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久し振りに北海道の山に行きたくなり,この夕張岳を選んだ。隣の芦別岳とセットで登るのが効率的だが、妻の体力では難しいので、芦別岳は来年に取っておこう。
北海道の山は4年前の石狩岳、天塩岳以来だが、その特徴はハイマツの間を縫って進む登山道だろう。上から見ると緑の平面を墨で一筆書きのように切り取った感
じである。熊も登山道を歩くということを天塩岳で初めて知った。
夕張岳のある夕張市は炭鉱で栄えた町で、黒いダイヤと呼ばれた石炭が石油に取って代わられるまでは大いに栄えた。つい40年ほど前のことである。当時の夕
張は大夕張鉱など多くの炭鉱があり、数万の炭鉱夫とその家族達が住んでいた。また、更にずっと遡ること100年、明治の始め頃、砂金採取達が夕張砂金山を発見した。
現在の紅葉山付近が砂金採取の中心地となり、更に金を求めて上流へ上流へと夕張川を遡っていった。明治20代頃後半には夕張岳周辺が採取の中心地となった。
その後、北見枝幸で一大砂金山が発見され、空前のゴールドラッシュが起き、夕張の砂金は人々から忘れ去られた。
第二次世界大戦後再び夕張川の砂金にスポットが当たった。それは夕張川が日本には少ない砂白金の産地だったからで、多くの砂金採取者がやって来た。それで、夕張
にはカネオベツガワとか白金川など砂金にちなんだ名前が残っている。
夕張岳は、植物学者が夕張岳特有の蛇紋岩に生えるユウバリコザクラ、ユウバリソウを発見してから「花の山」として知られるようになり、1996年には山自体が天然記念
物として登録されている。他に早池峰(岩手)や尾瀬の至仏山も蛇紋岩で出来ており、固有種を持っている。
珍しい植物は盗掘の対象となり、度々被害を受けていたが、現在ではユウパリコザクラの会など多くのボランティアの努力により、何とか自然が守られている。
[行程 ]
8月12日(火)
自宅6:00→羽田空港8:00→9:30新千歳空港10:15→11:00夕張12:10→14:05登山口臨時駐車場14:15→16:20夕張山莊泊
13日(水)
夕張山莊6:30→冷水沢コース分岐7:41→石原平8:13→望岳台8:25→ガマ岩9:17→吹き通9:48し→神社10:06→10:10山頂10:15→10:20神社10:40→吹き通し11:00→
望岳台12:06→石原平12:18→冷水沢分岐12:41→13:40夕張山莊14:15→臨時駐車場16:00→19:30夕張フォレストユースホステル泊
14日(木)
ユースホステル9:05→9:40幸福のハンカチ記念館10:00→10:22石炭村博物館11:30→12:00夕張鹿鳴館13:00→14:10新千歳空港16:30→18:00羽田空港 →19:30自宅
[登山日誌]
夕張岳についてネットで検索すると、夕張山莊までの鹿島林道が崩落のため、国道452号から2km入った
ところまでしか乗り入れが出来ず、残りの7kmは徒歩でとなっていた。(8月23日から車で夕張山莊まで入
れるようになった) 飛行機を早いものに代え、9時過ぎに新千歳空港、レンタカーを借りて夕張を目指し、
色々迷いながら2時過ぎに臨時駐車場に到着、そこで準備をして歩き出した。
始めはダケカンバやシラカバなどの緑の木々と夕張川の流れを楽しみながら歩いていたが、さすがに7km
の道は遠く、歩いても歩いても夕張山莊が見えてこず、ひたすら歩を進めた。
幌尻岳の林道歩きを思い出した。2時間かかってようやく夕張山莊に到着、ユウパリコザクラの会のkさんに出迎えられた。
夕張山莊は昨年(2013年)完成したもので、木の香りが漂うログハウスだった。 二段ベッドが両側にあり20〜30人は泊まれ
そうな広さである。Kさんのお話によると、酒席で冗談交じりに小屋を建て直す話が出てそこからあれよあれよというまに、
全国から寄付を募る、寄付を受ける以上は3年で実現しなければと話が進み、昨年完成したとのことだ。
山荘内をよく見ると、新しい木材と小学校の校舎であった古い木材が混在している。取り壊した校舎や半端になった木材を
利用したそうだ。地盤作りは専門家に任せたがあとは素人の手作りだそうだ。現在は炊事棟やトイレに取り掛かっている。
今夜は我々だけかと思っていたら、7時半頃スズの音が聞こえ単独行の登山者がやってきた。東京からで定年後すぐ
に北海道にやって来て、車で走りながら16座登ってきたとのこと。1回の山行で1座しか登らない我々と対照的で面白
かった。翌朝4時過ぎに起きたがあいにくの雨。それもかなり強い雨脚なので天候の回復を待っていたところ、6時過
ぎになって小雨に変わったので、早速雨具を付けて出発した。山莊の掲示板に熊の目撃情報が書かれていたのでス
ズをセットした。馬の背コースを取りまずは冷水コースとの合流点を目指す。美しい樹林帯の中、かなり急傾斜の道
を一歩ずつ登っていく。1時間あまりで分岐点、更に石原平を経て前岳中腹の台地を北へとトラバースしていくと、芦
別岳の絶好の展望台である望岳台に着く。北に樹海越しに芦別岳の鋭い峰が見え一息入れる。
憩いの沢を渡ると前岳湿原となり木道が敷かれている。高山植物のユキバヒゴタイやシロウマアサツキが風に揺
れている。ガスがかかり夕張岳ははっきりと見えない。男岩、ガマ岩、ヒョウタン池を過ぎていく。 釣り鐘岩が見え
てくるとその先が吹き通し。掲示板で熊を目撃したと書かれていた地点である。スズを鳴らしストックをカチカチとさ
せ、更にヤッホウと声を掛けながら通過する。最後にハイマツの急斜面を登り切ると、夕張神社の祠があり山頂が
直ぐ上に見える。頂上には一等三角点があるが、周囲の景色は何も見えず風が強いので神社に下り、昼食休憩。
雨は止んで時折ガスが晴れ周囲の山々が姿を現す。緑の湿原に草紅葉の先頭を切ってイワイチョウの葉が黄色
に色付いている。ヤマオヤジもうまい具合に悪天候で待機のようだ。
吹き通し、望岳台、冷水分岐とあっという間に通過、14時前にkさんに迎えられ夕張山莊に戻って来た。 また、ひとし
きり雑談のあと山莊をあとにした。7kmの道を歩いて臨時駐車場には16時に到着、その後日帰り温泉「夕鹿の湯」で
汗を流し、19時半に森の中に建つ夕張フォレストユースホステルに入った。 何十年ぶりのユースホステルだったが、
昔のようなシーツ持参とかミーティングには必ず出席などの面倒な規則はなく、洋風民宿と言ったところか。 翌日は
ゆっくり起床、野菜中心の朝食を食べ、9時過ぎにユースホステルを出発、懐かしい「幸福の黄色いハンカチ」の映画ロ
ケ地にある「幸福の黄色いハンカチ記念館」を訪れた。山田洋次監督、高倉健,武田鉄矢、桃井かおり主演の映画の
写真、乗用車、写真パネルなどが飾られていて、当時を思い出した。異様だったのはびっしりと貼られた黄色いメッセ
ージカード、何万枚有るだろうか。それぞれの願いが込められているようだ。ビデオでは映画の最終シーンを上映してい
る。 次に石炭博物館に立ち寄り、模擬坑道を体験した。4半世紀ぶりだろうか。以前は遊園地が有ったが今は無くなっ
たようだ。
その後北海道炭鉱汽船株式会社が迎賓館として建設した「夕張鹿鳴館」へ行き、レストラン「ミレディ」で昼食を食べ、そ
の後大正時代の建物を移築したという内部を見学、14時過ぎに新千歳空港に戻ってきた。
今回は臨時駐車場から夕張山莊までの往復14kmの余分な歩き、また登山当日の天候に恵まれなかったことなどつい
ていないこともあったが、新しい山莊に泊まり、担当管理人のkさんから色々お話を聞けたこと、無事夕張岳に登れたこ
と、「幸福の黄色いハンカチ」の世界に浸れたことなど印象に残ることが色々あって、まずまずの山行となった。