二百名山達成を目指して最終年を迎えたが、5月の南アルプス、大無間山、6月の中央アルプス、安平路山、7月の南アルプス上河内岳、8月の飯豊・朝日連峰、以東岳、朳差岳に登り、いよいよ最後の山、北アル
プス、赤牛岳を残すのみとなった。天候で見れば、今年は晴れと雨が3勝3敗、願わくは最後の山行が天気に恵まれる事を祈った。
赤牛岳は、北アルプス最奥の黒部川と東沢に挟まれた稜線上に有り、その名の由来は、花崗岩の赤茶けたザレに覆われていて、牛が寝そべっている姿に見えるからだそうだ。
[行程]
2017年8月25日(金)
自宅9:15→中央高速国立・府中IC→安曇野IC→15:03信濃大町 葛温泉「かじか」泊
26日(土)
「かじか」6:00→6:20七倉温泉駐車場7:20→高瀬ダム7:30→ブナ立尾根登山口7:50→12:15烏帽子小屋12:45→16:00野口五郎小屋泊
27日(日)
野口五郎小屋6:00→9:15水晶小屋9:40→水晶岳10:15→温泉沢の頭11:20→13:15赤牛岳13:45→温泉沢の頭15:50→水晶岳17:30→17:50水晶小屋泊
28日(月)
水晶小屋6:20→東沢乗越7:15→野口五郎小屋10:00→12:32烏帽子小屋13:15→ブナ立尾根登山口16:40→高瀬ダム17:00→17:30七倉温泉駐車場18:15→中央高速安曇野IC→国立・府中IC→23:00自宅
[登山日誌]
天気予報では、初日は雨だが、その後は回復するとの事。期待して9時過ぎに我が家を出発、中央高速はずっと雨、葛温泉も雨、由緒ある温泉
に入り、天候の回復を願った。
翌朝、5時に出発予定であったが、雨がひどく降っておりしばし待機、6時過ぎに宿を出て、七倉温泉駐車場に向かった。駐車場にはかなりの台数
が駐まっており、回復待ちの人も多数いる。7時近くになって急速に天候が回復、慌てて登山届を出し、タクシーで高瀬ダムへ向かった。更に天候
は良くなり、青空が拡がって、太陽も顔を出している。高瀬ダム堰堤を歩き、長いトンネルを抜けて高瀬川の河原に出る。
高瀬川にかかる橋が傾き、橋に渡された板がめくれていたが、慎重に越えてブナ立尾根登山口に至る。ここから急登が始まるが、先日経験した
朳差岳の足の松尾根登山道に比べたら、はるかに整備されていて、至る所にハシゴや階段があり、本当に歩きやすい。12番から1番まで番号が
打ってあり、あとどれくらいか分かるので、とても親切だ。1区間15分くらいのペースで登り、岩屋の権太落とし、三角点、タヌキ岩、大岳樺と過ぎ、
稜線に立つと、烏帽子小屋が見えてくる。烏帽子小屋で大休止。「かじか」で用意してもらった朝食を食べた。天気はほぼ快晴。眼前には、東沢
を挟んで、目指す赤牛岳、水晶岳、鷲羽岳などが勢揃い、空気が澄んでいるせいか直ぐそばに見える。
本日の宿、野口五郎小屋に向けて出発。気持ちの良い稜線漫歩の幕開けである。高瀬ダムを挟んで餓鬼岳や唐沢岳、表銀座の燕岳、大天井岳
槍ヶ岳なども見える。大天井岳の横には富士山も顔を出す。
三ツ岳の北峰、西峰を通り、野口五郎小屋には16時に到着。土曜日で混み具合が心配であったが、一人布団一枚は確保でき、ほっと一息。
夕方、日没の風景が美しかった。
翌朝6時出発、野口五郎岳に登り、真砂岳分岐に向かう。天気は快晴、槍ヶ岳や穂高が黒々と聳えている。水晶小屋へは思ったより時間がか
かり、9時過ぎに到着。小屋に荷物の大半を預けたが、早く出発しないと赤牛岳ピストンは難しい、と小屋の人から言われ、慌てて水晶岳へ向
かう。水晶岳へは30分ほどで着いたが、この後が長かった。次から次へと現れる小ピーク。直ぐそばに赤牛岳は見えているのに中々近づけない。
おまけにすれ違う人からは、今からではピストンはきついですよ、と忠告される。薬師岳が巨大な山塊を見せ、高天原の赤い屋根が緑の森のな
かに点のように見える。
やっと温泉沢の頭。ここから2時間、急登を喘いで登り、岩を跳びながら懸命に進む。出発から4時間弱でようやく赤牛
岳山頂に到着。用意しておいた「日本二百名山完登」と書かれた紙を持って、記念写真をセルフタイマーで撮った。そ
の後ソロの若者がやって来たので、カメラとスマートフォンで記念写真を撮ってもらった。助かった。
山頂では30分ほどの滞在で直ぐに下山開始、水晶小屋に向かう。登り終えたあとなので気持ちは楽だが、道は帰りも
厳しい。小屋には何とか5時前に着きたい、と考えたが、朝からの長時間の歩行で疲労困憊、気力で足を踏み出す。
幾つもの峰を越え、水晶岳に着いたのが17時半、ここで先に小屋へ行って受付を済ませようと思い、妻を待たずに小
屋へ先行。何とか18時前に着いたが、小屋の方から開口一番「遅い!」の一言、やむを得ない。何とか夕飯を用意し
てもらい、布団も一人一枚確保できてほっと一息。ところが、妻が来ない。20分待っても着かないので、靴をはき直し
て迎えに行こうとしたところようやく妻が着いた。ギリギリのところだ。何とか用意してもらったカレーライスを食べた。
ところで、水晶小屋は生まれ変わっていた。狭い、汚いなど悪評の多かった小屋だが、今年の7月に新棟が完成、食
事棟と居住棟が分かれ、トイレはバイオで全く悪臭は無し。収容人数も詳しくは分からないが2倍にはなっていると思われる。是非お薦めだ。
翌朝は6時過ぎに出発。目的を達しているので身も心も軽い。当初の予定では今日は烏帽子小屋泊まりであったが、何とか下りれそうなので、
烏帽子小屋にキャンセルの電話を入れ、まずは野口五郎小屋を目指す。すれ違う人はかなりいて、お互いの行程を話し合う。何故赤牛岳を、
と尋ねる人もいて、二百名山完登の話しをすると、一様に「おめでとうございます」の声を掛けてくれる。この夏、一番の天候に恵まれ、皆表情
は明るい。東沢乗越、真砂岳分岐を過ぎ、野口五郎小屋に到着。相変わらず、槍、穂高、立山、剣など日本を代表する山々が視界に入ってくる。
赤牛岳も赤茶色のたおやかな山容を披露している。三ツ岳北峰を下りたところでライチョウの親子連れに出会う。ハイマツの中を入ったり出たり、
母親と4羽の子どもがせわしなく動き回っている。北アルプスに来ると必ず雷鳥に会う、という我々のジンクスは今回も守られた。
烏帽子小屋に昼過ぎに到着、カップラーメンの昼食を食べ、3日間眺めてきた稜線の景色にお別れをし、ブナ立尾根を下って行く。下りは約
1区間8分のスピードである。3時間ほどで登山口に到着、多少修理された高瀬川の橋を慎重に渡って、17時高瀬ダム堰堤に着いた。ちょ
うど、タクシーが客待ちをしており、あっという間に七倉温泉駐車場。七倉温泉の日帰り温泉に浸かって疲れを癒し、18時過ぎに自宅に向け
て出発。23時前に自宅に到着した。
二百名山最後の赤牛岳登山は、天候に恵まれ、フィナーレを飾るにふさわしいものとなった。稜線のくっきりとした景色、お花畑、赤牛岳へ
の長く厳しい登山道、そして行き交った人々との会話、いずれも今後の登山人生に深く刻まれるものとなるだろう。