居場所




今日、専門学校時代に足繁く通っていたゲーセンに行った。潰れてた。まただ。こんな時は
神様って奴に何としてでも唾を吐きかけてやりたい気分になる。ゲーセンの閉店って出来事は
最近じゃよくあることだけど、今回のは場所が悪かった。かつてのオレの居場所、ベストプレイス、
そこに行けば、すべてがあった。それなのに、潰れた。

専門学校に通い始めて、オレがやけに嬉しかった事は、半径約300メートル以内に、ゲーセンが
乱立していた事だった。そりゃもう、勉強何だそれ?食い物?てな感じでシカト絶好調でゲーム
をやりまくっていた。時あたかも3Dポリゴン格闘ゲーム花盛りの頃だったから、オレは次第に
強い奴が集まるゲーセンに通うようになっていた。それが今回潰れたゲーセンなわけだ。しかも
ロケーションが駅の近くで朝7:30より営業中という事もあって、オレは朝に昼に(メシ後に来店)
夜にそこに入り浸っていた。

そこには強い奴がいた。沢山いた。オレもそいつらに負けじと日々腕を磨いた。バイトもろくにしない
でゲームばかりやってたから金はもちろん無い。昼飯がカニパンとコーヒー牛乳だった事は何度も
あった。やがて学校の友人もそこに集うようになった。対戦を通じて知り合った人もいた。気の合う
連中と、時の経つのを忘れて、ゲームして、バカ話して、ゲームして、バカ話して、ゲームして・・・
この時が永遠に続けばいいのに、って何度も願った。オレの居場所、みんなの居場所をどうか奪わ
ないでって、何度も神様って奴に祈ってみたりした。

しかし、所詮ヒトのやることにゃ限界がある。時の歯車ってやつはあまりにも強大で、オレ達がどうこう
してせき止められるわけでもなく、オレ達はやがて就職という戦場に放り込まれ、面接という良く切れる
見えないナイフに心をズタズタにされ、内定という名の勝利をつかむために奔走するようになっていた。
でも、その間も、オレは狂ったようにそのゲーセンに通っていた。スーツ姿で、何だか、もがくように。

ある日、家に届いた内定の通知。飛び跳ねて喜んだものの、一抹の寂しさもあった。あと数ヶ月もすれば
あのゲーセンにも通えなくなるからだ。友人達も遠方の職場に内定が決まったし、春からはみんな離れ
ばなれだ。ま、悲しいけど、これも社会人になるための通過儀礼かな、なんてカッコつけてみせた。
しかし、その時のオレは気づいていなかった。破竹の勢いだったゲーム業界に陰りが見え始めたことに。

就職しても、オレはそのゲーセンに出来るだけ通うようにしていたが、季節が変わるごとに客の数が減って
いるのがバカなオレでもはっきりと分かった。ついでに筐体の数も減り、普通のゲームははじっこに追いや
られ、代わりにやたらと場所を食うリズムゲームとプリクラが入り口の人目に付きやすい場所に置かれる
ようになった。時の歯車は止まらない、確実に時代を動かしていた。

今のゲーセンの状況をちょっとばかり苦々しく思ってた矢先だ。そのゲーセンは潰れた。最後に行ったのは
1ヶ月前、やけに80年代のゲームが置いてあったのがひどく印象に残っている。客は2・3人、プリクラも
リズムゲームも流行遅れのモノばかりで、やけに枯れた感じがした。思えばあの80年代のゲームは、店側
のささやかな抵抗だったのかもしれない。かつて、真に「ゲーマー」と呼ばれた鉄の男たちが集い、日々を
自己の挑戦に賭けていた、夢多き時代への情景。そして、今のライト感覚のゲームに対する皮肉を込めて。

愛や夢だけじゃメシは食っていかれない。ゲームだって、夢を語るわりには、突き詰めれば商売だ。売れな
ければ消えるしかない。悔しいけど、不況不況ってわめいているこの日本じゃ、それが現実なのだ。オレだ
って社会人やって数年目だ。「居場所」とか言って、いつまでも好きな事ばかりやって、気の合う連中とバカ
やって甘ったれてる場合じゃないってのは、痛いほどよくわかる。だけどさあ、

オレはメシより夢や愛でいつも腹一杯になっていたいよ。

こんなオレって、やっぱガキっすか?神様。たまには何か言ってくれよ。畜生。

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