二百名山完登に向けていよいよ残り三座となった。山形県と新潟県に跨がる朝日連峰の北端に聳える以東岳と、福島県と新潟県に跨がる飯豊連峰の北端に聳える朳差岳、そして北アルプスの
最深部にある赤牛岳である。
今回は「東北遠征」として、朳差岳、以東岳の順に二座を登る予定であったが、台風5号が本土を縦断、とても登山が出来る天候ではなかったので、止む得ず朳差岳をあとにずらし、以東岳を先行
させることにした。
[行程]
2017年8月10日(木)
自宅9:15→首都高速三軒茶屋IC→東北道→山形道庄内あさひIC→17:00朝日屋旅館泊
11日(金)
朝日屋旅館5:00→泡滝登山口5:50→8:37大鳥池小屋→以東岳登山口9:43→水場11:29→13:30山頂13:40→直登ルート登山口15:40→16:30大鳥小屋泊
12日(土)
大鳥小屋6:00→8:50泡滝登山口9:10→庄内あさひIC→山形道→鶴岡IC→国道7号線→16:30胎内ロイヤルグランドホテル泊
13日(日)
ホテル5:00→奥胎内ヒュッテ5:40→タクシー→足の松尾根登山口6:40→大石山分岐12:41→13:35頼母木小屋泊
14日(月)
頼母木小屋6:00→大石山分岐6:48→鉾立峰7:41→8:20朳差岳山頂8:40→鉾立峰9:14→大石山分岐10:10→足の松尾根登山口14:11→15:00奥胎内ヒュッテ16:00→胎内→北陸道胎内IC→関越道
長岡IC→練馬IC→22:50自宅
[登山日誌]
久し振りの4泊5日の行程なので、家の2匹のネコの面倒を娘達に依頼し、9時過ぎに自宅を出発、500キロ近く走って、山形
県の朝日村にある朝日屋旅館に17時に到着した。夕食はイワナや山菜、そしてイワガキなど食べきれないほどの量だった。
翌朝5時に宿を出て泡滝登山口まで20分。登山口には10台ほど駐車していた。天候は曇り、特に山の上が霧で見えない。
大鳥川右岸に沿って登っていく。冷水沢の吊り橋、七ツ滝沢橋、九十九折り、七曲がりを経て、3時間ほどで大鳥池の畔に建
つ大鳥小屋(タキタロウ山莊)に到着。管理人に挨拶、荷物を置かせてもらって、以東岳登山に出発した。雨は落ちていない
が霧がかかり、展望はゼロ。東北特有のブナ林の深い緑の中、急な登りを一歩一歩進む。急登が終わると草原状になり、
高山植物が現れる。ヒメサユリ、ニッコウキスゲ、ミヤマリンドウ、タカネナデシコ、枚挙にいとまがない。特にこの時期目立
つのはタカネマツムシソウだ。紫の花びらを幾重にも重ね、その鮮やかさは霧の中でも存在感がある。天気は相変わらず
曇り。東北のたおやかな緑濃い山容を期待してきたが、残念。
突如、カンカンカンという金属音が聞こえてきた。キツネに化かされているのか、と思ったが、以東岳が新築中で今年は使
えない、というネットの記事を思い出した。山頂からは何も見え無いので早々に直登ルートを下って行くと、霧の中から新築
中の以東岳避難小屋の建設現場が現れた。大工さんが6人で建てていて、現場にずっと泊まり込みだそうだ。使用は来年
からとの事だった。
直登ルートは、始めは草原状であったが、その後は樹林帯をひたすら下って行く。かなり下りたところでようやく霧に覆われ
た大鳥池が顔を出す。2時間弱で池東岸に着き、池を回って、大鳥小屋に到着した。
今日は「山の日」、小屋が満員になる事も想定していたが、100人収容のところ宿泊者は8名。好きな場所を使って下さい、と
管理人の方に言われた。翌朝、久し振りに青空が顔を出し、大鳥池の上に以東岳の山頂が見え、慌てて管理人の方に、写
真を撮って頂いた。その後直ぐにまた、霧が全面を覆ってしまった。管理人の方に挨拶をし、大鳥池に別れを告げて下山に
かかる。行きと同じく約3時間で泡滝登山口に下った。
次の目的地は新潟県胎内市。飯豊連峰の前衛峰、朳差岳に登るためだ。高速道山形道庄内あさひICに戻り、鶴岡ICから国道7号で海岸線を走り、胎内市に有るロイヤル胎内グランドホテルに15時過ぎ
に着いたが、明日のため更に15キロほど走って、奥胎内ヒュッテ前の乗り合いタクシー乗り場を見に行った。グランドホテルとヒュッテは同じ系列の宿泊施設で、出来ればヒュッテに泊まりたかったが、満室
で断られ、止む得ず豪華なグランドホテルに宿泊する事になった。値段に違わず豪華なホテルで、部屋も食事も大満足であったが。
翌朝5時に宿を出たが雨が音を立てて降っている。奥胎内ヒュッテで他の2人とともにタクシーに乗り、6時前に足の松尾根登山
口に着いたが、ここで大失敗、ストックを車に置いたまま、来てしまったのだ。次に来たタクシーで引き返し、ストックを持って再
び登山口へ。7時前に登山道を歩き出す。雨脚が強まる中、松の根が縦横に走る道をスリップに気をつけて歩を進める。大石山
分岐まで標高差1100㍍だが急登の連続で、レインウエアーを着ているせいもあり汗が吹き出る。松林からブナ林のヤセ尾根を
行くと姫子の峰に到着。更に英三の峰、滝見場を過ぎ、水場でようやく1000㍍を越える。ブナ林を越えると灌木帯に入り、間もな
く大石山分岐。先に朳差岳に登ってから頼母木小屋に行く事も考えたが、急登で体力を奪われ、先に頼母木小屋へ向かう。ここ
ら辺りの高山植物は一昨日の以東岳を上回る種類の多さと美しさがある。雨の中、生き生きと花を拡げている。
分岐から1時間弱で頼母木小屋に到着。小屋は2階建てで、今夜の宿泊者は12~3名。スペースは十分確保できる。他の
登山者と山の情報を交換する。やはり話しの中心は東北の山、特に飯豊・朝日連峰で、いまいち話に乗りきれないところ
が有る。唯、皆山小屋利用のベテランのようで、身の回りの世話、他人との接触など、とても要領がよい。
翌朝、期待して外に出たが、やはり霧の中、雨の心配は無さそうだが、視界は相変わらずほぼゼロ。大石山分岐に戻り、
荷物の大半をデポし、朳差岳に向かう。多少のアップダウンは有るが、草原状で歩きやすい。鉾立峰を通り、避難小屋に
着く。中はとてもきれいで、ここに泊まっても良かったかな、と思った。ここから5分ほどで山頂。霧が晴れそうで晴れない。
20分ほど期待して待ったが、状況は変わらず、断念して下山にかかる。
帰りは気楽で、まず大石山分岐に戻り、デポ荷物を回収し、足の松登山口に向かって下りていく。雨が降っていないので木の根が乾き、下りやすいが、それでも急降下に時間がかかり、14時過ぎに登山口。
タクシーは15時過ぎと聞いていたので、奥胎内ヒュッテまで1時間弱ほど歩いた。
奥胎内ヒュッテで日帰り温泉に入り、胎内市の回転寿司屋に立ち寄って新鮮な魚を食べ、日本海北陸道、北陸道、関越道と乗り継ぎ、23時前に帰宅した。
今回の東北遠征は、天候に恵まれず、飯豊・朝日連峰の緑豊かな山容を味わえなかったのは誠に残念であったが、今を盛りとして咲く高山植物をたっぷり鑑賞できたのは、せめてもの救いであった。