◆ 亡霊の人々 ◆


 

【裏切り】

煉骨を「仲間を裏切った」として断罪した蛮骨さん。
正直、何をして煉骨を裏切ったと言ったのか、ちょっと判りませんでした。仲間の欠片を取って止めを刺したのは、蛇骨さんもやってるし、欠片を渡すか渡さないかの違いか…?と思ってましたが。
蛮骨さんにとっての裏切り行為とは、止めを刺したことではなく、見殺しにしたことだったのかな?と思います。
蛮骨さんは仲間と合流してから、自分は単独行動でも他の面子は常に複数で行動させています。複数っていう事は、当然、お互いで協力しあえって事なんでしょう。1人より2人の方が危険度が下がるのは間違いない事です。蛮骨と会ったあとの蛇骨が煉骨の所に行ったのは、やっぱり2人で協力して動け、って意味だったのではないかと思います。
結界の中で人間化した犬君は七人隊の前に為す術もなかったし、兄貴分である煉骨だったら、蛇骨を制して止めを刺すことも可能だったはず。(犬君は主役だからそんな展開はあり得ませんけどね(^^;;)
でも煉骨は蛇骨を焚きつけて1人で戦わせ、犬夜叉の妖力が戻った後も手を出そうとはしませんでした。煉骨は、犬と蛇骨が相打ちに近い形になることを期待して、その結果、蛇骨を見殺しにしてしまったのです。

蛮骨にとって許せなかったのは、煉骨が蛇骨の欠片を自分の物にしたのではなく、欠片欲しさに仲間である蛇骨を死に至らしめるような行動をとった事だったのではないかと思います。もしも協力して戦いながらも力及ばず蛇骨が死に、そして煉骨がその止めを刺したのだとしても、それぞれの仕事をきちんとこなした上での結果だったのなら、蛮骨は咎めなかったのでは…等ということを考えます。欠片は当然取り返すでしょうけどね。(笑)
「さみしい」という台詞も、本気だったのかも知れません。


 

白霊山周辺で登場した新キャラは、少年マンガ主役の犬夜叉一行では描けない「人間の宿業や矛盾」のようなものを代わりに表現してくれるキャラだったのではないかと思ってます。(基本的に犬夜叉は人魚シリーズ路線だと思ってます…)
今までの犬一行の旅で出会ってきたような、「悪辣」「善良」とはっきりと立場が別れてはおらず、見ようによってはどちらの面も見えるという、非常に曖昧で人間くさいキャラ。七人隊はどう見ても外道の面強調されてますけど、でもあの人の命が安く、使い捨てにされる事も間々あった「戦国時代」の代表のような気がします。

このシリーズでは様々な意味での「裏表」が語られていると思います。
聖域でありながら、内部は邪気に満ちた白霊山はもちろん、聖人と呼ばれつつ、奈落に惹かれ、守っていた白心上人。二重人格の睡骨。そして、外道ゆえに首をはねられたと言い伝えられる七人隊。 なぜ、過去に七人隊が討伐されなければなかったのか。

戦い方が外道だったから、その強さに大名が怖れを抱いたから。
これはかなり勝った側に都合のいい言い訳だと思ってます。。
女子供も殺すというのは確かに残酷な行いです。ですが、城を枕に一族揃って討ち死に、もしくは自害。跡継ぎの男児を処刑。邪魔になった一族の妻子も全部処刑、関係者残さず。見せしめのために城の責任的立場だった女性を張りつけ等など、時の権力者達が残酷な命令を下すのは別段珍しくもなかったのです。そして、権力者が命令を下す。という事は、それを実行する配下がいたわけです。(ついでに言うなら、昔は罰、拷問もかなり残酷です。現代人の感覚で言えば、ちょっと吐きそうなくらい(--;)。張りつけ獄門、首さらし、鋸引き、鼻削ぎ、耳削ぎ等など。当たり前の村人である人々でさえ、りんのような子供に対して「ぶっ殺すぞ」なんで台詞をはける時代…。犬一行は主役なので、現代人の感覚で正義サイドに描かれています。でも、全てのキャラが現代人感覚なら、舞台が『戦国時代』である必要がないわけですし。その辺の時代が持つ非道さを今まで妖怪が請け負っていた訳ですけど、ここへ来てようやく人間の裏面と結びつけられた、という感じがします)

七人隊は傭兵です。基本的には各大名の組織の一員として動いていたわけですから、彼等が実行したことだけを口実に「外道」というのは、勝手な言いぐさな気もします。

七人隊は強いです。信長以前という事は鉄砲もまださほど普及していない時代でしょう。そんな頃に火薬を使いこなし、見た事もないような奇妙な武器、または見るだけで威圧感を与えるような強大な武器を持った彼等は、味方とすれば頼もしく、敵とすれば見るだけで恐怖を感じる、一種戦場のシンボル的存在だったと思われます。
彼等を自分の組織に囲い込みたい、と考える大名が数多くいたことは想像に難しくありません。現にお礼参りされた城の殿様は、自分の部下を殺されたにもかかわらず蛮骨に「自分に仕えないか」と誘っています。
でも、彼等は一つ所に落ち着くわけではなく、戦場を渡り歩いていた。
今回味方としてその力を存分に発揮してくれた七人隊が、次は敵として自分達に挑んでくるという事もあり得るという事です。
また、味方としていても、国の大将としての器が十分ではない大名ならば、彼等がいつ寝返って自分の首を狙うのか、と恐怖を感じる事もあり得たでしょう。人を殺した数で豪傑と呼ばれる時代、大名が怖れたのは、「強い集団」ではなく、「自分の側に与していない強い集団」の筈。
「胡散臭い雇い主」である奈落に対しても別段反抗する気配を見せない彼等は、ちゃんとした戦場と契約どおりの報奨金さえ用意していれば、律儀な戦闘集団として活動していたのではないか、と思われるのですが、疑心暗鬼は膨らみます。彼等が独立した武力集団として大勢力になる前に、なんとか始末をつけようという意識が働いたのでは?と勘ぐりたくなります。

七人隊は、自分達に制御しきれない彼等の強さに恐怖と疑心暗鬼を抱いた大名達の裏切りによって、罪人とされてしまったような気がします。

 
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