中国地方に残っている4座のうち、扇ノ山(おうぎのせん)を除く3座を1泊2日で登ることにした。最近はグーグルマップのお陰で登山口までの距離や時間が容易に計算できるようになり、正確な予定が立てられるよう
になった。米子空港から吾妻山の登山口まで、そして吾妻山の登山口から道後山の登山口である月見ヶ丘駐車場まで、距離と時間はグーグルマップでほぼ正確に知ることができた。また、カーナビでは出てこない小さな
登山口でもヤマップの地図をタップすればグーグルマップにつながり、ナビが起動して案内してくれる。以前は登山口が分からず何時間も走り回り、結局登れずに帰ってきたことが有ったが、電子機器の進歩は登山の世
界を確実に変えつつある。
今回、1日前の25日(火)〜26日(水)で予定を組んでいたが、4日前に突如発生した低温域で天候が不安定となり、降雪も予想されたので、慌てて飛行機、ホテル、レンタカーの日程を1日ずらした。これも天気
アプリ「登山天気」のお陰で、荒れ模様の天候を避けて絶好の登山日和の中、穏やかな山の雰囲気を楽しみながら余裕を持って歩くことができた。
吾妻山は島根県の奥出雲と広島県庄原市の境にあり、山容は台地上の優美な姿である。比婆(ひば)道後帝釈国定公園の一角にある。山名は伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が、比婆山に眠る妻の伊邪那美命(いざ
なみのみこと)に、「ああ我妻よ」と呼びかけたことに由来する。道後山も比婆道後帝釈国定公園の1部であり、鳥取県と接していて山容はなだらかである。那岐山は氷ノ山後山那岐山国定公園内に有り、鳥取県と岡山県
の県境に位置し、緩やかな裾野を長く引くたおやかな山である。山名は諸説あるが、現在那岐神社に祀られている伊邪那岐と伊邪那美の二神から取られたとの説が有力である。ここは日本三大局地風の一つ広戸風が
起きることで有名である。他の二つは山形県の「清川だし」と愛媛県の「やまじ風」である。
[行程]
2022年10月26日(水)
自宅5:10→5:50羽田空港6:50→8:05米子鬼太郎空港8:20→10:36吾妻山ロッジ11:01→11:36吾妻山山頂11:51→12:25吾妻山ロッジ12:40→13:25月見ヶ丘駐車場13:47→14:27岩樋山14:34→14:56道後山
15:15→16:00月見ヶ丘登山口16:05→17:00「養浩荘」泊
27日(木)
「養浩荘」7:00→8:20那岐山登山口8:46→9:50大神岩10:02→10:39避難小屋10:42→10:51山頂11:24→13:01登山口13:05→17:30鳥取コナン空港18:40→19:50羽田空港20:00→20:50自宅
[山行日誌]
天気アプリ「登山天気」と首っ引きだったが、本日から中国地方の天気は安定、暖かくなるとの予報で、安心して準備をし家を出た。早朝ながら羽田空港は人が多い。飛
行機も6〜7割の搭乗率。米子空港でレンタカーを借り、奥出雲の吾妻山ロッジを目指す。松江道から県道を走り、県民の森、国民休暇村として開発された地域の中ほど
にある吾妻山ロッジにほぼ予定時間の10時半過ぎに到着。赤い屋根のロッジの横から歩き始める。周囲は草原状でまっすぐ山頂を見上げながら登っていく。道は緩やか
天気は高曇り、前方には壁のように樹林帯が拡がっている。紅葉が始まっていて黄色や赤色が目立つ。振り返るとロッジの赤い屋根が草原の中に映えている。
少しずつ道が急となって湿ってきたが、まもなく平らになって山頂に到着。山頂は広く、多くの登山者が憩いの時間を過ごしている。緩やかな山並みが霞んで見えている。
北の方角に中国地方の巨人伯耆大山が聳えている。他の登山者と会話した後下山開始。30分ほどでロッジに到着。早速次の目的地である道後山の月見ヶ丘駐車場に
向かう。
県道とは言え山中を走る道路で、狭いうえに時々思い出したように対向車がやって来る。慎重に運転、約1時間後に駐車場に到着、早速準備をして歩き始める。既に14時
近くで日没に間に合うか心配だが、幸い、空は高く気温も15度ぐらいありそうなので何とかなりそうだ。まずは前衛の山岩樋山(いわひやま)山頂を目指す。コナラやカエデ
そしてカラマツ林が続く。急な道を30分ほど頑張るとなだらかになり山頂に到着。360度の眺めが拡がっている。北東には大山、東になだらかな道後山。一休み後、明治末
期に県境に築かれた両国牧場の石塁に沿って東に進む。昭和30年代まで牛の放牧が行われていたそうだ。ササ原の中狭い道を登っていくと道後山の頂上に到着。一等
三角点がある。眺望は東に大山、南に猫山、西に比婆山、猿政山が望める。休んでいた単独行の登山者と会話を交わす。シャッターを互いに押し合って分かれ、下山開始
砂鉄を取り出したタタラ製鉄の水源として作られた大池の脇を通り、岩樋山トラバース道から月見ヶ丘駐車場に戻った。まだ16時前、思ったより早く戻ってきた。
すぐに本日の宿、庄原市の帝釈峡の近くにある「養浩荘」に向かった。
およそ1時間で宿に到着。全国割、広島割、クーポンそして庄原割の説明を受けた。宿代からお釣りがくるほどの割引だ。夕食は地元の食材を生かした料理で、質と量
共に満点だった。
翌朝7時過ぎに宿を出て、那岐山の岡山県側の登山口に向かう。東城ICから中国自動車道、1時間ほど走って津山ICで下り、国道53号線から那岐山第3駐車場に8時
20分に到着。人気の山らしく既に5,6台駐車している。天気は高曇り、早速準備をしてCコースから登り始める。緩やかな広い道だが大きな岩がゴロゴロしていて歩きにく
い。始まりかけた雑木紅葉が心地よい。しばらくは木段、石段、ゴロゴロ石の道が続く。1時間で大神岩と呼ばれる大岩に到着。大岩に登ると眼下に街並みが箱庭のよ
うに見える。一休み後、広葉樹林の尾根道を登っていく。三角点ピークを越え、避難小屋の横を通って那岐山山頂へ。多くの登山者が休んでいる。なだらかな山頂からは3
60度の展望が広がる。お馴染みの大山、遠くに瀬戸内海も霞んで見える。山頂には大勢の登山者が休息を取っている。何人かとおしゃべりし、宿で作ってもらったお
弁当に舌鼓を打つ。
山頂の雰囲気をたっぷり楽しんだのち、鳥取方面の登山道へ下っていく。鳥取県智頭町と岡山県奈義町が交錯している。途中、大きく曲がって、また、岡山県側の登山
道に入っていく。蛇淵ノ滝方面の表示が出てくる。やがて登りに使った登山道と合流し、少し歩いてちょうど13時に第3駐車場に到着。手早く着替え荷物を整理して鳥取空
港へ向かった。途中、あちこち寄り道を重ね、空港には程良い時間に着いた。飛行機は順調で20分も早く羽田空港に到着、21時前に帰宅した。
今回登った3座はいずれも登山レベルとしては初級で楽に登ることができたが、いずれもロマン溢れる神話の舞台となっており、その伸びやかな高原台地状の山頂は
数々の逸話を想起させる。非常に短い間だったが、これまでにない余裕たっぷりの山行を楽しんだ。
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