東京オリンピックの開催中(7月23日〜8月8日)かつ緊急事態宣言発令の中、北アルプスの蓮華岳に登ることにした。昨年登りたかったが、針ノ木小屋がクローズで針ノ木雪渓の整備が不十分なことが予想され、止む
得ず回避した。蓮華岳は針ノ木岳と共に後立山連峰の最南端に位置し、北アルプスの中央にそびえる360度の展望が有る山である。また、針ノ木雪渓は白馬大雪渓、劒沢雪渓に並ぶ日本三大雪渓の一つである。山名の
蓮華とは蓮の花を意味するが、蓮華岳の優しくたおやかな山容から名付けられたのだろうか。
[行程]
2021年8月5日(木)
自宅5:05→国立・府中IC→中央道・長野道→安曇野IC→9:30扇沢10:07→11:23大沢小屋11:29→15:20針ノ木小屋泊
6日(金)
針ノ木小屋6:07→7:22蓮華岳8:14→9:07針ノ木小屋9:15→12:52大沢小屋12:54→14:19扇沢15:30→安曇野IC→調布IC→20:12自宅
[山行日誌]
針ノ木雪渓を余裕をもって登れるように朝5時に出発、中央道から長野道に入り、安曇野ICで下りて約1時間で扇沢に到着した。観光客や登山者が多く来ており、駐車場はほ
ぼ満車状態であった。 早速準備して、針ノ木岳登山口のテントで登山届を提出、大沢小屋へ向けて歩みだした。天候は曇り、針ノ木方面は濃いガスに包まれていた。涸れ沢
を何度か渡り、アップダウンを繰り返して、ほぼコースタイム通りで大沢小屋に到着した。今年は大沢小屋はクローズしており、水分補給後雪渓に向かった。約30分歩くと左
手方面に針ノ木雪渓上部が見えてきた。雪渓下部では大きく割れ目ができており、ごうごうと水しぶきが上がっていた。
ピンクテープで危険な場所が示されいる。雪渓の整備をされている針ノ木小屋に感謝である。夏道をしばらく登ったのち雪渓に降り立つ。軽アイゼンなので多少心配してい
たが、雪が腐って来ているので、滑落することはないようだ。高度を上げていくと雪渓の「ノド」と言われている幅の狭い部分にやって来る。斜度は約40度あるだろうか。慎重
に歩幅を狭くして登っていく。この時間、下りてくる人は何人かいるが登る人はほとんどいない。ようやく雪渓登りを終え、今度は右岸の夏道を登る。細く険しい道が続く。幸
い、曇りで時々寒いくらいの涼風が身体のほてりを冷やしてくれる。やがて雪渓が消え、左岸の九十九折りに移る。何度も立ち止まり息を整える。やがて上方に針ノ木小屋
の黒い建物が見えてくる。多くの登山者が小屋の外のベンチで雑談している。15時半前に何とか到着。受付を済まし、割り当てられた2階の部屋で一息。感染予防でマスク
着用を厳しく求められる。定員も半分以下に抑えているようで、食事やトイレなど余裕が有って過ごしやすい。見えている山の説明なども気軽にしてくれる。
夜中に窓から星が見えるので妻と外に出て星座鑑賞。天の川、夏の大三角など怖いくらいに多くの星座がきらめく。飛行機の航跡が鮮明に見える。
翌朝、すっきりと晴れた空の下、他の登山者達と山座同定を楽しむ。針ノ木小屋の方が色々な質問に答えてくれる。南に槍、穂高、餓鬼,燕岳、南西に野口五郎、水晶、赤
牛、薬師、北西に残雪を抱いた劒、立山、北に鹿島槍、白馬、朝日、北東に高妻、戸隠、飯縄、東に浅間,南東に八ヶ岳、富士山、甲斐駒、北岳、間ノ岳。
朝食後、蓮華岳に向けて出発。大きな荷物は小屋で預かってもらう。蓮華岳の道は最初はびっくりするような急登だが、少し我慢すると緩やかな道となる。砂礫の中にコマ
クサの可憐な姿が見える。タカネシオガマも姿を現す。だらだらした道を登っていくと蓮華本峰が前方に見えてくる。青空が広がり、夏本番。間もなく蓮華山頂に到着。空気
が乾いているせいか、劒、立山、槍、富士などが近い。他の登山者と写真を撮り合ったり情報交換をして1時間弱山頂で過ごし、針ノ木小屋まで下りてきて準備を整え、9時
過ぎに扇沢に向けて下山開始
登ってくる登山者に声をかけながら慎重に進む。夏道を降り、雪渓ではさらに慎重に歩を進める。雪渓下部で雪が解けて渡れなくなった箇所に、小屋の方が橋を架けている。
丁重にお礼を言って渡る。夏道に移ってからもアップダウンがきつい。ロープをかけてある場所も幾つかある。強い日光に照らされてへとへとになりながら、大沢小屋を経て
扇沢には15時過ぎに帰ってきた。扇沢のレストランで遅い昼食を取り、大量に水分を取ってほっと一息。帰宅準備をして日帰り温泉には寄らず、まっすぐ8時過ぎに帰宅し
た。
今回は久しぶりの北アルプス、久しぶりの山小屋泊、久しぶりの雪渓の登り降り、と「久しぶり」が重なり、体力的には厳しいものであったが、雪渓の涼風、山小屋の方達や
他の登山者の方達との会話、そして何よりもぐるりと周囲を囲む思い出深い山々の景色が元気を与えてくれた。やはり北アルプスには何かがある。