山行後記
越後駒ケ岳(単独行)
18日の午後車にバーナ、コッフェル、シュラフ、食料などを放り込み出発。財政難(?)と朝早く登るため初めての体験で車の中でビバークする。一般道路をのんびり走っていたので意外と時間がかかり駒の湯の登山口に19時到着。駒の湯旅館は駐車場に7〜8台の車がいて明日は賑やかになるかなと思って食事を済まして20時頃休もうとしていたらヘットランプが二つゆらゆらと下山道から降りてきた。新潟から来た中年夫婦に聞くと朝5時に出発したがこの時間になってしまったと疲労困憊の様子。よくも無事だったと安堵した。
北国の山特有の登山道が直登している道を登る。朝が早いと春ゼミや野鳥たちもまだ起きていない様子で高山植物も太陽光が無いと花が蕾んだままの状態でした。静かなブナ林を行く。登り初めてすぐに誰かが落とした鈴を拾う。天気は良さそうだが北の冷気の影響らしく高いところはかなりガスっている。
ツキノワグマは眼が悪いが嗅覚や聴覚は優れているので大丈夫と思うが冬眠から覚めたばかりのドジなやつが私の存在を感知せず霧の中からぬーと現れてもまずいので「下山時に君たちの食料の根曲がり竹を5本とコゴミを20株頂戴する」と断りを唱えて呪いにと拾った鈴をポケットに入れて登ることにした。
小倉山を過ぎると大きな雪渓が現れる。まずいことに霧のため視界が2〜3m位で横切る先の登山道がどの方向なのか検討が付かず雪渓の周辺を慎重にめぐり登る。今の時期の雪渓は踏み跡が暖かさの影響ですぐに融けてしまい役に立たない。
長年の経験と動物的感覚で一度も間違えずに5箇所ほどの雪渓を通過。1000mを越えるあたりから高山植物が沢山あり喜ばしてくれた。特にカタクリの群落が山頂近くまでありイワウチワ、シラネアオイ、ツバメオモト、タテヤマリンドウ、イワナシ、山頂直下に咲いていたハクサンコザクラには感動しました。駒の湯に宿泊していた人たちはすべて湯治客だったようで誰にもその後会わずに全山一人旅となりなんとも贅沢な山行となりました。
その他の咲いていた高山植物はエンレイソウ、ホウチャクソウ、ニシキウツギ、チゴユリ、タムシバ、スノキ、クロウスゴ、ムシカリ、ショウジョウバカマ、コイワカガミ、ベニバナイワカガミ、ツガザクラ、ミツバオウレン、ツクバネソウ、マイズルソウ、タケシマラン、ヒメシャガ、キスミレなど。
巻機山(単独行)
機織り信仰や織姫伝説から名が付いたと言われるこの山の名前は響きが美しく若い頃から登ってみたいと焦がれていた山である。女性的な山肌が織り成す山容は南北アルプスの荒々しい岩肌の山ではなく美しい姿である。登山者にも人気が高く北国の山にありがちな直登の登山道はなく比較的登りやすく感じました。
所々には雪が樹木をなぎ倒した状態の雪渓が残り倒れた木々を越えたりくぐったりと苦労をしました。前日の疲れもなくほいほいと高度を稼ぎ森林限界線を越える。今日はガスもなく時々日差しのある好天となる。
7合目を過ぎると少しきつい登りとなるが見晴らしがよく疲れを感じることもなく登ることが出来ました。やがて前巻機山(ニセ巻機山)に到着。すぐ目の前が巻機山。避難小屋まで少し下り登り返すと山頂です。山頂付近は3〜4mの大きな雪渓がいくつも横たわり美しい光景でした。山頂からの眺めは絶景です。
すぐ目の前が昨日登った駒ケ岳、隣が中岳、八海山の越後三山の雄姿。遠くに雪渓を多く残した谷川連峰、武尊山その左が尾瀬の燧ケ岳、平ヶ岳だろうか。この山から初めて眺める幾重にも連なる優しい北国の山々の雄姿に暫し感動。春の高山植物は駒ヶ岳のようには多くは無いがなだらかな稜線と山頂付近に池塘群が多くあり秋には高山植物も多く見られると思います。
下りは猿のごとくに一気に飛ばして降りる。途中で地元の単独行の登山者2名と前橋からきた男2人連れの登山者とすれ違う。「避難小屋に宿泊ですか」といずれも声を掛けられた。いいえ。と返事しながら「気をつけて登ってください」と声を掛けて別れを告げた。桜坂駐車場に到着。身を切るような冷たい雪解け水が流れる川原で裸になり身を清めて一路清里に向かった。
|