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野路菊だより 第36号 平成12年9月1日(金)
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長い夏休みが終わり,2学期が始まりました。皆様お元気でしょうか。
2学期も懲りずに,「野路菊だより」を配信していきます。合宿や学会発表などがあって毎日は無理ですが,週に3回を目安に出していきたいと思います。
今回は,「ミレニアム・プロジェクト『教育の情報化』」の解説からです。
○「解説」作成の目的
平成12年7月に文部省学習情報課より,「ミレニアム・プロジェクト『教育の情報化』」の解説が出ました。これはすべての教員に関係することであり,教育委員会や各学校に正しい理解を持ってもらうことを目的として作成されました。
○日本の特異な現状
この中で,日本でのコンピュータやインターネット活用が,諸外国には見られない
特異な傾向を示していることが言われています。その背景として以下のようなことが言われています。
・コンピュータ整備が「コンピュータ教室」に限られていたこと
・「総合的な学習の時間」に対する過度の期待感
・いわゆる「知識偏重」への反省の反動としての「知識を過度に軽視する傾向」
○「ミレニアム・プロジェクト『教育の情報化』」の目指すところ
簡単に言ってしまえば,授業を今までよりも分かりやすくするためにコンピュータ
やインターネットを活用しようと言うことです。この中には,教師も教材づくりを今
までよりも「楽」に「効率的」にそしてより「分かりやすい」ものを作るためにどんどん使っていこうということも含まれます。
しなければならない仕事が「楽に」できるようになったり,「より分かりやすい授業をする」目的が,より「効率的」に達成できるようにすることが目的です。
○教師の意識改革は不要
この解説のいいところは,現場の状況がよく分かっている書き方をしているところです。文部省から出ている文書は,お役人的だったり,研究者や専門家サイドの意見ばかりで,現場を無視したようなものが多く,それが分からない者は,意識が低いとか,勉強不足とかで片づけてしまいがちだったのが,この「解説」はちょっと違います。教師の意識改革は不要といっているのです。
どういうことかというと,コンピュータを使いたくなるようなソフト・コンテンツがあれば,「意識改革」なんかしなくても,使うようになるということを言っています。英語の授業で,カセット・テープやCDを使うことが多いですが,これは,カ
セットを使うために「意識改革」したのではなく,「より良い授業」「分かる授業」
を行うための「道具」として「便利」であるから使っているのだ,というたとえをしています。
○授業で使える教科書に沿った「ディスプレイ用」コンテンツ
各教科の授業を「より分かりやすい」ものにするために,教科書に準拠する形で,各教科ごとに,15〜30秒程度の「ディスプレイ用」コンテンツを豊富に用意しよ
うと言っています。
これは,現場でも十分できることです。今まで自分がやっていた授業の中で黒板で説明するよりも効果がありそうなものを,15〜30秒程度の動画にしていくのです。動画の録画ができるデジカメやデジタル・ビデオカメラを使ってもいいけど,PowarPointなどのプレゼン用ソフトを使って,電子紙芝居のようにすることもできます。
もちろん黒板でやった方が有効なものは,黒板でやるべきです。プリントの方がいいものはプリントにすればいいのです。パソコンは,魔法の箱ではなく,単なる道具ですので,ラジカセを使うのと同じ感覚で使っていくことが大切だと思います。「コンピュータはこう使うべきだ」なんて構える必要はありません。要は,いかに授業を
分かりやすくするかと言うことです。
参考: http://www.manabinet.gr.jp/it_ed.html より
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野路菊だより 第37号 平成12年9月7日(木)
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今回は,ThinkQuestというWebページコンテストの紹介です。
○ThinkQuestとは
中学生・高校生を対象に,教材のWebページをつくって,そのできばえを競うコンテストです。これには,世界各国の中高生2〜3人+コーチでチームを組み自分たちに役に立つ教材のWebページを共同で制作して,できばえを競うものです。日本では,ThinkQuest@JAPAN2000という名称で,「ThinkQuest日本プログラム推進委員会」が主催しています。ThinkQuest@JAPANは,ThinkQuestの日本語版といったところです。
Webサイト: http://www.thinkquest.gr.jp
○期間
・2000年6月10日〜2001年3月31日
・申し込み締切:2000年10月15日
・作品提出締切:2001年1月10日
つまり,10月15日までに,申し込みをすれば,作品は来年の1月10日までに出せばいいと言うことです。
○参加者(中高生の部)
・チーム構成:生徒2〜3名+コーチ1〜3名。
・生徒:中学,高校に在籍し,200年4月1日現在で12歳〜17歳の生徒。
・コーチ:先生,学校職員,生徒の保護者,保護者が指名した18歳以上の者。
○応募作品
「科学・数学」「芸術・文学」「社会科学」「スポーツ・保健」「学際(複数の学問分野にまたがるもの)」のいずれかに属するトピックに基づいて制作されたWebページで,中高生の教材となるもの。
○受賞各賞
審査の結果,5つの部門それぞれの上位3チームに,「プラチナ賞」「金賞」「銀賞」を授与。また,部門を超えて最も優れた作品に「最優秀賞」を授与。
授賞式は2001年3月に,日本で行われます。
○その他(一部,基本理念より引用)
ThinkQuestのホームページでは,ホームページ(Webページ)の作り方や過去の作品及び受賞者のインタビュー記事などが載っています。
これは,単なるコンテストの枠を超えて,新しい学習法のモデルになる可能性を持っていると思います。生徒達が教室で学んだことを生き生きとしたものに変えていきます。そしてこれはWebページを作った生徒達のみならず,世界中の他の生徒にも影響を与えます。
○表現力を高めるいいチャンス
私は,このようなコンテストに参加することは,教室では行われていない外に向けて情報を発信するという体験によって,分かりやすく表現することを知ったり,何をどのように伝えたらいいのかを考えたりするので,生徒の表現力を高めたり,ある教材を深く学習するいい機会になると思っています。挑戦してみる価値は十分にあると思います。
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野路菊だより 第38号 平成12年9月11日(月)
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情報倫理について,それをまともに扱った書物はあまりありません。最近北大路書房から『インターネットの光と影』というタイトルの情報倫理を扱った書物が出版されました。
今回は,その中から「個人情報」についてです。
○個人情報とは何か
どんな情報を「個人情報」というのでしょうか。上述した本によれば,氏名,住所,電話番号,勤務先,性別,年齢など特定の個人と結びつく情報はもちろんのこと,他の情報と組み合わせることによって特定の個人と結びつく情報も含まれるようです。
個人情報項目を分類すると以下のようになります。
【基本的事項】氏名,識別番号,性別,生年月日・年齢,住所,電話番号,国籍
【家庭生活等】親族関係,婚姻歴,家庭状況,居住状況
【社会生活等】職業・職歴,地位・役職,学業・学歴,資格,賞罰,成績・評価,趣味
【経済活動等】資産・収入・借金・預金・カード決済などの信用情報,納税額,公的扶助,取引状況
○個人情報の送出
懸賞への応募や無料メールアドレスの取得,あるいはインターネットでの買い物などの際,自分の住所や氏名を書き込みますが,これがインターネットへの自らが行っている情報の送出です。
○収集してはいけない個人情報
郵政省「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」やJIS Q15001「個人情報保護に関するコンプライアンス・プログラム」で,事業者等が収集を禁止されている個人情報には,以下のようなものがあります。
○個人情報の経済的価値
情報社会の経済活動において,私たち「消費者」の個人情報は,販売戦略のための重要な情報源になっています。つまり,個人情報には「経済的価値」があるのです。よく知られているように,卒業アルバムや社員名簿などから個人情報を集め,それをリストにして高額で取り引きされることがあります。
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野路菊だより 第39号 平成12年9月12日(火)
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今回は,情報倫理の2回目で,「個人情報の漏洩」についてです。(前回の書籍を参考)
○意識調査から
郵政省電気通信局「電気電子分野における個人情報保護法制のあり方に関する研究会」中間報告書参考資料の個人情報の漏洩に関する意識調査によると,以下のように感じていることが分かりました。
@個人情報が知らないうちに利用されていると感じたことの有無は,
「ある」・・・・・・約93%
「ない」・・・・・・約5%
「わからない」・・・約2%
A個人情報が知らないうちに利用されていると感じた場面は,(「ある」と答えた人のうち)
「ダイレクトメールを受け取ったとき」・・・・・・・・・約93%
「勧誘電話を受けたとき」・・・・・・・・・・・・・・・・・約87%
「訪問販売等を受けたとき」・・・・・・・・・・・・・・・約28%
「いたずら電話を受けたとき」・・・・・・・・・・・・・・約17%
「知らないところから電子メールを受けた時」・・約15%
○自己情報の管理
ネットワークの利用では,利用者が自ら自己防衛を意識し,自己情報の管理をしながら行うことが大切です。
「自己情報をむやみに発信しない」とは,具体的には,
・信頼のおけない会社や団体のプレゼントやアンケートに注意する。
→氏名や住所が横流しにされることがあるため。
・電子メールに,パスワードやクレジットカード番号などを書かない。
→電子メールは傍受され易いため。
○パソコンから流れ出る情報
氏名や住所は,自ら発信しなければ,情報は流れ出ませんが,インターネットをす
ると意識しなくてもパソコンが持っている情報は,ある程度流れ出てしまいます。どんな情報が出るかというと,
・IPアドレス(どこからつなげているかが分かる)
・ブラウザの種類
・OS(Windowsなのか,Macなのか)
・どのホームページから来たか。
・前回アクセスしたかどうか。(クッキー使用)
などいくつかのことが分かります。
クッキーとは,Webサイトとのやりとりで各自のパソコンに保存されるファイルのことです。たとえば,そのページのパスワードやどのページを閲覧したかなどサイト管理者が欲しい情報を埋め込むことができます。
これをうまく利用した例として,有名なAmazon.comがあります。ここで本を検索して注文すると,その検索の言葉を覚えていて,次回訪問したときに,関連した情報を画面に出してくれます。
たとえば,私がジャズピアノの本を注文すると,次回訪れたときには,「やあ,
Mr.○○。あなたは前回こんな本を注文したけど,今回関連したものでこんな商品がでてきたよ。見てみるかい?」などと,利用者の興味に沿ったメッセージが出てきます。世界1の本屋といわれているようにサービスもなかなかです。このように商売に
結びつけてクッキーが使用されたりするわけです。
クッキーファイルは,自分のパソコンに保存されているので,一度見てみるとおも しろいかも知れません。C:\WINDOWS\Cookiesなどのフォルダーに格納されています。 パソコンにユーザー名を入れてる人ならば,C:\WINDOWS\Profiles\****(ユー ザー名)\Cookiesにもあるはずです。場所が分からなければ,cookiesなどで検索してみれば,格納場所が分かります。
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野路菊だより 第40号 平成12年9月13日(水)
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今回は,「サイバースクール」についてです。(前回の書籍を参考)
○サイバースクールとは
サイバースクールはアメリカで広がっているインターネットを利用した新
しい教育形態です。世界中の生徒達を対象にインターネットを通じて総合的
な教育を行い,単位を認定します。今までの伝統的な学校教育より広く柔軟なカリキュラムを提供することを目標にしています。
○不登校生徒を支援する教育形態
日本では,公的なサイバースクールはありません。しかし,ホーム・ベースト・エデュケーション(学習者が家庭を拠点として学習する遠隔教育)を支援する教育形態として,サイバー・スクールが私的な教育機関によって行
われています。単位は認定されませんが,新しい教育形態として注目されています。
○時間と場所の制約がない
サイバースクールは,従来の学校教育をインターネット上で再現しようと
しているのではありません。学習者が自分の都合で学習時間を決め,学習場所もインターネットに接続できればどこでも構いません。時間と場所の制限がないのです。通信制高校や定時制高校の補完的な授業,国際理解教育の場,生涯学習の場として発展が期待されます。
○米国高校の卒業資格が得られるサイバー・スクール
インターネットハイスクール「風」では,米国・ミシガン州のオルタナティブ・スクール(子供中心の教育を行う学校)の一つである「クロンララ校」
のホーム・ベースト・エデュケーション・プログラム(日本人向けプログラ
ム)を利用して,米国の高校卒業資格を取得できるようにしています。
○その他の日本でのサイバー・スクール
日本では,公的な機関によるサイバー・スクールはなく,私的な教育機関
が行っています。不登校の子どもたちに対する教育実践が豊富な東京シューレでは,「サイバーシューレ」を開設しています。
○感想
サイバー・スクールをどのように捉えるかは,人様々でしょうが,教育形態の一つの可能性として評価してもいいのではないかと思っています。
高校のプログラムだけでなく,大学や大学院のプログラムも世界にはあります。また,英会話やCG,プログラミングあるいは資格関係など特技となるような専門的なものを開設しているところもあります。生涯学習の場としてはまさにぴったりなのかも知れません。
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野路菊だより 第41号 平成12年9月14日(木)
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今回は,「メディアリテラシー」についてです。(前回の書籍を参考)
○メディアリテラシーとは
メディアリテラシーという言葉の定義は,国や研究者によっても多少違っています。一般的には,メディアにアクセスし,情報を分析し,評価す
る能力として使われています。
○メディアとは
メディアリテラシー教育は,イギリスやカナダなどで20年ほど前から
始まっています。当時大きく扱われていたメディアは,テレビでした。他
には,ラジオ,映画,新聞,雑誌などです。最近では,インターネット上
のWWW,電子メール,電子掲示板,チャットなどが重要なメディアとな
ってきています。
○情報教育の中でのメディアリテラシー
インターネットを用いた情報教育の中でのメディアリテラシーを本書では,「メディアの特性を考慮して,伝達前の本当の情報内容を読み解く能
力」と捉えています。
情報をあるメディアで伝達するとき,情報はメディアに適した形式に変
形されます。そのため,情報の受信者は伝達前の情報と違った意味内容に受け取ってしまうことがあります。そのため,「メディアの特性を考慮して,伝達前の本当の情報内容を読み解く能力」が必要となり,そのための教育が必要だというわけです。
○たとえ話
本書では,このメディアリテラシーを次のようなたとえ話で説明してい
ます。ある人が丸い荷物を送るのに少し小さめの四角い箱を使ったとします。目的地に着いたとき,その荷物は変形してしまっていました。誤解し
ないためには,箱の形を考慮して,送る前の本当のにもつの形を推理する能力が必要です。この能力がメディアリテラシーだというわけです。この
ときの荷物は情報を,箱は情報メディアを,箱の形は情報メディアの特性を表しています。
※ここ4回ほど情報倫理ということで,『インターネットの光と影』という本からかなり引用してしまいました。これを読んで感じたのは,私生活 の上でもある程度は知っておかないといけないことが多く,これからの社会で生きていく小中学生などには,まず学校でその基盤を作ってやらないといけないなあということです。
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野路菊だより 第42号 平成12年9月18日(月)
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体育大会も近づき,応援や練習に忙しい毎日ではないでしょうか。
今回から私の研究に関わるところを少しずつ紹介していきます。
今回は「CSCL」についてです。
○CSCLとは
CSCLとは,「コンピュータ支援による協調学習」の英語の略です。コンピュータネットワーク上で,複数の学習者が協調して問題解決を行う過程の支援に関する研究領域です。学習達成の効率化,対象領域に関する学習者の深い理解の促進や,他者とのコミュニケーションを通じてのメタ認知能力の育成などをねらいとしています。
○コンピュータはコミュニケーションの道具
CSCLでは,コンピュータをコミュニケーションの道具として用います。学習者が調べものをするために使ったり,調べたことをデータベースとして蓄積するだけではなく,協調して問題解決をしたり,知識を作りあげていくようなことをしていこうという試みをしているのがCSCLです。
○なぜ,collaborationなのか。
CSCLの3文字目のCは,collaborative(cooperative)の略です。協調とか,共同(協同,協働)などとも言われます。なぜ,共同なのでしょうか。共同で学習することをコンピュータが支えようというわけですから,共同で学習するという意味も考えなければなりません。
○これまでの学習観(個人還元的学習観)
この答えは,CSCLを支えている学習理論にみることができます。これまでの学習理論は,学習を「個人の頭の中の記号操作」と見なし,知能は「個人の頭の中」に宿るとされてきました。この学習観のもとでは,知識をいかに効率的・効果的に個人の頭に中に伝達するかということが追究されてきました。
○学習は共同でするもの
CSCLは,これまでの学習観とは異なる考え方に基づいて成り立っています。考え方を簡単にまとめると,
ということになります。この考えを基にしてCSCLをデザインしていくのですが,そのときに,「課題の真正性(本物らしさ)」「発達の最近接領域での支援(scaffolds)」「リフレクション」を意識して学習環境を考えていくことが大切であるとされています。
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野路菊だより 第43号 平成12年9月19日(火)
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今回は「CSILE」についてです。
○代表的なCSCL研究(CSILE)
北米では先進的な研究が行われています。その一つにカナダのトロント大学が中心になって行っているCSILE(シーシルと発音)があります。
これは認知科学的な豊富な教育方法研究に裏打ちされたプロジェクトで,「自分の考えを友達に説明することで考えを深めていく」というアプローチをとっています。ソフトウェアはそのため(議論)の支援をし,「知識はみんなで作り上げていく」ものだと考えられています。
○思考の流れがビジュアルに見える
CSILEを平たい言葉で言うと,思考の流れがビジュアルに見えるネット上のデータベースです。お互いの考えや調べたことがダイアグラムのようにつながってみることができます。自分たちで調べたことを書き込むことができるだけでなく,それらを相互にリンクさせることができます。
○子どもの問いを科学の問いにする
別の言い方をすればCSILEは,子どもの問いを科学的な問いとしてまとめ上げていくインターネット上のツールとして捉えることができます。
子どもたち同士で,疑問に思うことを互いにぶつけ合い,協同的に探究しあいながら,協同の知識のデータベースを築き上げていくコミュニティづくりです。つまり,学校を教師から子どもへの「知識伝授」から子どもたち自身による「知識構築」の場にしようという試みです。
○どのように「子どもの問い」を「科学の問い」にするのか
CSILEでは,子どもが持つ自分の疑問を「科学する」ための「探究の枠組み」を次のように考えています。
○現在のCSILE
CSILEは1986年に開発されすでに14年になり,年々改良が加えられています。6歳から大学生までトロント大学を中心とした地域の研究校で日常的に使われています。遠隔地との共同学習や様々な教科でも実践されています。
現在はWeb上で使うことができる第2世代のWeb
CSILE(Knowledge Forum3.2)というソフトウェアがでています。
○日本でのプロジェクト
現在日本ではCSILE Japanというプロジェクトで,静大の大島先生たちを中心として,例えば神戸大発達科学部附属住吉小などではKnowledge
Forumを使った実践が行われています。
※CSILEのurl
http://csile.oise.utoronto.ca/
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野路菊だより 第44号 平成12年9月25日(月)
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今回は「語り」についてです。
○「振り返り(reflection)」
学習において,生徒が自分の学習過程を振り返ることの重要性が主張されています。振り返りは,再吟味とか問い直しとかリフレクションなどと言われています。
学習した結果だけでなく,学習過程が大切だと言われて久しいですが,その学習過程を生徒自身に振り返らせることは容易ではありません。
自分のやったことをただ思い出すだけではなく,自分は何が分かり,それはどのようにして分かったのか,あるいはどんなきっかけで問いを持ちどのようにしてそれを解決したのか,など自分の学習してきたことや獲得した知識・技能を意味づける作業が「振り返り」であると考えます
。
○「語り(narrative)」
語るという言葉はよく使います。ここでは,自分の学習過程の内省的認知活動ととらえます。自分の内にあることを外に向けて表現することですが,それを表現するためには,
○「語り」の効果
結果(作品)を見ながら,経験を振り返り,それを言葉で言うことを繰り返すことで,はじめは本人自身が気づいていなかったことに気づいたり,おぼろげに分かって(感じて)いたものも「語り」をしていく中で,しっかりした考えに変わっていくことが期待できます。
○授業の中に「語り」を
日常的な授業の中で,「語ら」せることで,メタ認知的に自分の学習を見つめることができ,学習そのものに対する認識を変容させる効果があるようです。自己評価として,自分の学習を見つめることはよく行われていますが,自分の作品を経験とからめて「語ら」せることで,自分が経験したことの意味が分かったり,意味づけができたりする点でより効果的であると思います。
○いつ,誰が「語ら」せるか
「語ら」せるきっかけは授業の中にあります。友人との教え合いだったり,教師の助言だったり,他の生徒同士のやりとりを聞いていることだったりと授業の中でそのきっかけとなる活動は頻繁に訪れます。
友人とのやりとりや他の生徒のやりとりを聞いてできる生徒もいます。しかし,教師は自分ではできない生徒に支援する必要があります。これは個別に声をかけその生徒に語らせるしかありません。そこに,教師の出番(必要性)があり,まさにその生徒の発達の最近接領域で支援することになります。
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野路菊だより 第45号 平成12年9月27日(水)
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今回は「科学を学ぶ」とはどういうことかについて考えます。
(シリーズ学びと文化3『科学する文化』佐伯・藤田・佐藤編(東京大学出版会)より)
○生徒の科学観(生徒は何を学んだか)
科学的な知識と科学的な方法は,科学を構成している要素です。しかし,それを教えることで生徒は科学をどのようなものとして学ぶのでしょうか。ある研究では,生徒の科学観は次の5つに分類できるとしています。
このような科学観を持っている生徒が,科学的な知識や科学的な方法を知っていたとしても,それが科学を学んだと言うことになるのだろうか,と村山功(静大助教授)は述べています。
○誤解された科学観
上記のような誤解は,たとえば「数学が生活で何の役に立つのか」という質問が出ること自体数学に対する誤解の存在を示していると言います。数学の意義は別に生活の役に立つことではないのですから。また,それに対して,例えば買い物をするときに役に立つと答えるのもおかしな話で,これでは誤解を助長するだけだとも言っています。
化学の教科書でも,上記の生徒の科学観とよく似た誤解に基づいて書かれていると言います。たとえば,教科書で取り上げられている実験が,あたかも決定実験であったかのように記載されていて,これが軽薄な実験主義の温床になっているとあります。また,一つの理論が一つの実験で単独に検証されるかのように描かれるのも誤解が生じやすいということです。
○教科書に描かれた科学者像
教科書では,科学者とその主な業績について書かれていますが,これはある科学者がその法則を発見したという一種の天才史観です。そこには,科学者と実験と法則しか出ておらず,その科学者がおかれていた思想的状況や社会的立場などにはまったく触れられていないことが問題だと指摘しています。
たとえば,コペルニクスの地動説が太陽を豊穣の源とするヘルメス主義の影響であるとか,パスツールが論敵より優位に立てた一因は自然発生説が唯物論や共和主義といった当時の危険思想と結びつけられていたことにある,といったことが何も書かれていないということです。これがやみくもな理想主義やおめでたい経験主義を育てているということです。
○では「科学を学ぶ」ことの意味は何か
知識やスキルの獲得が無意味とか不要と言うことではなく,どういう文脈の中でそういうことをしているのかということが大切です。教科書の科学と研究を通して知っている科学との差こそが,知識やスキルの獲得を超えて科学を学ぶことの意味であると,村山氏は述べています。
○教室を「科学する場」に
生徒を科学している場,状況に引き込んで授業をすればよい,つまり教室を科学する場にすればよいということです。生徒の探究活動や科学的なやり方,価値のおき方が保証され,科学を自分のものにできるようにしていくことが,科学を学ぶことになっていくのではないかと書かれています。
※本に書かれていることを十分に伝えることはできませんでしたが,私も「科学を学ぶ」とは何かを考え,授業を「科学する場」にしたいと思っています。
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野路菊だより 第46号 平成12年10月6日(金)
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今回は近況です。
○何とか切り抜けた中間発表
10月4日の日に修論の中間発表がありました。自分はこんな問題意識を持ってこんなことを研究していて,現在このくらいまで進んでいますという途中経過の報告会のようなものです。
その資料づくりに前日までいや何人かは当日の朝まで連日徹夜で頑張っている人もいました。「徹夜にならないように前もってやればいいのに」と昨年は思ってましたが,そんな甘いものじゃありませんでした。
資料を作るだけではなく,発表用のプレゼンもつくってゼミの先生を含めてゼミで練習をし,コメントをもらって手直しをします。直したプレゼンを再び先生に見てもらい,そこでまた指導をいただきます。資料づくりでさんざん自分の見方の甘さや理解の浅さに惨めな気持ちになってやっと立ち直ってプレゼンを用意したのに,またそこですべてを打ち砕かれるような助言をされます。何回も資料もプレゼンも書き直
し,前日やっと完成です。先生も連日徹夜でさすがにばてています。「研究は頭じゃない,体力だ」と言ってますが,まさに体力の限界までやってるという感じです。そういえば,前回の学会原稿の時もドクターの人は,48時間連続で起きて原稿書いていたことを思い出します。さすがに30時間を超えたくらいから青白い顔になって表情もなくっていましたが。
中間発表会は,平穏無事に過ぎたという感じです。質問等はさすがに鋭かったですが,これからそれも意識してやっていけばいいので,まさに指導的な質問という感じでした。
○明日から学会
明日から徳島県の鳴門教育大学を会場にして教育工学関連学会の合同の学会発表があります。何年かに一度の合同の学会なので,参加人数が多く大変規模の大きな学会
発表になります。そのためか先生も気合いが入っていて,早速昨日はそのためのプレゼンのチェックがありました。一人1時間以上かけて,じっくりと発表の柱から細かいところまで吟味してくれました。問答式で行うので,答え方が甘かったり間違っているところは容赦なく突っ込んできます。「学会はバトルや」と脅かされてます。私の発表は8日なので,「まだ時間があるからこれとこれを考えてこい」といわれ,現在途方に暮れているところです。明日はきっと徹夜だなあと思い,プリンターも持っていくことにし,ぎりぎりまで発表の内容について議論しても大丈夫なように準備を
しています。
○作り直し
8月のお盆返上で学会原稿を書いていたときは,かなり激しいことを言われ,沈んだりしてましたが,もうそんなこと慣れっこになってきました。プライドも人格もうぬぼれも自信もありません。学問の世界は厳しいなあとつくづく感じています。今まで築き上げてきたものをいったんすべて打ち壊し,新たに作り直しているといった感
じです。こういったことを通して目が開き,何かつかんでいけるのかも知れません。
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野路菊だより 第47号 平成12年10月12日(木)
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今回は学会参加報告です。
○教育工学関連学協会連合の全国大会
今年の教育工学の全国大会は,徳島県の鳴門教育大学を会場にして,教育工学の関連学協会が連合して行われました。そのためか参加者は,1000名に達し,特別記念講演,2つのシンポジウム,3つのスペシャル・セッション,一般研究・課題研究,合わせて600件の発表がありました。
○人気,不人気がはっきりしている
会場は,テーマごとに分かれており,そのテーマに関係する研究の発表が行われています。それを聞きに来る人はもちろんそのテーマに関心を持つ人たちですが,発表者の知名度や内容によって会場の人数が大きく違ってきます。聞きたいものだけをしっかり選んで聞いているようです。そのため,発表によって会場があふれんばかりの人数になっているところもあれば,閑古鳥が鳴いているところもあります。多くの人が関心を寄せる研究と見向きも
されない研究があるということです。
○シンポジウム
「世界の教育課程と情報教育」では,水越先生,大岩先生,岡本先生,西之園先生をパネリストに迎え,テーマに関する発表と討議が行われました。
教育工学を引っ張っている先生方のお話は示唆に富んだものでした。
もう一つの「ミレニアム初頭の教育改革を支えるICT」では,清水先生,苗村先生,文部省の岡本氏,NHKの吉田氏による発表と討議でした。なかなか緊迫感のある討議で面白いものでした。文部省の岡本氏のトークは,歯切れがよく,論の展開もスムーズで頭の良さを感じさせました。会場からのお偉いさんを中心にした質問では「けしからん」発言も出たりして,なかなか盛り上がりました。
○私の発表
私は,一般研究の「協調学習・協同学習」で発表をしました。申込件数が多かったらしく,システム開発と学校教育実践の2つに分けられ,私は後者の方になりました。教育工学の重鎮,西之園先生が聞きに来られていたので
緊張しましたが,質疑応答では先生から直接有益なアドバイスをもらえました。なのでそれだけで大満足しましたが,そのアドバイスに沿って修士論文をまとめていこうかと思いました。これからさらにデータを集めようかと考
えています。
○最後に
発表の前日は,プレゼンの最終チェックをホテルの部屋で行いました。先生には夜中の1時半まで指導していただき,それから自分で3時頃までもう一度考えてからその日は寝ました。8時の朝食の時にはすっかり目が覚め眠気は何もありませんでした。きっと緊張していたんだと思います。最後の最後まで面倒見ていただいた先生のおかげでここまでこれたんだなと改めて感謝している次第です。
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野路菊だより 第48号 平成12年10月13日(金)
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今回は「現代の科学観」についてです。
○「現代の科学観」とは
「現代の科学観」とは,科学史や科学哲学,科学社会学などの研究領域の成果によって描かれるようになった科学の姿です。理科教育で「現代の科学観」ということが強調されるのは,そこに描かれる科学像がこれまで暗黙のうちに前提としてきた科学像とは根本的に異なっており,理科という今日における「科学」の取り扱い方に重大な変更が求められる可能性があるからです。
○「現代の科学観」の特徴
最大の特徴は,いわゆる科学が「客観的で真正な自然世界像」を提示するとは考えない点にあります。旧来の科学が,「唯一無二の客観的で真正な自然世界像」が存在するということが前提とされていたことと大きく異なります。
第二の特徴は,いわゆる「科学の方法」と呼ばれるものに関する見方で,極論すれば,科学に固有の方法は無いという立場をとることです。
第三の特徴は,科学を理論体系としてとらえるだけでなく「社会的営為」としてとらえる点です。
第四に,新しい動向として,科学を文化として規定する立場が出てきていることです。
○理科教育における「現代の科学観」への疑問
戦後日本の理科では,一貫して,科学的自然観を生徒に身につけさせることが究極の目標でした。これは,客観的な真理が存在するという前提があったからこそできたものです。しかし「現代の科学観」では,その前提を否定しているので,理科の教科目標の中の「科学的自然観の育成」を掲げるとすれば,新しい理由付けが必要になります。客観的な真理がないとする科学観に基づく「科学的自然観」にどのような教育的価値があるのかということです。
次に,科学に固有の方法が無いという立場をとった場合,従来の科学の方法は,科学に限らず知的活動一般において利用される知的スキルであるという点を踏まえると,「科学の方法」を理科で取り上げるその根拠を明確化する必要
がでてきます。
○理科学習でどうするか
子どもたちに「科学的自然観」を身につけさせるためには,具体的事象や実験・観察から出発して,経験的に「科学的自然観」に到達させるというやり方ではなくて,まず最初に,科学的に世界を眺めるための枠組みを与えるということになります。何だかへんな感じですが,こういうことになります。
○感想
私自身「現代の科学観」を受け入れることはできますが,実際に理科の授業に適用しようとすると分からないことがたくさん出てきます。科学の見方という問題は,理科において,根本的な問題のような気がします。
※参考文献
現代の科学観,小川正賢,『これからの理科教育』,東洋館出版社,1998
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野路菊だより 第49号 平成12年10月16日(月)
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今回は「ポートフォリオ」についてです。
○新指導要録の内容
先週新指導要録の内容が公表されました。大きく変わったことは,所見欄が一つにまとまったことと総合的学習の時間の記録の欄が新たに設けられたことでしょうか。
総合的学習の記録は,「内容」と「観点」と「評価」という3つのことを記録するようになっています。そこに記載する内容は,各生徒によって変わってくると思いますが,その元となる資料が必要になってきます。
○ポートフォリオとは何か
総合的学習の評価の一つとしてポートフォリオが注目を浴びています。ポートフォリオとは,「紙ばさみ」の意味ですが,学習プロセスで生じた学習ファイルをある目的にそってまとめたものです。
これを用いることで,学習全体を俯瞰し学習の次の展開を確認しながら計画を立てたり,自分の学習を振り返ることで,自分の個性や特徴,興味・関心などを浮かび上がらせることができます。
○学習履歴ファイル(元ポートフォリオ)
学習ファイルを集めただけのものは,学習履歴ファイルとか元ポートフォリオといわれ,ポートフォリオとは区別しており,これがポートフォリオのもとになります。つまり何も加工していないものが学習履歴ファイル(元ポートフォリオ)ということになります。学習ファイルとは,「テーマとその理由」「計画表」「調べたこと(メモ)」「調べ学習の産物」「感想や自己評価」「作品」などのことです。
○ポートフォリオを作る
どのように作ればいいのかは,様々な実践や研究があります。しかし大まかな流れはほぼ共通しています。
・ポートフォリオを作る意義を生徒に説明する
・テーマと成果(目標)を決める
・成果をかなえるために計画立案する
・その過程で情報収集
・成果を表現(プレゼンテーション)
このような流れで書いたものや作った物集めたものなどを「学習ファイル」としてどんどん蓄積していきます。そして出来たものを振り返ってみることで,自分のやってきたことや自分の個性や特徴,興味・関心などが浮かび上がってきます。
○誰の研究や実践を見ればいいか
ポートフォリオ研究でまず名前が挙がるのは,愛知教育大学の寺西和子先生です。教育雑誌などにも投稿されているので,参考になります。また,鈴木敏恵という建築出身の人も未来教育デザイナーという肩書きで活躍しています。彼女は,ホームページでポートフォリオの情報を分かりやすく発信しています。 http://www02.so-net.ne.jp/~s-toshie/
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野路菊だより 第50号 平成12年10月19日(木)
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今までの「野路菊だより」を読み返してみると,「用語」の説明のようになっていたことを反省し,もっと自分の考えを入れていこうと思いました。ということで,今回は現場と大学との間で感じたことを書きます。
○現職院生の立場
現職で派遣されている院生の研究テーマの多くは,いわゆる実践研究が多いです。ある理論(考え)を実践できるように練り直し,実際に授業をしてどうであったかを見ていくものです。
研究テーマも現場にかなり直結したものから役に立つのかなあと思わせるものまでいろいろです。ただ直接役に立つようなテーマは,研究としては成り立たないことが多いだけでなく,わざわざ大学院に来なくても現場で実践すればいいじゃないかと言われてしまいます。
しかし,研究らしい研究になってくると今度は逆に,そんなことやって現場で何の役に立つのだと言われてしまいます。特に現職で研修という名目で行っているのに現場ですぐに役立たないことをやるんだったら,わざわざ県にお金出させないで,自分で行けばいいだろうということになってしまいます。
でも,役に立つ立たないではなく,その個人の力量を上げることが教育界全体に貢献するんだと思えば,何をやっても良さそうです。しかし派遣されていることを考えると,何らかの形でそれに報いたいとも思うものです。そのため新しく仕入れた知識を知らせてみようと思ったりもしますが,多くはそんなこと知りたいとも思っていません。なにやら難しいこと言ってるなで終わってしまいます。特に,生徒指導で忙しい毎日を過ごしていると,新しい考えも知りたいけど,まず目の前の生徒をどうするかが優先的に処理することになるので,「余分」なことまでやっている余裕はなくなります。
○いい先生って本当にいいの?
同じ立場の人が集まると悩みも共通することがあり,そこでいろいろ話をすることがまた大変役に立ちます。M1の頃はよく時間を気にせず,とことん話をしたものです。でも同じ学校現場から来たと言っても,考え方はまさに千差万別で,それなりの苦労をしている教師ばかりではなく,非常識で世間を知らない教師もいたり,ふざけたやつもいます。こんな教師がいるから最近の先生はダメだと言われるんだと思ったりもします。でも,教師の中の教師というか教師教師している人も鼻持ちならないですね。そんな人はちゃんと実践もしていて実績もあるからなおさら困ります。第三者的に自分を見ることができないと言うか,学校の中にどっぷりとつかっているから,良いも悪いも判断できない。考え方が優等生的で「正しく」て真面目なんです。しかしどこかおかしいんですね。でも実績もあるし,「正しい」ことをしているから意見を言われにくい。こういった人達はけっこういます。自分が生徒だったら,そんな人間じゃないような「いい」先生には担任されたくない。きっと子どもたちも同じ様なことを感じているんじゃないかなあ,現場でよくそう思ってましたし,今でもそう思います。
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