早池峰山(夫婦)

行程 2007年6月26日(火)〜28日(木)
6月26日(火) 清里(6:37)――佐久平(8:18)――大宮(9:42)――新花巻(12:05)――釜石(13:40)――宮古(14:53)――(レンタカー)――川井村――早池峰山荘(15:55)(泊)
6月27日(水) 早池峰山荘(5:00)――(車)――小田越(5:30)――森林限界線(5:55)――5合目(御金蔵)(7:05)――山頂    (7:55)(8:40発)――5合目(御金蔵)(9:15)――小田越(10:30)――(車)――北山崎――休暇村宮古(泊)
6月28日(木) 休暇村宮古――浄土が浜――宮古魚鮮市場――宮古駅(11:18)――八戸――清里(20:48)

山行後記

 20歳の頃にハヤチネウスユキソウが見たくて計画したが当時は上野駅から盛岡に出て山田線に乗り早池峰に行くには延々と12時間近くの時間を要したように記憶している。入社後まもない社員の分際で夏休みと有給休暇を連続して取り登山をすることが許されそうに無いこととそれだけの休暇をとり早池峰だけをやることに大きな抵抗があった。やむなく飯豊山〜朝日岳に登りウスユキソウを拝んだ時以来恋焦がれた山である。今年は天候が悪くても登るのだと早くから日程を組み予約を入れた。

 私たちは早池峰だけでなく陸中海岸を釜石から八戸までローカル線でのんびり旅したいと思ったので宮古でレンタカーを借り川井村から入ることとした。村営の早池峰山荘に到着する頃には曇り空から薄日が差し込む天候となった。早朝5時に小田越に向かう。霧に覆われていた早池峰山も日の出とともに霧が引き雲ひとつ無い快晴となる。凛とした空気の中をスタート。妻が「熊出没注意」の看板を見て怖がる。「俺はお前の一歩先を走るから襲われるのはお前だから大丈夫」と私「年寄りだから旨くないから襲わないでしょう」と妻。(ツキノワグマは草食動物だから人間を食料にしません)

オサバグサ、ツマトリソウ、マイヅルソウ、タケシマラン、カラマツソウ、ズダヤクシュなどの林間に咲く花を眺めながら森林限界線を越える。蒼く澄んだ中に早池峰山を仰ぎ見る。岩石の小さな空き地に今を盛りに高山植物が咲き誇っている。鮮やかな紫の中に純白があり気品のある美しさのミヤマオダマキ。太陽光をいっぱいに受けて昆虫を誘うためパラボラの花を咲かせるミヤマアズマギク。一つだけシロバナミヤマアズマギクも見つけて感動。赤い花と緑葉の配色が美しいミヤマシオガマ。黄色の花が可憐なキンロバイ。赤紫の可愛いコミヤマハンショウズル。八ヶ岳より小ぶりなナンブトラノオ。黄色い小さな絨毯を敷き詰めたようなナンブイヌナズナ。風に揺れながらか細く咲くチシマアマナ。

長い間恋焦がれた気品あるハヤチネウスユキソウ。まだ満開状態ではなかったが中腹までのお花畑に点在していた。登る前に妻はこの花が見えるところまで登ったら引き返すと宣言していたが絶好の晴天と沢山の高山植物が咲き乱れているので牛(花)に引かれて善光寺(早池峰山)で山頂まで登ってしまった。河原の坊からのルートを1名登る姿が見える。私たちの方が山頂に近いようだ。今日一番の登頂を少し意識して歩を進める。急峻な岩場の梯子を登り切ると稜線に出た。小さな雪渓の周りには深紅の可憐なコイワカガミが沢山咲いている。山頂からは360度の素晴らしい眺め。遠くには岩手山か。麓の谷あいには雲海が棚引き妻は何十年ぶりに見たと懐かしがる。妻はいかに山登りをサボっていたかと私。約10分後に河原の坊からの登山者が登頂。仙台から深夜に車で走ってきたと言う。タッチの差での2番。45分ほど山頂にいて下山。下山中は多くの登山者に次々と挨拶をしながら小田越を目指した。天候に恵まれ、人に恵まれ、山に恵まれ今回の旅は大満足でした。下山後は北山崎で遊覧船に乗り展望台を散策し休暇村宮古に宿泊。翌日は浄土が浜を散策し宮古魚鮮市場を覗き宮古駅から陸中海岸線を近頃珍しくなった窓が開くローカル列車で潮の香りをいっぱいに受けながらのんびりと八戸まで行き清里に無事帰着。

(以下は私たちが出会った感動の一こまを紹介します。)

料金が2食付で5000円だったこともあり寝られれば上等と思って予約を入れた。ところがここのおばさん2名が非常に親切で優しさに溢れた人たちで大感激。早朝4時30分に出発するので朝食は悪いので夜のうちにおにぎりを作って置いて下さいとお願いした。ところがおばさんたちは事も無げに「大丈夫ですよ。4時30分に食べられるように用意します」とおっしゃる。申し訳ないので何回も「お弁当で結構です」と固辞したがニコニコと笑って「大丈夫です。気を使わなくていいですよ」とどこまでも優しいのです。結局こちらも根負けして温かな朝食を頂くことになる。しかも夕食のご飯が余ったからと味噌焼きおにぎりまで作ってくださった。食事も質素ながら山菜を沢山使った美味しい料理でした。食後のデザートにメロンまで出してくださり私たちだけなのにこれでは赤字ではないだろうかと職業病が出てしまった。あまりの優しさと感動で山を降りた帰りに川井村役場に寄って親切にされたことを告げて丁寧にお礼を申し上げた。私たちは26年もサービス業をしていて本当の「おもてなし」を教えていただいたように思った。おばさんたちの「おもてなし」は歩んできた人生そのものから来る代償を期待しない無償の心だと思った。私たちはまだまだおばさんたちには遠く及ばないと自戒した。
早池峰山山頂(八重子)
        ミヤマオダマキ
         早池峰山山頂(登美夫)
     ナンブイヌナズナ
    ミヤマアズマギク
   ハヤチネウスユキソウ