福井県と岐阜県の県境にある未踏峰、冠山と経ヶ岳に登るべく、9月20日(火)〜21日(水)に日程を組んだが、今年は台風の当たり年、4つも上陸し、荒天のため断念、飛行機のチケットを無駄にして、新たに
29日(木)〜30日(金)に日程を組んだ。
冠山は九頭竜川の支流足羽川と揖斐川の分水嶺上にあり、烏帽子型の特異な岩峰で知られる。また、経ヶ岳は白山国立公園の一部で、白山火山系に含まれ、山頂の南側直下に噴火口である池の大沢が有る。
戦国時代、一向一揆により麓の勝山市の平泉寺が焼き討ちにされた際、山頂に経巻を埋めたとされ、この名が付いたと言われている。
[日程]
2022年9月29日(木)
自宅4:45→新横浜6:00→米原→9:01武生9:15→10:20冠山峠10:34→12:01冠山13:15→13:35冠平13:50→14:36冠山峠15:00→能面美術館→16:30冠荘
30日(金)
冠荘5:30→6:59経ヶ岳登山口7:12→8:21保月山8:48→9:31杓子岳9:48→10:00中岳10:09→11:11山頂11:15→12:41中岳12:53→13:06杓子岳13:28→14:10保月山14:18→15:05登山口15:15→17:10
武生17:50→米原→新横浜→21:10自宅
[山行日誌]
昨年の9月は北アルプスの鍬崎山、南アルプスの奥茶臼岳、谷川連峰の朝日岳と3座登ったが、今年は天候不順で登ることができなかった。しかし月末に来てようやくチャ
ンス到来、是非登りたいと思ったが、登山アプリの予報では雨模様、悲観的になったが、予定日が近づくにつれて良い方向に変わり、ついには9月末から10月の初めの1
週間、Aの予報に変わった。当初の計画では小松空港からレンタカーで冠山峠に行くつもりだったが、研究の結果、鉄道で行く方が1時間以上早く着くことが分かった。始
発を乗り継ぎ新横浜で「ひかり」に乗って、米原で北陸本線に乗り換え、武生には9時過ぎに着いた。
ここからレンタカーで40キロ離れた冠山峠を目指した。国道417号線はいつの間にか冠山林道と名を変え、両側が切り立った断崖絶壁の道となった。落石が道路上に転
がり、ガードレールはくちゃくちゃ、道幅はいっぱいいっぱい。慎重のうえにも慎重に走り、道路に付けられた番号が10から1になって峠に到着した。約30分、スリル満点
であった。天気はほぼ快晴、ユーチューブで何度も見た容貌魁偉な冠山とその形をまねた揖斐川の石碑が青空に映えていた。準備を整え出発。いきなり急登だがよく整
備された道を軽快に歩く。ブナの原生林はまだ黄葉には早い。最低鞍部まで下りそこから緩やかに登っていく。まだまだ遠いと思っていた山頂がいきなり眼前に現れる。冠
山と冠平の分岐を過ぎてしばらく行くと岩壁が現れる。およそ高さ30メートル、60度ぐらいの岩壁である。岩が滑らないのが助かる。窪みに足先やかかとを入れて身体を
確保しながら一歩一歩進む。ストックが邪魔なので手首にかける。ロープを使ってバランスを取りながら3点確保。何とかクリアーし稜線を左に曲がって山頂に到着。山頂
は狭い。先客が3名。白山には雲がかかり御前ケ峰と別山がはっきりしない。
東に能郷白山、西に金草岳が近く、南には日本最大の貯水量を誇る徳山湖が見える。後から登ってきた方に写真を撮ってもらい下山を開始。岩壁を慎重に下り、クマザサをかき分けて冠平でもう一休み。登りが楽だ
ったので余裕がある。周囲の景色を楽しみながら下っていく。あっという間に登山口。再度冠山の写真を取った後峠を出発。行きに比べたらはるかに楽な気分で下る。麓に有る能面の美術館に立ち寄る。ここ池田町は
室町時代から面打師を多く輩出していて、町内には多くの古い能面が保管されている。本日の宿は417号の道筋から少し入ったところにある温泉宿「冠荘」。日帰り温泉の客も来ている。地元の食材がふんだんな夕食
を楽しみ、その夜は爆睡。
翌朝は暗いうちに出発、経ヶ岳登山口まで1時間半のドライブ。法恩寺林道を慎重に走り、展望台のある登山口に7時前に到着。展望台から百名山の荒島岳、二百名山の
能郷白山、大日岳、三百名山の野伏岳の景色を眺めた後、登山開始。天気は本日も快晴に近く、暑いくらいだ。持参した水はペットボトル3本。全然足りない。朝食に付い
てきた250tのお茶2本が貴重となった。すぐに杉林の急登が始まる。一気に100bほど登った後緩やかな道となる。やがてブナとミズナラが合体した「アダムとイブ」を通り
過ぎ、ブナが主要となって保月山。ここで宿で作ってもらった朝食弁当を食べる。
保月山からヤセ尾根を下って登り返し、更にハシゴを登って杓子岳。眼前にゆったりと裾を伸ばした経ヶ岳が登場。この付近は一面にクマザサの原っぱ。樹木が無い。そ
の中を小高い丘のような中岳を過ぎ、更に長い階段を下りて、唐谷コースとの合流点切窓に到着。ここからはほぼ直登。
背丈を超えるササに覆われた登山道をまっすぐに登る。視界がぐんぐん開けて周囲の山々が目に入ってくる。息を切らしながら何とか足を動かしてようやく山頂に到着。
360度の展望が広がっている。白山連峰、赤兎山、足下には法恩寺山、荒島岳、越前大野の町、部子山、銀杏峰など大パノラマだ。
下山はギラギラ輝く太陽を避けながらだった。クマザサに隠れ急降下して切窓、急な階段を登って中岳、ササの平原を横切り杓子岳。ここで水は500tのお茶1本だけ。
妻と一口ずつ含みゆっくり飲み込む。初めての体験である。このようなときはスポーツドリンクよりお茶が良いようだ。口にまとわりつかずさらっとしている。ようやく樹林帯
に入り直射日光が避けられる。杓子岳の急降下を過ぎ緩やかに登って保月山。ブナ林の分厚い枝葉に感謝しながら降下を続け、15時過ぎに登山口に到着。手早く着替
え、レンタカーの返却時間が17時なので急いで林道を下り、中部縦貫道、北陸道を通って、17時過ぎに武生に到着した。
17時50分の特急「白鷺号」に間に合い、米原、新横浜を通って21時過ぎに帰宅した。今回の登山は列車を利用したことで、時間に追われながらも気持ちに余裕のある
山行となった。また、容貌魁偉な冠山、クマザサに覆われた急登の経ヶ岳、共に個性豊かな山で、後々の記憶に残るだろう。