最近のゲーセンは凄い。何がって、プライズマシンの景品がだ。とにかく種類が豊富だ。
ちょっと昔、アンパンマンのぬいぐるみが冗談みたいに人気だった時とは大違いで、
縫いぐるみ以外にもポーチだのクッションだの帽子だのTシャツだのと、やたらと増えた。
携帯ゲーム機も景品になってたなあ。(そういうモノはたいがい激ムズ設定)あと、
引換券を取って、ペット(熱帯魚、犬、猫)と交換とか言うふざけたゲーセンもあったそうだ。
オレも時々遊んで、たれぱんだゲットしてイエーイとか一瞬思うけど、あげる相手が
姪っ子ぐらいしかいないという悲しい事態に気がついてリバウンドで超ブルーな気分に
なっちゃったりとそこそこにプライズマシンライフを満喫している。今は。
「今は」というのは、オレにはもうちょっと輝いていた日々があったわけで。
時は17年ほど遡る。ガキっぷりが最高潮の5歳のオレはやっぱりゲームが大好きで、
親が買い物に行くときには必ずでかいゲームコーナーがあるスーパーをダダこねまくりで
指名した。当時の「ゲームセンター」は相当なダークゾーンで、ガキが遊びに行くには
不退転の覚悟で行かなきゃ悪いお兄さんに身ぐるみ剥がされて香港のサーカスあたりに
売り飛ばされそうな勢いだったのだ。だから奥様だらけでプチPTAと化すスーパーの一角
にあるゲームコーナーはゲーム大好きバカガキには無くてはならないスポットなワケだ。
とはいっても所詮は5歳だ。じっちゃんの肩もみや皿洗いのバイトで給付されるわずかな金
で遊ばねばならない。ガキは即物的なので、ビデオゲームよりモノがとれるゲームに走る。
今思うと「パックマン」とか死ぬほどやっときゃ良かったと後悔することしきりなのだが。
それはさておき、目標のブツは「ショベルゲーム」だ。そう、クレーンじゃなくてショベルだ。
簡単に言うと景品が深底のターンテーブルに入っていて、それをショベルですくってゲットだ。
オレが遊んでいたそれには、いつも飴玉が沢山詰まっていた。
100円玉を10円に両替、いよいよプレイ開始だ。ショベルと言ってもすくう部分はほとんど
平らに近く、しかも飴玉は巨大でだめ押しに形が真ん丸と、言うこと無しのテクニカルステージだ。
それでもやらずにはいられない。飴なんぞ100円あればいくらでも買えるのに、一つ間違えば
飴も手に入らない、金も無駄という悲惨な事態になるかもしれない。そんな考えより、目の前の
障害を乗り越えて、お宝(飴)をこの手につかみたいという、子供ならではの冒険心がオレを
突き動かしていたのだろう。ショベルは動き、いよいよ飴の山に突撃する!!
・・・・・・本日の戦果、2個。かなりお寒い結果だ。でも、手の中の飴はダイヤみたいにキラキラと
輝いていた。包み紙を剥がして、ゆっくりと口に入れる。旨い。自分の力で手に入れた飴だ、
これはオレの飴なんだ!!そんな気持ちだから、よけい旨く感じたのだろう。
ところがどっこい。今ゲーセンに行っても、残念ながらそんな気分にさせてくれる景品は無い。
どれもこれもカップルやマニア受けする縫いぐるみやフィギュアで埋め尽くされている。あの時
通ったゲームコーナーも、最新のビデオゲームがずらりと並んで中学生どもが蟻のように群がって
いやがる。ゲーム業界は、良くも悪くも発展しすぎた。稼ぐには、貧乏なガキが喜ぶ飴玉より、
お金をガンガン落としていってくれる20代が喜ぶアイテムを出したほうがよっぽどいいのだ。
時代が変わったと言って片づけるのは簡単だけど、思い出は美化されるのは必然だけど、
オレは飴が食いたい、あの時、あの場所で食べた飴をもう一度。あのドキドキを味わいたい。
ま、これも疲れた大人の戯れ言なんだけどね。ああ、飴。