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5月6日(火)
2008/05/06
島田市大代の山あいに、
歴史的な価値があるとして1987年(昭和62年)に
旧金谷町から町指定文化財に指定された旧家がある。
代々名主として幕府直轄の山林を
管理した御林守の役職にあった「河村家住宅」で、現在市指定文化財である
▼現当主の河村隆夫さん(57)は幼いころ、
親から奥座敷に入ってはいけないと厳しくしつけられた。
奥座敷は江戸から薪炭の検査などに訪れた
位の高い武士のために用意された部屋だったといい、
その伝統は時代を経ても守られてきた。
かやぶきの寄棟づくりで、1793年(寛政5年)に建てられた
▼文化財に指定されたことで、その後の河村さんの人生は大きく変わる。
物理学が好きで北海道大卒後、
東京で就職したが、結局、家を守るために帰郷した。
若いうちに両親を亡くし、
旧家は河村さんが学習塾を経営しながら維持していくことになった
▼今は隣に居を構えて無人の旧家を守る。
先ごろ、その旧家を見学させていただいた。
どの部屋もきれいに清掃されていた。
「正直言えば家を無理して残すことがよかったのかどうか」。
河村さんはポツリと言った
▼年3、4回は人手をかけて庭の草取りなどを行い、
周囲の里山も手を入れる必要がある。
市の補助は年4万円。
労力や費用を考えれば、将来子どもに重荷を背負わせる
▼自ら育てた約100本の梅の木のオーナーを募集したのも、
維持費を捻出して家を守りたいとの思いからだ。
幸い募集分はすべて決まり、来年分も募集している。
「家を守るための人生でした」。
やや自ちょう気味に話す河村さんだが、
「ここから見る月はまさに青い月。素晴らしいですよ」とも。
伝統を守る気概がじわり伝わってきた。