朝日岳(2418m)






  いよいよ301座目の北アルプス朝日岳に挑戦する機会がやって来た。いつも厳しい山に登る際に同行をお願いしている友人に今回も同行をお願いした。一昨年(2023年)はコロナ禍で朝日小屋が9月2日に小屋仕舞

 いしてしまったため登れず、昨年は3度計画し朝日小屋の予約を取ったが、台風と大雨で諦めざるを得なかった。特に3度目は北又林道入口の小川温泉に宿泊、翌朝タクシーが迎えに来たが、豪雨のせいで断念。今

 年は5度目の挑戦となった。

  朝日岳は北アルプス後立山連峰の最北部に位置し、日本海からの季節風を受けて積雪量が多く、夏でも雪渓や雪田が数多く見受けられる。この豊富な残雪で高山植物が山腹の至る所に自生し、その種類は350種

 を越えると言われ、訪れる登山者を楽しませてくれる。山名の由来は山間の集落から最初に朝日に染まる山として名付けられたようだ。



  [行程]

   2025年8月4日(月)

   自宅7:00→7:50東京駅8:41→10:53糸魚川12:20→13:55蓮華温泉泊

         5日(火)

   蓮華温泉5:00→7:30白高地沢出合7:35→9:45花園三角点9:54→13:00吹上のコル13:11→14:06朝日岳14:24→15:26朝日小屋泊

         6日(水)

   右膝痛のため下山を断念  7日(木)、8日(金) 小屋に停滞

         9日(土)

   朝日小屋から富山県警山岳警備隊のヘリで富山空港へ(7時30分〜7時50分)

   富山空港→富山駅10:24→12:36東京駅12:45→13:30自宅



[山行日誌]
 
いつものように新幹線(北陸新幹線)内で待ち合わせ、糸魚川には11時前に到着、早いお昼を済ませ、12時20分発の蓮華温泉行のバスに乗り込んだ。バスは山道に入

ると対向車とのすれ違いや路面の凹凸に苦労
しながら22キロの距離を走り、14時前に蓮華温泉に到着した。登山客や普段着の温泉入浴者で駐車場はほぼ満車だった。

内湯に入り夕食を食べ早めに就寝、翌朝に備えた。
朝4時に起き準備をして5時に宿舎を出発天気アプリ「登山天気」では終日曇りの予想であったが、山頂付近は厚い雨

雲がかかり、これからどんどん悪くなるようだ。がっかり。まずはキャンプ場に向かい、途中から
キャンプ場への道を左に分けて湿原地帯の兵馬(へいば)ノ平に到着。ここ

は湿地帯で背の高い高山植物が全体に広がっている。蓮華温泉の標高は1465m、瀬戸川に掛かる瀬戸橋の標高は約1150m。およそ
300m下っていく






 まだ雨は落ちてこず、暑くもなく歩きやすい温度だが、朝日岳方面には黒い雨雲が厚くかかっているのが不安材料だ。水音が一段と大きくなって瀬戸川の急流に差し掛か

 る。鉄製の赤茶色の橋を渡
る。ここからは登りとなる。カモシカ坂と呼ばれる急登が始まる。ひたすら足を動かし前に進む。やがて前面が大きく開け眼前に広大な湿原が

 現れる。木道が整備されている。黄色はミヤマキン
ポウゲ、ニッコウキスゲ、白はハクサンイチゲ、チングルマ、ムラサキはミソガワソウ、オオバギボウシ、枚挙にいと

 まがない。「花の朝日岳」として人気があるのがよく分かる。花園三角点と呼ばれる地点にやって来る。
水場があり、近くの雪渓から溶け出した水を飲む。氷のように冷た

 く生き返る心地だ。ここで蓮華温泉で用意してもらったおにぎりを食べる。次の目標は稜線上にある吹上のコル。日本海へと下りていく栂海新道との分
岐だ。ここからが辛

 い。雨が降り出し、風も強まる。急登あり、急降下あり、雪田のトラバースあり、そして風が強く、横殴りの雨と共に行く手を阻む。予定時間から大幅に遅れてようやく吹上

 


のコルに到着。倍近い時間が
かかっている。ここからは朝日岳山頂へ緩やかに登って行く道だが、風雨が一段と強くなり暴風雨状態、しかもガスもかかって生命の危機を

感じるほど。懸命に足を動かし斜面を一歩一歩進み、約1時間の苦闘の末
山頂に至る少し風が弱くなり、準備してきた「日本三百名山完登」の表示板をザックから出して同

行者に写真を撮ってもらう。「日本三百名山完登」。ほっとした気持ちで一杯。嬉しさも込み上げてきた。唯、長居は無
用。暴風雨から逃れて下山開始。途中朝日小屋の方

から電話が入った。いつ頃着くかの問い合わせだ
が、この天気でキャンセルも多かったようだ。朝日小屋への道も雨でぬかるみ、また木道も滑り易くて歩きにくい。やがて

赤い屋根の合
掌造り風の朝日小屋が見えてくる。予定の13時過ぎ到着から2時間ほど遅れた。10時間半かかったが無事来れたのでまずまずだった。

 

 夕食時、小屋で宿泊していた方たち十数名に事情を話し、「日本三百名山完登」のお祝いの乾杯をしてもらった。「1年にどのくらいの数の山に登るのか?」、「どこの山が

 一番大変だったのか?」、「山を選ぶ基準は
?」などいろいろの質問があった。山を愛する人たちからの素直な共感がとても嬉しかった。翌朝4時半に起きて5時半に蓮華

 温泉に向けて出発したが、右膝の変形性膝関節症の痛みがひどく、力が入らない。特に登りになるとガクッとスピードが落ちる。同行の友人と相談をして朝日小屋に戻る

 ことにした。
この日は翌日に備えて休養として膝の回復を願った。夕方、白馬岳方面から10名の団体客が到着。暴風雨の中、厳しいコースで、参加者の方は、「花などは

 目に入らず身を守ることで精一杯」とか、「催行中止にす
べきだった」と嘆いていた。また、蓮華温泉から白馬山荘に向かった8人パーティのうち3人が低体温症となり、そ

 のうちの1人は亡くなった。私と同じ78才だった。

  





夜になっても右ひざの痛みは治まらず、友人と相談して自力下山を断念、滞在していた富山県警の山岳警備隊の方と話し合い、ヘリコプターの出動を依頼した。話合いの

結果、翌日暴風雨が収まるとの予報で、朝
日小屋周辺の視界が開ければヘリが飛来するとのことだったが、翌日は朝日岳周辺が濃いガスに覆われ、視界は百メートル程

度、8日(金)のヘリの運航は中止となった。翌日(土)は朝から晴れ、友人は4時に蓮華
温泉に向けて出発、私は7時半に飛来したヘリに乗せてもらい、富山空港に8時前に

到着した。警備隊の方たちには大変お世話になり感謝の気持ちで一杯である。


 


  


 今回は「日本三百名山完登」に向けて最後の山である朝日岳に挑んだ。辛うじて山頂は踏んだが、山の鉄則である「自分の足で登り、自分の足で下りる」を貫くことができ

 なかった。事前にテニスやウオーキングなどで
1ヶ月足腰を鍛えたが不十分だった。もう一つの山の鉄則の「山の脚力は山で鍛える」もその通りだと感じた。今後はこの

 2つの鉄則を守って登山を続けていきたい。

   


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