針ノ木岳の大雪渓を登る


日程:2011年7月4日(月)〜5日(火) 扇沢駐車場前泊 日帰り
コースタイム:清里(15:00)〜扇沢駐車場(17:30)
         扇沢駐車場(4:30)〜大沢小屋(5:40)〜針ノ木小屋(8:00)〜針ノ木岳(9:00 9:20)〜針ノ木小屋(9:50 10:10)         〜扇沢駐車 場(12:30)

山行後記:
針ノ木の大雪渓だけはぜひとも登りたい思いが以前からあった。加齢からくる体力や筋肉の衰えを実感する年齢になったので、思い切り梅雨の晴れ間を狙って実行した。
扇沢駐車場は前線の影響でかなりの雨が落ちていた。明日は晴れるとの予報を信じて車の中で夕飯を食べ19時30分には寝る。車の屋根を雨が激しく叩く音がする。3時に起き出すが雨は穏やかになったが少し降っている。4時に朝飯を作り胃の中に流し込む。
隣の車では若い男性登山者も「上がりますかね?」「歩いているうちに止むでしょう?」と私。

4時30分の出発時には霧雨状に変化した。スパッツだけを付けて登山道に向かう。昨夜からの雨で草木の葉が濡れていてストックで露払いをしながら進むが、体も濡れてしまうので雨具を付ける。夏の雨具は外からは防げるが内部から汗が吹き出すので厄介である。
30分も過ぎないころから再び雨が降り出す。「稜線に着く頃は晴れるだろう」などと勝手に思いながら歩く。何本かの沢が増水で渡る際に石ころの上を飛び跳ねながら進む。

雪渓の手前でシラネアオイが沢山咲いていた。美しい花である。キヌガサソウ、エンレイソウ、タニウツギ、カラマツソウ、マイヅルソウなども心を和ましてくれる。コルリ、メボソムシクイ、アカハラ、ルリビタキ、コマドリ、ミソサザイなども恋歌を聞かせてくれる。

雪渓に降りる。アイゼンを付けて準備完了。雨は降ったりやんだりである。雪渓の有難さは真直ぐに登れることである。ジグザクとした夏道よりは一直線に登れるのである程度の体力があるものには有難い。思ったより雪渓は締まっていて歩きやすい。雨具の下に半袖のTシャツを来て登ったが汗はかかないので、かなり気温は低いのだろう。落石や土砂崩れの危険性が無いかをキョロキョロしながら高度を稼ぐ。この雪渓は旗竿や岩にマーキングが無い。百名山ではない山の宿命なのだろうか?扇沢駐車場にいた登山者は赤沢に迷い込んでしまったと私が下山中に語っていた。

雪渓のかなり上部で漸くマーキングの赤色塗料がまかれていた。初夏の雪渓には踏み跡が無いのでマーキングが無いと、ガスがかかっている時には沢を間違える危険性は否定できない。今回会った登山者は単独行者が2名。もう一人も林道が交差している入り口で迷いかなり時間のロスをしたと言っていた。この方は「登山道」の背丈が低い標識が草丈に覆われて見えなかったようだ。

雪渓の半分程で雨はやんで時折、太陽が顔をのぞかせた。順調なピッチで登る。長く急峻な雪渓には私一人が蟻の如く動いている。稜線のコルらしい所が頭の上に見える。多分あの大きな雪渓の頭を越えれば小屋だろう?ヨッコラショと最後の登りを超えると針ノ木小屋。腹に食料の水ようかんやクリームパン、オレンジなどを流し込む。信州大の卒論にコマクサの研究をしていると言う女学生と教官らしき2人と暫し語らう。

アイゼンを外して山頂に向かう。時々、ガスが風に飛ばされ雪を抱いた沢と新緑(?)の稜線が美しい景色を見せてくれた。東側の稜線には大きな雪渓が残りアイゼンを外したので足元に気を使いながら山頂に立つ。誰もいない山頂を満喫する。展望は望め無いので暫し休憩後小屋に戻る。左足の外側に少し痛みを覚える。急斜面の雪渓を下る時に抑えが利かないと危険なので、蓮華岳は諦めアイゼンを付ける。ストックを長めにし、踵から踏ん張る様にして慎重に下る。20〜30歩も歩くと、雪の塊がアイゼンについて制動が悪くなるのでストックでアイゼンを叩いて雪を落としながら進む。ピッケルを持って来ていればグリセードで降りられるのにと少し後悔する。

雪渓を下り終えアイゼンを外す。ここからは登りの時に雨のため高山植物の写真を取れなかったので、時間を掛けて撮影しながら降りることにした。今回は雨に祟られた事と、蓮華岳を断念してしまったが、念願の大雪渓を踏破出来たことに満足した山旅でした。


針ノ木大雪渓 名花 シラネアオイ(白根葵) キヌガサソウ(衣笠草)