平ケ岳(単独行)

実施日:2009年6月26日(木) 快晴
コースタイム
登山口(3:50)〜下台倉山(5:20)〜台倉山(6:05)〜台倉清水(6:15)〜池ノ岳(姫池)(7:50)〜平ケ岳(8:20)〜池ノ岳(姫池(8:45)〜台倉清水(9:55)〜台倉山(10:10)〜下台倉山(10:55)〜登山口(12:10)

山行後記
山頂までのアプローチが非常に長いタフな山である。途中には山小屋もなく標準時間では往復約9時間30分を要する。前泊した登山口駐車場で下山する人たちを見ていると5時頃出発して16時〜19時頃までに到着している。11時間から14時間も歩き続けている計算になる。林道が整備されて海抜の高い所まで車が入れる山ばかりになった現在では貴重な存在で私には嬉しい山である。

貧乏人の私はいつものように登山口の車の中で仮眠する。長野市から来たという先着の単独行者がいたので寝るまで会話をしながら時間をつぶす。3時20分に起床。パンとバナナ、オレンジなどを飲み込む。夕食は時間があるので私には比較的贅沢(?)にレトルトのカレーライスなどを食べるが朝食は時間が勿体ないのでいつも簡単に済ましてしまう。昼食は決まった時間には食べないで腹が空いたと思った時にこま目にアンパンやまんじゅう、オレンジ、きゅうり、水羊羹などを腹に流し込む。

森の中の林道を抜けると登山道に入り砂や岩のやせた尾根筋の急坂を登る。朝日が差し込む前に登らないと遮る樹木が少ないので急いで下台倉山まで一気に登り一息着く。快晴になった日の出の直後の柔らかな日差しを受け誰もいない山を歩くと何故か心がウキウキとなる。
下台倉山から台倉山〜池ノ岳の森林限界線付近までは高度差も余りなく鼻歌交じりで通過するがこんなアルバイト(?)がこの山を難しくしているのかもしれない。復路はこの長さが気になるに違いない。

台倉山を下ると岳樺や五葉松、オオシラビソなどの大木が茂る中の木道をコトコトと鳴らして進む。平ケ岳の山容は森が深く時おり望める程度で「まだなのか」と心で嘆く。森林限界線を越えたあたりで木道に腰を降ろしてまんじゅうや水羊羹、マンゴウゼリーなどを腹に押し込み休憩。池ノ岳の登りを一気に詰めると姫池の池塘群が広がり見事な美しさが迎えてくれる。これだから山登りが止められないのだ。チングルマ、ハクサンコザクラ、コイワカガミ、タテヤマリンドウ、イワイチョウなどが咲き辺りの山肌には雪渓が残るこの時期しか拝めない見事な光景である。全山私の貸し切りなのである。(他の単独行者は私に後れを取っている)極楽 極楽。

「たまご岩」の分岐点まで少し下る。つまらない山まで百名山にしてしまった深田久弥だがこの山を指定したことは評価出来るなどと呟きながら木道を平ケ岳まで登るとここも池塘群が広がり広々とした名前の如くの平らな山頂に到着。
正面に燧ガ岳、右に至仏、景鶴山の尾瀬。左は昨日に仲間たちと登った会津駒ケ岳、後ろは巻機山、中ノ岳、越後駒ケ岳、遠くは谷川岳や武尊山。快晴の山の中でただ一人こんな景色を独占できる幸せを噛みしめる。至福の時である。

「たまご岩」分岐点の近くで昨夜一緒だった人ではない40歳代半ばの単独行者に「おはようございます」と挨拶する。「5時に出発して車が2台駐車場にあったので一人は難なく抜けましたがもう一人は何処に行ったのか?と思いました」「早いですね」「私は65歳になりました。もう若くはないのでのんびり登っています」と私。この人には下山口まで抜かれることは無かった。昨夜の人には森林限界線を過ぎたところで「おはようございます」と言葉を交わし互いの無事を祈って別れた。

深い森の中の木道の切れ目の泥の中に新しいはっきりとした子熊の足跡を発見してしまった。往路では気が付かなかったか私が通過した後に子熊が通過した様だ。一瞬辺りをきょろきょろと見渡したが深い森の中で無論のこと姿や鳴き声は確認できない。おじさんは君たちと「鬼ごっこ」をするつもりはないので「遊ぼう!」などと目の前に現れないでくれよな。お母さん熊が心配して「あのおじさんは駆けっこが速そうだから鬼ごっこは勝てそうもないから止めなさい」と囁く声がしたので安心した?。

この現場から30分と1時間ほど下った所で単独行者2名に会ったので「脅かすつもりはありませんが注意してください」「木道を少し強めに靴で叩いて歩いて熊にこちらの存在を知らせてください」と声をかけた。それにしてもこの時間にこんな所をうろうろと平ケ岳に向かうとは下山時間には日暮れて暗くなってしまいそうで少し無謀だと思った。登山口の近くの沢水で顔と体を洗ってさっぱりとして無事に12時10分に駐車場に到着。久しぶりに確かな手ごたえを感じることができる登山が出来たことを満足に思った。平ケ岳に感謝。

平ケ岳登山の注意点を私なりに記したので参考にしてください。
・標準時間は往路と復路にかなり差を付けてあります。アップダウンの少ないアプローチが比較的多くそれほど往復の時間差はないと思います。復路が思うような時間で降りられない危険があります。
・アプローチが長く長時間の歩行を強いられるため登山者が最初から意気込んで歩くためどうしても往路で体力を使い果たし下台倉山からの下りで難儀することになり易い。
・私の記録はかなり早いので参考にする場合は他の記録もご検討してください。

平ケ岳HPリンクhttp://www.convention.co.jp/ip/hira/hiragatake.html

写真は上左から平ケ岳と池ノ岳遠望、姫池から平ケ岳、チングルマ、下左からハクサンコザクラ、平ケ岳山頂付近、イワイチョウ