ベトナム旅行記 in RightStaff 2003/03/20-24


承前


 ベトナムに行こうと決めたのは2002年の末。
 街並みや料理はフランスとアジアの融合。物価も安い。おねーちゃんは美人で、未知のマンガもあるかもしれない。
 ベトナムは楽園であり、戦争の国だ。そして南国であり、いまや希少価値すらでてきた社会主義国であり、発展途上国でもある。
 そんな不思議な国に行きたいと思った。

3月20日 東京 朝


 今日はベトナムに行く日。
 さっそく杉並は背広に着替えて会社へ。11時ギリギリまで仕事をしてから成田へ。成田はイギリスに行ったとき以来だから10年ぶりだ。成田第2空港駅ビルのトイレで背広から私服に着替える。この着替えで集合時間から少し遅れた。
 12時30分過ぎに航空会社のカウンターに行くと肉弾頭がいた。すでに航空券をとってくれたらしい。肉弾頭は床に旅券とパスポートを投げ捨てて「拾え」といった。手続きはすべてすんでいた。なにからなにまで大助かり。
 腹が減ったが、みんなはすでに済ませているというので一人で喫茶店にいって食べた。搭乗時間になりロビーのどこかにいるみんなを探したがどこにもいない。せっかちに先に行ってしまったようだ。搭乗口に行くとでっかいドーベルマンを連れた空港職員が搭乗口で各局の取材を受けている。そういえば今日は第二次湾岸戦争の開戦日だ。しかし、空港職員に緊張感はまるで見られない。一応ナイフの機内持ち込み禁止とか掲示があったけど、チェックはおざなりで葉巻用のナイフがノーチェックで持ち込めてしまった。


「成田空港を空撮」

 今回の旅では、ソウルのインチョン空港を経由してベトナムに向かう。アシアナ・エアーのジャンボに乗り込むとみんなが待っていた。ソウル到着は18時予定。機内食は激マズ。ブルースはこの旅行のために買ったゲームボーイアドヴァンスSPでFFTAをはじめる。旅行中、ブルースはずっとこのゲームをやっていた。

3月20日 ソウル 20時


 ソウルのインチョン国際空港で乗り換えまでの2時間をぶらぶらと過ごす。遊べるところもなく、だべっているうちに出発時間。すの字は空港のインターネットから日本のサーバにTelNetで接続して仕事を片付けていた。
 ベトナムへの飛行機は767。座席は最後部。さっそくブルースはFFTAをはじめる。機内食はシーフードとビーフの2択。味はそこそこ。機内放送は第二次湾岸戦争のCNNのビデオだった。韓国語なのでよくわからない。そのうちに映画ハリポタ2がはじまる。うつらうつらと眠りながら入国審査表を書く。外はまっくら。気流の関係かよく揺れた。

3月20日 ホーチミン 23時30分


 韓国からベトナムへ5時間30分の旅。2時間の時差を差っぴいて23時30分に到着。入国審査で社会主義国の典型を見る。非常にやる気のない税関の人。そして夜遅く到着したので両替所が閉まっているという恐怖の瞬間。焦りまくるすの字。普段は見られない光景だ。
 通常、空港からホテルへはタクシーを使う。しかしタクシーはドルかベトナムドンしか使えない。だが、両替所が閉まっており、我々はそのどちらも持っていない。まさかホテルまで夜明かしで歩くのかと思われたとき、本日の英雄が現れた。
 関空から2時間先行したふなっさんが空港出口で手を振っている。彼が両替をしていれば我々は助かる。しかし、していなければ地獄が待っている。ふなっさんは合流するなりいった。「2時間待ってたんやけど物売りがうるさくてかなわんかった」と。そんなことはどうでもいいから両替はしたのかという我々の問いにふなっさんはポケットをゴソゴソとさぐり、札束を取り出す。「とりあえず200万ドンくらい交換しといた」「すげえ、札束が五つある! 大金持ちだよ!」ベトナムは硬貨がない。すべての通貨が札でいささかインフレ気味である。1円=120ドン程度。1万円で普通のベトナム人の年間収入に匹敵する。物価も安いからちょっとした王様気分が味わえる。
 我々はふなっさんの金でタクシー2台に分乗してホテルへ。真夜中なので店はほとんど閉まっている。タクシー2台は神風的な運転でグイグイとホテルへ。これがジェットコースターより怖い。アクセルペダル踏みでたまにブレーキを踏んで速度を調節。センターライン無視、方向指示機が壊れているのはあたりまえ、信号なしの4つ角も速度を緩めない。非常にせっかちで非常に攻撃的なドライブだ。カブに二人乗りしているカップルを数センチでかわし、常に前車にパッシングと無謀な追い抜きをかけている。しかし車内に流れる音楽は東南アジア風のまたーりとした癒し系。
 そしてやっとホテルにつく。ホテルは10階で非常に眺めがいい。しかし、バスのカギが壊れかかっていたり(閉じ込められましたとも)、バスタオルが一枚足りなかったりと大混乱でした。

3月21日 ホーチミン 7時30分



「ホテルから下町を撮影」

 起床。テレビをみる。朝飯はホテルの10階で、バイキング式。朝飯からうまい。そしてホテルのロビーで両替をして外出。二万円〜三万円をとりあえず交換。財布に入らないほどの札束を手にいれる。二万円でベトナム人の年間収入を超える計算だ。準備がすんだのでホテルの前の道を道なりに西へ歩いた。歩道はバイクと露店で足の踏み場なし。しつこい物売りをいなしながら歩く。そのうちに交差点で左右から信号おかまいなしに突っ込んでくるバイクをよけながら渡る技術を習得。


「アジアな風景。ほとんどがホンダのカブ」

 そうやって歩いているとでっかいスーパーを発見。入ってみると客の数より警備員のほうが多いおかしなお店。そしてこの店の2階にはセガのゲームセンターがある。1ゲーム20円くらいの専用コインを買って遊ぶ。3年から5年くらい前のゲームが中心だった。ブルースが狂喜してオラタンをはじめる。客はお子様くらいしかおらず、ほとんど貸しきり状態だった。しかし1ゲーム20円なのでコインを大量に買ったブルースが始末に困り、やけになってみんなにコインを配ってまわった。
 そんなこんなでさらに歩く。日差しはそれほどではないが非常に蒸し暑い。シクロ(自転車式人力車)のおっちゃんは商売そっちのけで昼寝をしている。中には2台のバイクにまたがって寝る剛の者もいる。ああ、南国に来たんだなあと実感。あまりの暑さに途中の喫茶店に入った。フランス風のカフェでクーラーが効いている。クーラーがこんなにありがたいものだとは思わなかった。店の外の犬も猫もグデッとしてやる気がない。すの字がインスタントカメラのチェキを使ってウェイトレスのおねーさんと仲良くなる。アジア顔のふなっさんはおねーさんに大人気。しばらく涼んで外に出る。


「こんな家でもちゃんと人が住んでいる」

 暑くて死にそうなので帰り道でもあのスーパーによる。クーラー万歳。そしてブルースはゲームに。すぎなみは怪しげな将軍ジュース(粉末オロナミンだった)などを買いこむ。ブルース、ゲームにはまりすぎて出てこない。そのまま昼飯を食べられるところを探して右往左往。結局、ホテルそばのカフェレストランで濃厚な昼飯を食べた。てゆーか食べ過ぎた。何を食ってもおいしいし、おなかにたまらないので食べ過ぎる。

 
「ふなっさんは南国の殿様」 「ベトナム風エビのココナツ蒸し」

 ふなっが物売りのおばちゃんから二万ドンのライター付腕時計を間違えて5万ドン札を出して買ってしまう。もちろんあとで気づいてもお釣りはもらえない。満腹したのでホテルに戻り、自由行動。肉弾頭は昼寝、ふなっと黒Qは足裏マッサージへいってスペシャルマッサージ、すの字と杉並は街をさまよい、いささか熱射病気味になったので軽く昼寝してからもう一度街へ。今度は東へ一直線に歩く。川にぶちあたる頃には夜になっていた。おなかが減らないのでゲームセンターをさがしつつみやげ物屋を冷やかしながら歩く。歩いていると5歳頃の女の子が「ガム買わないか」「造花買わないか」とつきまとってくる。買わない買わないとやってると今度は女の子の母親くらいの年齢の女が「扇子買わないか」とつきまとってくる。非常にしつこい。ふなっさんが根負けして買うとさらにしつこくなる。杉並は街頭の物売りからその日の朝に出た日本の新聞を5万ドンで購入。ククェートにイラクがミサイルを打ち込んだとのこと。
 物売りから逃げまわっているうちにいい感じのレストランを見つけたので入ってみる。日本人向けレストランで値段が少し高い。ガイドブックに一番目に出てくるような店だった。ここの料理もはずれなし。ウェイターの質が少し低いけれど満足できるレベル。ブルースはジントニックと焼きバナナがお気に入りだった。満腹だったが料理はさらさらと腹に入った。お値段は日本円で2500円くらい。激安である(現地人にとっては平均月収以上の値段であるが)。そして酔いをさましながらホテルへ戻る。
 ホテルでシャワーを浴びてからホテル2階のディスコへ。すの字いわく「ぬるい」音楽の中でふなっと肉弾頭が格闘みたいな踊りを踊ったがガードマンに喧嘩と誤解されて注意されてしまう。
 夜11時。日記を書いたり、外に水を買いに行ったり。深夜2時頃、寝る。肉弾頭のいびきと鶏のコケコッコーがうるさい。

3月22日 ホーチミン 9時30分


 起床後、すぐにホテルの朝食にいき、今日の予定を練る。ブルースとすぎなみがヤンシン市場に行きたいというので全員でいく。まるで秋葉原のような場所だった。シャツや帽子を購入。ブルースが「俺が買ったものと同じ物を買うな」とほかのみんなにご立腹。


「大昔の秋葉原のようなヤンシン市場」

 そしてベンタイン市場でみやげ物を漁る。ゲームボーイアドヴァンスのパチモノのロムとか、サングラス、できのいい指輪、財布やベルトなどを買う。「にーさん、かっててよー」と店頭の客引きのおねーさんがつきまとう。ふなっさんが商品を店に忘れてきたり、4万ドンの品物に40万ドンを払ったりとさんざん。


「街頭でTシャツを買う一行」

 昼飯はフレンチの店で20ドルのコース料理を食べる。買い物関係でぼったくられ続けたふなっさんが失意のどん底に落ち、インターネットカフェにいったらホテルに帰るといいだす。で、戦争博物館見物にいく杉並・ブルース・肉弾頭・黒Qと、その辺をぶらぶらしてついでにホーおじさん記念館に行きたいすの字、ホテルに帰るふなっさんと3チームに別れる。


「果物売りのおばちゃん」

 結婚式をやっている聖マリア大聖堂の下をとおり、博物館につくと戦車と戦闘機、高射砲が野外展示されていた。蒸し暑い室内にはパネル展示と捕虜収容所のディスプレイ。「戦争はいけないけど戦車は好きだ」と杉並がいう。そして暑い道を歩いてマキシマークというスーパーにたどり着く。3Fにゲームセンターがあるが、ボタンが足りなかったりレバーがふにゃふにゃだったりとハード的な難易度がべらぼうに高い。歩きつかれてタクシーでホテルに戻る。シャワーを浴びたり、マッサージにいったりで時間をつぶし、夕食。


「戦車の展示」


「戦闘機の展示」

 杉並・すの字・肉弾頭でカフェっぽいベトナム料理屋に夕食を食いに行く。ほかの人間は足裏マッサージに。夕食はベトナムっぽいものを食べる。けっこう油っぽいものが多い。食後の散歩は3人がそれぞれ別の方向をぶらつく。すの字はひったくりにカメラをとられそうになって上着が破かれた。このぶらり歩きでわかったことは、ベトナム人にとって公道は自分の庭だという感覚。これがわかったとたん、ベトナムの路上の風景のすべてに納得がいった。彼らにとって路上を歩く旅人は、庭先を訪れたお客様なのだ。


「歩道は我が庭」

 1時間ほど歩き回ってホテルに帰ると1階のレストランにみんなの姿があった。暑いから飲みに行こう。このとき海外にきて目に見えて腰の低くなった肉弾頭は「(気の)小さい人」の異名を受けていじめられる。さて、バーに行った一行は酒を飲みまくる。ブルースはいつもどおりジントニックを。杉並はB-51からB-52、B-53、B-54という4種類のカクテルを制覇し、ボーイングと呼ばれる。ふなっさんは物売りの子供に好かれてタバコを買わされる。しばらく飲んでいるとまた物売りの子がくる。非常にひとなつっこい芸達者な子でかってにふなっさんのタバコを取り出して火をつけて回る。その芸達者にほだされて杉並がガムを1万5千ドンで買う。ほとんどおひねりの感覚。その店の払いは「小さい人」の肉弾頭が持つ。ブルースが「おまえが払うんだ」と命令すると「はい、そのとおりです」と奴隷状態。そしてほろ酔い気分でホテルへ帰る。
 すの字と杉並、イラク情勢を肴にCNNを見ながらバカ話で盛り上がる。2時就寝。

3月23日 ホーチミン 7時30分


 7時30分起床。外がやけにまぶしい。今日は快晴。ものすごく暑い日になりそうだ。昨日までのどんよりした空模様でも首筋が痛くなるほど日焼けしたので若干の不安。ホテルの朝飯を食べて部屋に引きかえし、11時までダラダラすごす。暑くて動く気になれないのだ。路上で昼寝しているベトナム人の気持ちがよくわかる。
 テレビの12チャンネルでは台湾のドラマを放送していた。バスケットがテーマで日本の歌がBGMに使われている。けっこうツッコミどころがあって面白い。主人公のバスケットのライバルがクールマンという名前で大財閥の息子らしい。で、車椅子の妹に求婚してお前のためなら地位を捨てるとか告白。ところが妹は主人公にも好かれており・・・。試合は主人公チームがライバルチームの汚い手に敗れるが、ライバルチームの監督が主人公チームを侮り、お情けで次のリーグに出してやろうといってくるというよくあるストーリー。たぶん、決勝では返り討ちにするんだろう。


「ホテルで涼む一行」

 そしてチェックアウトして肉弾頭が見つけてきた手近な百貨店に行き、ブルースはゲームセンターへ。そのほかの人間は手ごろなみやげ物を買いあさる。なにしろ物価がバカみたいに安いから買っても買っても金があまる。ここで杉並は念願のベトナムの漫画を発見した。非常にパチモンくさくて楽しい。とにかく余った金を使い切ろうと土産物を買いまくる。後にこれが罠につながるが、そんなこととは露知らずそれぞれ買い物をして百貨店前に集合する。
 そして今度は再びベンタイン市場でみやげ物を漁る。ブルースとふなっはゲームボーイアドヴァンスのパチモンゲームを買いあさり、すの字は市場の子供たちの写真をとってあげてヒーローになる。そして昼飯を軽く食うためバーに。フランス式のなかなかすてきな店。食べるだけ食べたら眠くなる。そして定番の足裏マッサージ。40分ほどかけて両足をマッサージした。マッサージしてくれるおねーさんが顔はいまいちだが巨乳で、きれこみの大きい上着からノーブラの中身が見えた。マッサージ中、足が胸に触れたりいろいろと楽しめる。マッサージ後、足が軽くなったので川辺へ散歩。しかしふなっさんがいない。勝手に延長してマッサージ屋に残っていたのだ。ふなっさんは足裏マッサージの虜であった。


「河面に浮かぶ揚陸艦」

 ふなっさんを待つあいだ、風にあたって涼む。川にはアメリカの揚陸艦が係留してあった。戦利品らしい。しばらくしてふなっさんと合流しコウモリの飛び交う夕闇を楽しんだあと、今度は夕飯を食える店を探す。小洒落た商店街のベトナム料理屋で食べる。あまりおなかの減っていない一行には少し量が多すぎた。店員はやけに愛想がよく肉弾頭の着ていたホーチミンのTシャツを指差し「ホーおじさんのTシャツには腕を組んで拝んでバホーというのです」と身振り手ぶりで教えてくれる。
 店を出て杉並が本屋に吸い込まれ、またパチモンのマンガを買ってくる。バイクに乗ってるベトナム姉ちゃんの足にみとれたりしつつ、ワゴンタクシーで空港へ。いよいよベトナムとはお別れだ。関空行きのふなっさんは2時間時間がはやいのでそれにあわせた。出迎え客で大混雑している入り口を抜けておざなりな通関を抜けて待機。待機場所は非常に蚊が多い。杉並のもってきた虫よけスプレーがここにきてはじめて活躍した。そしてここで罠が発動。空港使用料を払うのだが、20万ドンも必要だった。日本円なら2000円。最後のみやげ物用にとっておいた現地通貨がここできれいさっぱり消える。足りない人間は再度両替するハメに。
 24時30分、飛行機への搭乗。深夜1時出発。

3月24日 ホーチミン 1時


 時刻どおりに出発、途中夕食が出たが、ほとんど寝てすごす。ソウルのインチョン空港に7時着。乗り換えを待つ間、ブルースは韓国料理を食べ、杉並はまたまた現地のマンガを買った。
 10時20分、成田へ向けて飛行機が出る。機内食がまずい。日本の新聞を読んでいると、ゲド戦記6巻の発売予告があった。ブルースが5巻で完結したはずだろうと怒る。予定より20分遅れで成田に到着。税関はあっさりと通れる。ベトナムは治安が悪い国だし、SARSも流行っているからもっと足止めされるかと思ったが肩すかしだった。
 13時18分、成田から上野へスカイライナーで直行。上野で解散。

後日談


 帰ってから1週間ほどほぼ全員が下痢になった。
 生水にあたったのか、油っこいものを食べまくったせいなのか定かではないものの、恐るべし東南アジア! というオチがついた。

− モドル −