目黒川源流域に沿った道を行く。全長約12キロにも及ぶ花崗岩の岩盤の
滑状(なめじょう)の流れだ。三本杭の標高は1226mだが、この渓谷は実に1000mの高さがあり、幾つもの滝や大小の奇岩が配されている。30分ほど歩いて雪
輪の滝(高さ80m)にやって来る。水が輪状になって落ちてくる。広い平面上の岩が広がる千畳敷、鼓の形をした鼓岩、奥千畳敷と水と岩がが織り成す素晴らし
い景観が次々と現れ、感嘆が途切れない。御祝山コースをピストンしていたら後悔しただろう。民宿のご夫婦に感謝、感謝。やがて沢から徐々に離れ沢音が聞
こえなくなるとクマのコルだ。かつてはツキノワグマが生息していたそうだ。ここから斜面を大きくトラバースして山頂に向かう。ミヤコザサをシカから守るネットを
通過、ササに囲まれた山頂に到着した。
ガスがかかり山頂から遠くの山々の眺めははっきりしないが、近くの八面山、鬼ケ城山、高月山は良く見える。豊後水道の向こうに九州の山々が霞んでいる。
30分ほど休んだのち下山開始。始めはアセビが覆いかぶさる狭い道を下り、横ノ森を通過、シャクナゲが生い茂る桧尾根を下る。四国南限のブナやヒメシャラ
の紅葉が太陽に映えて美しく何枚もシャッターを押す。その後、落ち葉で道が判然とせずピンクリボンを探しながら下山、御祝山に到着。あとは道が明瞭となり
万年橋にはほぼ予定通りの時間に戻ってきた。息をつく暇もなく次の宿泊地、道の駅「木の香」に向かう。宇和島道路、松山道を走り、伊予小松ICから国道
11号、194号で「木の香」に17時過ぎに到着、長い1日を終えた
翌朝は時間的余裕が有るのでゆっくり朝食を食べ、8時に宿舎を出発、寒風山近くの入り口から長く曲がりくねった道を登り、旧寒風山トンネル脇から
UFOLINEに入った。この道路は高知側のよさこい峠まで全長17キロの本格的な高原道路で、標高約1600㍍、山裾を周回し、ササの緑のグリーンベルトを走る。
この道路のお陰で本来1日かかる瓶ケ森や伊予富士が約2時間の行程となる。最初、瓶ケ森駐車場を通り過ごして時間をロスしたが、9時前から瓶ケ森の石畳を
歩き始め、まずは「瓶壺」を訪れる。これは直径2mほどの石の甌穴(おうけつ)で、透明の水が溜まっている。続いて広大なササ原の氷見二千石原を過ぎ、女山
に向かう。天気は晴れ、南の石鎚山がその黒々とした雄大な山容を余すところなく見せている。よく整備されたササ原の中の登山道を良い気分で登っていく。す
ぐに女山に到着。石鎚山大権現を祀る祠と二等三角点が有る。展望は360度開けているが、ガスが徐々にかかり始めている。西に石鎚山、北に西条の街並み
と瀬戸内海、遠くに12年前に登った笹ヶ峰や東赤石山が見えている。
下りは南の男山に寄り、瓶ケ森大権現を拝んだのち、周回路で駐車場に戻ってきた。
次に登る伊予富士の駐車場はUFOLINEのわきにあり、そこから急な岩の間を通って登山開始。UFOLINEを眺めな
がらササ原の道を登っていく。やがて笹ヶ峰方面からの縦走路に合流する。ここで大失敗。右に行くところを左に行
ってしまい、伊予富士と思った山頂は東黒森山であった。地図をよく確かめず、またスマホアプリのYAMAPも確認し
なかったためだ。がっかりしたがすぐに引き返し、あとから来た妻に事情を話し、分岐点まで戻って、伊予富士に向
かった。約40分のロスとなったが回復可能だった。
唯、帰りに「木の香」によって汗を流せるか微妙となった。石鎚方面からガスが流れてきてあっという間に視界が遮られたが、道は明瞭で心配はないアップダ
ウンを繰り返しながら13時過ぎに山頂に到着、他の登山者に写真を撮ってもらい、すぐ下山開始。直下に見えるUFOLINEめがけてどんどん下っていく。あっとい
う間に登山口に戻ってきた
時計を見たところまだ2時過ぎなので、何とか温泉に立ち寄れるようだ。40分ほどで「木の香」に到着、汗を流し着替えをして荷物のパッキング。気分よく松山空
港へ向かう。
渋滞もなく空港に着き、レンタカーを返却した後、空港内の寿司屋で新鮮なネタの握りを食べ、お土産を買い、ほぼ満席の最終便で帰ってきた。
今回の四国遠征は晴天に恵まれ、目標の4座を無事登ることができた。三本杭の滑床渓谷の滑るように流れる水の色、瓶ケ森の見渡す限り拡がる緑のササ原、
その緑のササ原を縫うように走るUFOLINE。いつまでも印象に残る景色となった。また、2度の厳しい峠越えの運転は今でも思い出すと冷や汗が出る。