鶴見岳(1375m)・傾山(1605m)・涌蓋山(1500m)


   日本三百名山完登へ向けての山旅も残り3分の1となった。四国は終り、残るは北海道1座、東北1座、中国4座、九州6座、関西6座、中部5座、北アルプス5座、中央アルプス2座、南アルプス3座、日光1座の34座

 となった。今回の2泊3日の山行と11月始めの2泊3日の山行で、九州の6座の終了を目指す。

  最初に登る山は大分空港に最も近い鶴見岳で、別府市街地の背後に屏風のように連なる連山の主峰である。活火山で山頂の北西斜面にある噴気孔からは常時白い噴気を上げ、世界有数の湧出量を誇る別府温泉

 の源となっている。別府ロープウエーが架けられ、山麓には温泉の守護神として火男火売(ほのおほのめ)神社が祀られている。

  次に登る傾山は今回の山行のメーンの山である。大分県と宮崎県の県境に位置し、一帯は祖母傾国定公園に指定されている。北へ岩稜を重ね西面が絶壁となっていて、北側から遠望すると山が傾いていることから命

 名された。どこから登っても9時間近くかかる難峰で、どのように攻略するか苦慮していたが、最近、ユーチューブを見ていたら、黒仁田林道からのコースが有り、5時間弱で登れることが分かった。唯、この林道は切り出

 した木材を運搬するトラックが走り、大きな穴が多数あるとのことだ。日之影村の観光協会でも民宿のご主人からも車高の高い四輪駆動車が必須と言われた。そこでレンタカー会社で四輪駆動の車を通常の車の倍近い

 値段で借りた。

  三番目に登る山は涌蓋山(わいたさん)で大分県の筋湯温泉の近くにあり、九重山系の北西端にある独立峰である。美しい裾を引くその穏やかな三角形の山容から,「玖珠富士」と呼ばれ、地元民に愛されている。山

 腹は樹林に覆われ、上部はササやススキの草尾根となっている。

  [行程]

    2021年10月5日(火)

    自宅6:00→7:00羽田空港7:50→9:15大分空港9:30→11:13別府ロープウエー11:31→11:51山頂12:08→13:39火男火売神社13:46→14:11旗の台登山口14:30→16:45日之影村民宿【河鹿】泊

            6日(水)

    民宿【河鹿】6:15→黒仁田林道→7:16九十九越登山口11:11→11:39九十九越11:50→13:00後傾13:15→13:29本傾13:47→後傾14:00→15:10九十九越15:13→15:29九十九越登山口15:3119:00旅館【ゆのもと

    荘】泊

            7日(木)

    【ゆのもと荘】8:00→8:05ひせん湯登山口8:20→涌蓋越9:20→11:05女岳11:16→11:30涌蓋山山頂12:17→12:28女岳12:37→涌蓋越13:20→14:24ひせん湯登山口14:30→16:40大分空港17:00→18:15羽田空港

    18:30→20:10自宅



[山行日誌]

車で羽田空港まで行き、7時50分の大分空港便に乗った。9時過ぎに大分空港に到着、早速レンタカーを見たところ、スバルのレボーグという四駆で車体が長く車高が低い。

これで林道を走れるか不安がよぎる。
まずは鶴見岳に行く。今日の宿泊地、日之影村の民宿をナビに入れると、3時間以上かかるとのことで、鶴見岳は行きはロープウエー

を使い、帰りに歩くことにする。別府高原駅でロープウエーに乗車、あっという間に山頂駅に到着。ここから歩き始める。天気は晴れ。日差しが強い。巨大な温度計が有る。

階段を15分ほど登ると鶴見岳山頂。西端にテレビ塔が立ち、その向こうに由布岳の巨体が見える。別府湾、別府市街地が手に取るようだ。写真を撮り、山頂からの景色を

楽しんだのち、下山開始。樹林帯の中の一気登山道を下りる。毎年4月、山頂を往復する一気登山というイベントがあるそうだ。





道理であちこちにショートカットが有り、
また、登山道を外れるなとの看板が立っている。位置を示すAからZまでの表示とその標高が書かれた表示板もある。中々急で、我々

にとっては走って登り降りするなどとんでもない。登ってくる何人かと挨拶を交わ
す。1時間半ほどで火男火売神社に到着。山中にしては大きな神社で、銀杏が地面を黄色に

染めている。参拝後、さらに下山を続け、ようやく旗の台登山口。
























休む間もなく宮崎県との県境にある日之影村の民宿【河
鹿】に向かう。東九州自動車道に乗り、まずは米良ICを目指し、そこから国道326号線に出る。ナビの到着時間は

17時50分。何とか17時までに着くことを目指して飛ばす。徐々に到着時間は早くなる。宇目から県道
6号線に入る。道は良いが完全に山道で何度も峠に出る。1時間近く走っ

ているのに対向車が1台もない。途中、例の黒仁田林道に入る道を右に分け、そこから10分ほどで民宿【河鹿】に到着。宿のご主人は83歳で一
人で民宿をやっているとのこと

奥さんは7年前に亡くなったそうだ。我々の車を見て心配そうに、「黒仁田林道はこの車では厳しい、レッカーで運ばれた車もある。でもゆっくり行けば何とかなるかもしれない

」と言わ
、悲観的になったりほっとしたり。ご主人は夕食中もずっと我々の傍に座って、一人暮らしの話をしていた。車でお客さんを登山口まで送り、車が壊れたこともある

そうだ。
翌朝、明るくなるのを待って6時過ぎに出発。黒仁田林道に入り、最初は舗装道路で快調に走ったが、すぐにデコボコ道となる。ちょっとした穴でも腹をこするので止ま

るくらいのスピードで走る。それでもこするが、
1時間かけて11キロの林道の終点の登山口まで来た。





登山届を出して歩き始めたが、ヤマップの地図を見ると、もう少し先に駐車場が有るので、また、車に乗り込んだ。300bぐらい先まで行って行き止まり。ここで車
をUターンさ

せようとしたところ、大アクシデント発生。車は完全に横を向いたまま前にも後にも行けなくなった。狭い道でのUターンが命とり。タイヤの下に石や木の枝を放り込んでも空回

り。ジャッキアップして石を放り
んでも空回り。天を仰いだ。携帯は通じず辺りに人はいない。3時間以上経過。このアクシデントが無ければ山頂にいるはずなのに。もう一度

ジャッキアップ。妻の発案でジャッキアップしたままで脱出を試みた。タイ
ヤの位置が高かったせいで引っ掛かり脱出成功。3時間40分のロス。車を元の登山口に戻し、急いで

登山道を歩き始める。ここまで来た以上諦めることは許されない。疲れた体に鞭打って登る。ゆるい傾斜の沢沿い
の道で、ピンクのリボンのお陰で迷うことはない。30分ほど

で稜線上の九十九越。ここで一息。宿で作ってもらったおにぎりを食べる。天気は快晴。絶好の登山日和だ。平らな道をしばらく行き、その後ゆるい傾斜の道
を千間山

(1378m)まで歩く。徐々に高度を上げ、後傾直下の急傾斜の道が始まる。所々ロープやクサリが現れる。




唯、手掛かりはしっかりとしているので安心だ。やがて大岩が横たわる後傾に到着。杉ケ越からの道
と合流する。ここから少し下って登り返すと本傾山頂。素晴らしい眺めだ。

360度の大展望が広がり、遮るものがない。右手に障子尾根、左手に縦走コースの山々を従える祖母山。小休止後、後傾に戻ってさらに一休
み。下山は慎重に歩を進める。

急降下、緩斜面と過ぎ、九十九越。残りを15分程で下り、登山口に到着。目標の16時を30分ほど上回った。二人ともよく頑張りました。
ゆっくりはしていられない。黒仁田林道

と県道6号線を明るいうちに抜けなければならない。すぐ車上の人となり、ゆっくりと下り始める。要領が分かって来たので腹をこする回数が減った。40分で県道6号線に出る。

ビは今夜の宿泊地筋湯温泉の到着時間を20時と言っている。県道から国道、また県道と走り、道は空いていたので19時に【ゆのもと荘】に到着した。途中、【ゆのもと荘】に

電話をして、8時過ぎになるので迷惑なら途
中で夕飯を買っていくと伝えたところ、何時でもよいので是非こちらで食べてください、と言ってもらった。とてもありがたかった。





【ゆのもと荘】で豊後牛やその他多彩なメニューの夕食を食べ、その後打たせ湯に入ってお湯で頭や肩のマッサージをして生き返った。その夜は爆睡。
翌朝、美味しい朝食を

ゆっくり味わい、車で5分のひぜん湯登山口から涌蓋山登山開始。最初は樹林帯、八丁原からの登山道との合流点が涌蓋越。視界が開けて玖珠富士と呼ばれる涌蓋山の秀

麗な姿を眺めな
がら進む。カヤの原を行くと女岳。急登を辛抱して登っていくと広々とした山頂に出る。東面には九重の山々。昨日登った傾山、祖母山、阿蘇の山々が勢揃い

時間に余裕が有るので、他の登山者とおしゃべりを楽
しむ。十分休息した後、下山開始。登り返しがほとんど無いので早い。女岳、涌蓋越を過ぎ、2時間ほどで登山口に到着

準備をして別府温泉を目指したが、少しでも早く帰ろうということで、予定の19時45分便の
1便前の18時15分に間に合うように飛ばした。レンタカーを返却し、空港のカウンター

に尋ねたところ、18時15分の便は飛ばない、と言われがっかり。ところが、17時の便ならまだ間に合う、と言われ、慌てて担当者
の後を追う。何とか間に合い羽田には19時前

に到着、20時過ぎに帰宅した。

 


今回の九州山行は、車の脱輪というアクシデントは有ったが、めげずに難峰の傾山に何とか登り、鶴見岳、涌蓋山も終えることができた。好天の下、信仰の山の鶴見岳、岩の

屹立する傾山、そしてカヤト原で覆われ
た優雅な山容の涌蓋山という特徴のある山々を経験できたことは喜びである。










      

トップページに戻る