関西では護摩壇山, 山上ケ岳、藤原岳の3座が残っている。今回、和歌山県の護摩壇山(ごまだんざん)と奈良県の山上ケ岳に登ることにした。護摩壇山は高野山の南に位置し、奥高野連山の中心となっている。中
里介山の小説「大菩薩峠」の舞台であり、主人公の机龍之介は近くの曼陀羅の滝で治療をしている。2009年、東寄りのピークが新たに「龍神岳」と命名され、和歌山県最高峰の地位を譲った。山名の由来は、源平合戦
の折、敗れて落ち延びてきた平維盛が「護摩木」を焚いて身の行く末を占ったことから付いたそうだ。「護摩木」とは井桁に組んだ木材を意味する。
また、山上ケ岳は山岳信仰の聖地として知られ、2004年に世界遺産に登録された。山頂にある大峯山寺は約1300年前に修験道の開祖、役の行者(えんのぎょうじゃ)が開いたもので、今も大峯講の慣習が有り、全
国各地から参加者が戸開け期間中(5月3日〜9月23日)に参拝登山をする。いまだに女人禁制が守られ、大峯山寺に通じる各登山道の入り口には「女人結界門」が有って、女性の入域を阻んでいる。各結界門には、
古来山上ケ岳は修験者が厳しい鍛錬の場としてきた、その伝統を守りたいのでぜひ協力してほしい、との看板が立っている。山上ケ岳を扱っているツアーを見ると、参加希望の女性の方は是非相談してくださいとの注意
書きがある。多分これは山上ケ岳に登らせることを前提に方策を用意しているということだろう。我々も今回この「典型的な性差別」に挑戦することも考えたが、折角の登山で嫌な思いはしたくない、ということで、「女人大
峯」と言われる稲村ケ岳登山口から登り、山頂の大峯山寺に最も近いレンゲ辻結界門まで一緒に行き、そこから妻は引き返し、私が一人で山頂まで、その後稲村山荘で合流する、とのコースを考えた。
[行程]
2022年10月11日(火)
自宅4:45→新横浜6:00→京都8:10→9:02大和八木9:30→11:00ゴマさんスカイタワー11:20→11:44護摩壇山山頂11:57→12:07竜神岳12:21→12:46ゴマさんスカイタワー14:15→16:00洞川温泉 一丸旅館泊
12日(水)
一丸旅館5:30→5:45母公堂登山口6:00→7:26法力峠7:29→9:03稲村山荘9:24→10:15レンゲ辻10:30→11:05山上ケ岳山頂(大峯山寺)11:35→レンゲ辻12:00→12:35稲村山荘12:47→法力峠14:03→14:56登山
口15:10→17:00大和八木17:25→18:30京都18:35→20:25新横浜→21:10自宅
[山行日誌]
朝一の南武線に乗り、武蔵小杉、菊名経由で新横浜、新幹線に乗り京都へ、そこから近鉄特急に乗り、大和八木駅には9時過ぎに到着、レンタカーで和歌山県の護摩壇
山(ごまだんざん)スカイタワーに向かった。およそ100キロの距離。京奈和道路の紀北ICで下り480号線、371号線、高野龍神道路で高野山近くを通って、12時前にス
カイタワーに到着した。天気は高曇り、絶好の登山日和だ。護摩壇山山頂までは15分の距離、スカイタワー横の整備された木段を一頑張りで山頂に到着。山頂からは山
また山の景色で、改めて深さを感じる。一息後、隣の鉄塔のある龍神岳に向かう。10分ほどで到着。ここからは360度の展望が開け以前に登った伯母子岳や釈迦ケ岳が
見える。その後ゴマさんスカイタワーに引き返し、高さ約30bのスカイタワーにエレベーターで登る。
遠くの山々は霞んでいるが輪郭はしっかり見える。ゆっくりスカイタワーを一回りした後、食堂で昼食代わりに購入したチーズケーキを食べ、車に戻る。ナビでは宿泊地
洞川温泉まで105キロと表示され、到着時間も17時過ぎだったが、走っているうちにナビが新しい経路を見つけたらしく距離が45キロとなった。指示通りに県道23号
線を軽快に走る。どうも新しく整備された道のようで、トンネルも大きく明るい。本日の宿泊地、洞川温泉の「一丸旅館」には16時前に到着。炬燵や石油ストーブが既にス
タンバイ。旅館のオーナー夫婦から山上ケ岳のコースについてレクチャーを受けた。ご主人は何度も登っているようで、私たちの計画を話したところ、そのコースなら危険
もなく全く問題はないとのことだった。「いまなら」というキャンペーンで宿代は5000円引き、プラス3000円のクーポンがもらえた。昨年も随分値引きがあったことを思い
出した。
翌朝、まだ暗いうちに出発、近くの母公堂(ははこどう)駐車場に車を止め、6時に稲村ケ岳登山口から登り始めた。天気は本日も高曇りで絶好の登山日和。まずは法力峠
を目指す。登山道は緩やかに針葉樹林帯を登っていく。汗もかかず法力峠に到着。次に稲村山荘が目標。道に橋、ハシゴ、クサリが出てきて緊張する。大日山のとんがり
帽子が出てくると稲村山荘だ。平日は小屋番はいない。ここで一休み。ここまで他の登山者とは会っていない。今度はいよいよレンゲ辻の結界門へ向かう。クマザサに覆
われた道を過ぎると道は険しくなる。湿った岩場を通過する際、スリップ、思わずつかんだ木の枝も折れて2bほど落下。細い立木に引っ掛かり危うくそれ以上の落下は免
れた。泥だらけになったがケガはなくラッキー。転落は初めての経験である。
レンゲ辻の近くで急降下して結界門に到着。結界門の前で記念写真を撮り妻と別れた。ここからは清浄大橋からの道と合流し急登の連続となるが、橋、ハシゴ、石段な
どが設置されていて歩きやすくなっている。息を弾ませ喘ぎながら登っていく。30分ほどで大峯山寺の境内に到着。きりっとした空気が漂う。クマザサがきれいに刈られた
道を山頂へ。薄曇りのなか、重畳たる山々が周囲を囲む。山頂で写真を撮り、次に大峯山寺を見学。寺の雨戸は皆閉まっている。表門まで行ってから引き返す。途中、吉
野の方からやってきた登山者と言葉を交わす。車を置いて奥駆道から来たとのこと。顔を隠して女性がやって来ているそうだ。
30分ほど滞在した後下山にかかる。レンゲ辻まで一気に下り、その後稲村山荘までトラバース。ベンチで休んでいた妻を発見、合流した。宿で作ってもらったおにぎり弁当
を食べまったりする。その後下山開始。走るように下りていく。法力峠を過ぎ、平らに近い道をどんどん下りて母公堂登山口。身支度をして出発。途中、もらったクーポンで
買い物を済まし、大和八木でレンタカーを返却。17時過ぎの近鉄特急に間に合い、京都へ。21時過ぎに帰宅した。
今回は三百名山で最も簡単に登れる護摩壇山と女人禁制という古い戒律を持つ山上ケ岳が対象であったが、特に山上ケ岳では静けさの中にも変化に富んだ山歩きを楽し
むことができた。