「探険、おばけ屋敷」
 
 
 広い聖地の一角に、今は誰も住んでいない館がある。別名『お化け屋敷』
何代か前の鋼の守護聖が住んでいた屋敷で、一歩中に入ると無事には出られないと評判で、
立入禁止になっている。
……やめようよ、恐いよ」
「っるっせいな」
 こっそり忍び込む子供が二人、そして。
 
 
 
「立入禁止といわれるには、それなりの理由がある。肝に銘じるのだな」
 絆創膏だらけで、今日の所はさすがに神妙に、ゼフェルはジュリアスのお説教を聞いている。隣ではやっぱり絆創膏だらけのマルセルが半べそをかいていた。
 散々言われて、疲れ切った顔でジュリアスの部屋から出てきたゼフェル達を、心配そうなルヴァが出迎えた。そのまま地の守護聖の執務室に連れて行かれると、そこには水と夢の守護聖が待ちかまえている。
 
「もう説教は沢山だよ」
 不貞腐れて椅子に座ったゼフェルの前に、リュミエールがグラスについだミネラルウォーターを差し出す。
マルセルはココアのカップをもらって、少し機嫌が良くなる。
「それにしても、どうしてあんな所に入ったんですか?」
「どーせ、探険とかなんとか言ってたんでしょ。ホント、子供なんだから」
「るっせーよ」
 ルヴァの質問に答える前にオリヴィエに指摘され、ゼフェルは不機嫌その者の顔で水をあおった。
「あそこって、結局どういう場所なんですか?」
リュミエールのまじめな質問に、少し気を取り直したゼフェルはにんまりとした。
 「からくり屋敷だよ、からくり。一歩入れば床は回るは、壁がはずれるは、ドアが割れるは、もう、おもしれーのなんの」
「ちっとも面白くないよ」
 マルセルが膨れっ面で言った。
 
「リュミちゃん、知らなかったんだ」
「ええ、オリヴィエは知っていましたか?」
 オリヴィエは笑ってごまかした。
「なんだよ、おめーも知らなかったんじゃん」
「私は馬鹿な探険なんてしないもの」
「なんだよ」
「やめて下さい、二人とも。ルヴァ様はご存じだったのですか?」
 リュミエールは困ったようにルヴァに話をふる。
「えー、記録ではね、入ったことはないんです。あの館の主人は妙な発明が趣味だったようで、館じゅう仕掛けだらけで、今だに何処に何が仕掛けられているのか、全部は判ってないんですよね」
「へー調べなかったの?」
「調査は入ったようなんですが、最深部までは誰も到達できなかったようで」
「RPGのダンジョンみたい」
 マルセルが感心した様にいった。
「へー、ますます、おもしれーや。絶対俺が全部見極めてやるぜ」
「危険な事はやめて下さいねー」
「僕、もう付き合わないからね」
 マルセルが口を尖らせて宣言し、この話はここで終わった……筈だった。
 
 
「祭り……ですか?」
 女王がまた変な提案をして、ロザリアとジュリアスは大きくため息を吐いた。
「だって、女王候補のふたりって、とってもよく頑張っているでしょ。たまには息抜きをさせてあげてもいいんじゃないかと思って」
 ニコニコしながら両手をあわせて二人の返事を待っている。
 聖地では女王試験の真っ最中。何をお気楽な事をと思ったのだが
「そんなに大げさじゃなくても良いの。大道芸人とか、露店とか、踊り手とか歌い手とか
呼んで、公園の辺りで賑やかにやれれば、アンジェ達も教官達も、楽しめるんじゃないかしら」
(楽しみたいのは、自分じゃないのか?)という疑問は取り合えず口にはせず、
……しかし、急な事ですし、そう都合の良いものが集まりますかどうか」
「大丈夫。ウォン財閥が全面協力してくれるって言ってたから」
ジュリアスのもっともな質問に、先手を打って答えた女王に、ロザリアが眉を釣り上げた。
「また勝手に宮殿を抜け出しましたのね」
「だってロザリア、きっと反対すると思ったんだもの」
悪びれもなくいわれ、ロザリアは頭を抱える。
しかし元来女王に甘い補佐官殿である。
「仕方がありませんわね」と頷く。こうなると渋々ながらジュリアスも認めざるをえなくなり、後は具体的な計画を立てることになった。
「ここにある空いている館。場所的に、芸人達の宿舎にちょうどいいと思うのよね」
女王が指定したのは、まさにお化け屋敷。
 結局途中で棚上げになっていた調査が、再開されることになってしまった。
 
 
「あそこに入るのですか?」
「入るのは俺じゃないがな。一応、調査責任者を言い付かった」
 夕方からオスカーはリュミエールの私邸に遊びにきていた。ちなみにこの段階で二人の関係は、とりあえずの恋人である。『とりあえず』の状態から一刻も早く脱出したいオスカーは、せっせと通ってきている。
「ゼフェルが自分が調べると張り切っていましたが」
「らしいな。ちょうどいいからあいつにやらせるさ」
 居心地のいいリュミエールの居間で、オスカーはすっかりくつろいでいた。
 ただ一つの不満といえば、リュミエールがテーブルを挟んだ向こう側に座っているということか。ソファなんだから横にきてくれればいいのにと思うのに、あちらはしっかり一人様の椅子に座っているので押し掛けてもいけない。
 さっきからリュミエールが顔を背けてはくすくす笑っているのは、オスカーの気持ちが顔にしっかりと現われているからである。
「笑うなよ」
「すみません」
 口では謝っているが、まだ笑っている。悔しいと思う傍ら、笑っている声が可愛いなどと思ってしまうのが、惚れた弱みというものである。
 結局他愛もない会話の傍ら、殆どオスカーがリュミエールの顔を眺めているだけの時間を過ごし、お休みのキスをして彼は帰っていった。
 後ろ姿を見送り、リュミエールはまた笑っている。
 もうちょっと強引でも良いのに……とは、オスカーの前では口にする事のないリュミエールの本音。彼と過ごす他愛のない時間は、リュミエールにとっても大切になりつつある。
 
 
 
「おーし、行くぜ」
 ゼフェルが何だか分からない『探険道具一式』の入ったバッグを背負い、意気揚々と一行をふりかえった。
 ついていくのは記録係の図書館員が一人に、研究員が一人、それに
「行かないっていったのにー」
「えーと、ちょっとワクワクしますね」
むりやり連れていかれるマルセルと、むりやりついてきたルヴァとの計四人。
 総勢五人の探検隊(?)が『お化け屋敷』に入っていくのを、オスカーはさほど興味もなく見送った。
「ちゃんと調べろよ」
「わーってるって」
 朝にはいって、ちょうど太陽が真上にきた頃、一緒に入ったはずの図書館員と研究員が
息急き切って、宮殿に駆け込んできた。
「ルヴァ様方三人と中ではぐれてしまいました!こちらにお戻りにはなっていませんか?」
 
 
 
 重い音がして、お化け屋敷の正面扉が開く。オスカーは急遽作られた内部の地図を広げてみた。外観の広さに比べて書込が少ないのは、記録係が進めたのがそう奥までではなかったからである。それでもゼフェルたちとはぐれた辺りまでは罠やら仕掛けがちゃんとメモしてあるのがありがたい。
……暗いですね」
「灯が死んでるんだな」
 一緒にきたリュミエールが心細げに呟いて、オスカーは大きめのポータブルライトを付けた。
 がらんとしたホールの向こうに、暗い廊下が続く。
 わざわざオスカーがリュミエールを連れてきたのは、(暗やみであわよくば)などという不埒な考えがあったからである。
恋愛の達人にしては安直な考えだが、普通にしていてはなかなかそういう雰囲気になだれ込めないので、仕方あるまいと目をつぶる。
 この時点でのオスカーは、中の仕掛けについては、完全に高をくくっていた。
不安そうなリュミエールの手を堂々と引いて、オスカーは地図に沿って中を進んでいく。 
館の全館に体熱センサーでも仕掛けてあるのか、二人が進むと突然に足下から
音がしたり、絵が落ちてきたりと、驚かせる仕掛けがタイミングよく働く。
 地図を見ながらのオスカーはだいたいの仕掛けを把握してるが、リュミエールは
音がする度にぴくんと反応しては、オスカーの方にすり寄ってくる。
(ふっ、無理矢理に誘って連れてきたかいがあったという物だ)
 一人悦にいるオスカー。
この時点では、本当に彼はそう思っていたのだ。
甘さを悟ったのは、それから間もなくだった。
 
 
軽快に進んでいたオスカーの脚が止まる。
 前に続くゆるい下り坂の廊下に脚を踏み込んだとたん自動扉が前を塞いで、三人の守護聖の後を少し遅れてついていった研究員たちは通せんぼをされてしまったのである。
「この先からはメモがないから、俺の歩いた後だけをついてくるんだ」
……はい」
 少し格好をつけてリュミエールに言うと、オスカーは慎重に足元を照らしながら廊下に踏み込んだ。数メートル入った所で、話通りに後が塞がれる。扉が閉まる大きな音に、リュミエールがびくっと後を振り向いた。
「大丈夫だから、前をみて……
 オスカーが言いかけたとたん、足元ががくんと沈む。
「うわ」
「オスカー」
 腰砕けになりかけて下を見ると、床が横にスライドして5段くらいの階段になっていた。
「驚かせやがって」
 気を取り直して進むとまたもやスライド。今度は幅50センチ、深さ1メートルくらいの穴。下手に踏み込むと怪我くらいはしそうだ。
 長い廊下は数メートルおきにそんな仕掛けがあり、粉やら泥やら油でつるつるやらで、
ようやく抜けた時はさすがのオスカーもげっそりしてしまっていた。
 
「大丈夫ですか?」
 不安げなリュミエールの顔にオスカーは連れてきた事を後悔した。どれもたわいないといえばたわいない仕掛けで、オスカーなら別に引っ掛かっても大したことはないが、リュミエールが転びでもしたらと思うと、べたべたに甘い恋人は心配になってしまう。
 しかし一旦ここまで来た以上、戻るわけにもいかず
「大丈夫、ちゃんとついてくるんだぞ」
オスカーは力強く請け負った。再びしっかりと手を握り、ゼフェル達の名を呼びながら奥へ進んでいく。
 奥に進むにつれ、だんだん仕掛けも大げさになっていく。
 
明るければどうって事のない物も、前が見えない暗やみや、雰囲気たっぷりの荒れ城の中では効果抜群だ。決して小心者ではないリュミエールも、音がするたびにびくついてオスカーにしがみつく。オスカーの方は鼻の下を伸ばしてばかりもいられない緊張の中で、
大声でゼフェル達を呼んでいるが、まるで返事はない。
「それにしてもこの鋼の守護聖は何を考えてこんなものを作ったんだ」と、思わず喚きたくなるようなしょうもない罠に引っ掛かって、オスカーのシャツは真っピンクの斑模様になる。
隣ではリュミエールが引きつった声を上げる。
慌てて見ると、スライム状の緑の物体が彼の肩から腕を伝って滑っていくところだった。
「なんだ、この!」
 床に払い落とされてぺちゃんとなった物体をリュミエールは薄気味悪そうに見た。
……この館の主人は何を考えていたんでしょうか……
「何も考えてなかったんだろう」
 壁、床はもちろん、天井からも何が落ちてくるか分からない。
「畜生、ゼフェル達は何処にいったんだ。これで先に宮殿に戻ってたりしたら、耳から手をつっこんで奥歯をがたがたにしてやる!」
 大声で怒鳴ったとたんセンサーでも反応したのか、壁に縦一列に穴が開いた。そこから水平に水が勢い良く吹き出し、もろに浴びたオスカーはすっかり濡れ鼠だ。
 リュミエールは声もなく呆然としている。オスカーは小声で怒鳴った。
……畜生」
 
 
 落し穴だらけの小部屋を抜け、廊下の床と壁を確認したところで、オスカーはぐったりと壁に凭れて座った。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫」
 ちょっと声に元気がなかったなと思いながらリュミエールの方を向くと、彼の方もいい加減疲れたように隣に座り込んでいた。
「悪かったな。誘わなきゃよかった」
 青ざめたリュミエールの顔に本気で後悔したオスカーが真面目に謝ると、彼はかすかに微笑みながら首をふった。
「私がついてきたかったんですから」
 ・・・・・・・・・なんて可愛いんだ。こんな時でもうっとりしてくる。
オスカーはそっとリュミエールの頬に手をそえると、軽く口付けた。リュミエールが身体を寄せてくる。
 それを抱き締めようと腕を回したとたん、カチンと音がした。
 ぎょっとして顔を見合わせると座っていた床がいきなり斜めになり、まるで滑り台のように下方へとのびていく。二人はたまらず抱き合った格好のまま、下へと滑り落ちた。
 螺旋を描くようにどれくらい滑り落ちたのか、最後の一メートルくらいで放り出され、オスカーはリュミエールのクッションになる形で床に落ちた。
 
「っつ……
辺りを見回したところで明かり一つない暗闇である。辛うじて床に厚いカーペットか何かが、敷いてあるのを感じるだけだ。
 「リュミエール、大丈夫か?」
 自分の胸の上に乗っているリュミエールに声をかけると、低い呻き声がした。
 怪我でもしたのかと、オスカーは慌てて細い身体を探る。と、ひんやりとしたなめらかな物に触れた。
リュミエールがさっきとは違う喉声をあげた。
 恐る恐るその辺りに指を添わすと、それがリュミエールの脚だと分かり、オスカーの脈があがる。
耳の辺りで感じるリュミエールの息が緊張に荒くなる。
 滑り落ちてくる間に、リュミエールの長い裾が腰の辺りまで捲れあがり、両足が殆ど剥出しになっていたのだ。ライトは何処にいったのか、周囲に灯はまったく無い。
 肌の色はもちろん、形もはっきり見えないのが、やたら悔しい。
 
 オスカーは今度は手の平全体でゆっくりと、初めて触れた肌を味わう。
 しっとりと吸い付くような肌、それとは逆に押し返すような肉の弾力、オスカーのように硬くはなく、女性ほど甘くもない絶妙の手触り。ほっそりとした腿から膝に向かって、何度も撫で上げると次第にリュミエールの息が弾んでくるのが判った。
「っん……
 濡れたような声、緊張して硬くなるが逃げようとはしない身体。オスカーの胸にしがみつく腕に力が入る。鼓動が早くなっているのを感じて、手が逆に動いた。
 腿から上へ、すべらかな腰に向かって。リュミエールの身体の奥の、もっとも敏感な部分に向かって手を滑らすと、引きつった声と共にしっかりと抱きついてきた。
 弾かれたようにオスカーは体を入れ替えた。胸の下に抱き込まれても、リュミエールは撥ね除けようとはしなかった。ただ、しがみつく腕に力が入る。
 ゆっくりと肌を手でなぞりながら、唇を喉へと移動させると、甘い声を上げてリュミエールの背が仰け反った。
・・・・・よし、このまま一気に・・・・当初の目的を忘れて、オスカーがそう思ったとたんである。凄まじい音がして、彼等のいる場所の、丁度反対側辺りの壁が崩れ落ちた。
 唖然として顔を向けると、崩れた向こうに煌々と灯りがついているのが見えた。
「あ……
 リュミエールがなにか言いかけるより早く、甲高い悲鳴が聞こえる。
「今のは!」
「マルセルの声です!」
 
 さっきまでの濃厚なムードは何処へやら、崩れた場所へと向かって走りだした。
そして跳びだしかけてたたらを踏んだ。そこは部屋全体が漏斗の様に中央に向かって窄まっていて、壁と仕掛けの間のわずかな足場にマルセルとルヴァが張りついている。見ればゼフェルは中心に向かって落ちかけ、手がかりもない足場に辛うじてへばりついていた。
「おい、助けろよ」
 ゼフェルが喚くがそこは彼等のいる場所から離れており、オスカーはかなり不安定な姿勢で腕をのばした。
……気を付けて」
 リュミエールがささやく。どちらも不安定なまま必死で腕をのばし、ようやく指先が触れたと思った瞬間だった。
「うわ!」
 ゼフェルの身体がゆれて、とっさに掴んだオスカーごと中心の穴に吸い込まれていった。
 
 
 
・・・・・・・ああ、もう。なんてお化け屋敷だ。
 忌ま忌ましく思いながら、上半身裸のオスカーがシャツを絞りあげた。赤毛がぐっしょり濡れて髪の先から水滴が落ちてくる。
「ほら、これを着ていろ」
 植込に向かってきつく絞った自分のシャツをさしだすと、白い腕が受け取り、代わりにこれもまた濡れそぼった長衣が差し出される。
 それを絞りながらオスカーは横を伺った。
 そちらでもびしょぬれのルヴァ達が、てんでに服を脱いで絞っている。
 日は暮れ切っているが、辺りは昼間のように明るい。
 ここから見えるお化け屋敷の窓という窓には明かりがつき、噴水まわりの外灯にもすべて灯りが灯っている。まるで「お疲れサン」といっているように。
 
 あの中心の穴は館のすぐ隣にある大噴水の中に通じていたのだ。
 いきなり水の中に落とされて、最初は焦ったものの正直外に出られてほっとした。
 結局、帰り道の分からないまま中にとり残されたリュミエール達も、穴の底から聞こえる呼び声にそこから外へと出たので、全員濡れ鼠になってしまったのである。
 
 お化け屋敷の明かりに驚いた警備兵達が駆け付け、そのまま毛布を取りに走っていった。
 かさりと音がして、オスカーのピンクに染まったシャツを着たリュミエールが、植込の影から出てくる。長めの丈だが彼自身も背が高いので、両脚は殆ど丸見え状態。
 軽く上体を傾けて髪を絞っている仕草はかなり色っぽいが、白い肌をなお白くして夜風に震えている様子はかわいそうで、とても欲情している場合じゃない。
 オスカーは疲れ切ったように息をついた。
(それにしてもとことん粋狂で人騒がせな守護聖だ。自分が聖地を去った後、この館に入って大騒ぎをする人間がいるのを予想していたに違いない)
 遥か時の彼方で、舌を出しているのが見えるようだ。
 
ようやく両手に毛布を抱えた警備兵が戻ってくる。一枚ひったくる様にしてリュミエールの身体を包んでやると、彼は大きく息をしてオスカーに凭れてきた。
 その肩に腕を回しながら、去ってしまった最大のチャンスを思い出す。
 何事もなければあのまま一気に最後までいってしまえそうなほど、濃厚で濃密な雰囲気。
 あの壁はとっさに隣に逃げようとしたゼフェルの爆弾で崩れたもので、いっそ三人まとめておとなしく流れていれば良かったのに、とまで考えてしまう。
 さて、あんな状況は次はいつ訪れてくれるのだろう。
なんだか情けない気分で、オスカーはそう考えた。
 
 
「よーし、次はもっと装備を整えて、絶対俺が全部探ってやるぜ!」
 しきりにくしゃみをしながらも、懲りないゼフェルが気炎を上げる。
「まだやるんですかぁ?」
「ぼく、もうやだぁ」
 疲れたルヴァと、マルセルの涙混じりの声が重なった。
 
 
 その頃宮殿の一室では、
「やっぱり宿舎は別の建物にしましょう」
逃げてきた図書館員等の報告を聞き終えたロザリアが、厳かに宣言していた。
 
 
 
終わる