明けて翌朝。
さあて、今日一日の俺たちを、うどん食べまくりに尽くすか・・・
さすがに明日の仕事のために帰途は岡山からの新幹線を選択した俺とブルース。
3時頃までが、食べまくり限界時間。一刻も、そして一店もムダにするわけにはいかないのだ!
しかし、昨日の経験で早朝の店がセルフしかないことは解っている。
なあに、セルフだって、いききが旨かったことは確かじゃあないか。
逆に、それのほうが品質が安定してるような気さえするさ。
時間の無駄を省き、高松のセルフ店「はすい亭」に入る。

店内は、色々な具が揃ったセルフならではの絶景。
さて、

・・・・・・・・・
関東で喰うよりは、旨い。
しかし、昨日一日喰いまくった俺らには、この歯応えでは平均以下としか言いようが無い。
3人の心が一つになった。
『高松は駄目だ。郡部行くぞ!郡部!』

またまた綾歌郡を目指し、おばあちゃんの車は田を越え、畑を抜ける。
昨日同様、寂しい道が続くが、しかし、昨日のような不安など微塵も無い。全く無い。
俺たちは知ってしまっているのだ。ココには“讃岐うどん”がある、と。
試しにカーナビでうどん店を検索すれば、標的を示す赤い光点が無数に地図を埋め尽くす。
『隊長、囲まれました・・・・・・レーダーには、我々のいる地点以外全てBEMどもの大群しか映っていません!!』
昔、テレビ東京の洋画で見た3流SF映画みたいなシーンが思い浮かぶ。
しかし、俺たちの周りの光点はコレ全て援軍なのだ。笑いが止まらない!止まらな過ぎる!!
3人のハイテンションな笑いが車中にいこだまする。
狂っている。うどんに狂いまくっている。

ちょっと、腹減らしの時間稼ぎのために道の駅によると、やはりうどん関連商品が立ち並んでいる。
やはり、ココはうどんの国。うどんを超えるアイデンティティなどありようはずも無い。
そのなかで、首を傾げる珍商品もある。
「うどんソフト???」
そんな、バカな!
ええ、いいですとも、ワタシもバカです。
もちろん躊躇無くいただきます。それも、「初心者向き」「中級者向き」「上級者向き」と3種類あるうちの、もちろん上級者向きをですよ。
ソフトクリームに練りこんだ、ぶつ切りの凍ったうどん!!・・ぐらいでは驚きもしないが、舌の上で解けたソフトがとろりと食道まで流れ込んだ後に口全体に広がる・・・・・・イリコだしの風味!?
最終的に、俺は旨いと思ったがこれは万人向けではないので「是非に」とお勧めすることはできない。俺も、「最終的になる」まで評価が定まらなかった逸品なのだから。

さて、そろそろうどん店を探そうと表に出た俺たち。
探す必要など、無かった。道路を挟んだ隣は、もううどん店。
「気づかなかった・・・」
もっとも、そこらじゅううどん店はうどんの国のセオリー。そろそろびっくりもしない。さて、とにかく入ってみっか。

『綾川』
こじんまりしたきれいな店だ。なにはともあれ、昨日今日の経験で一番旨いと思ううどんの喰い方。「ぶっかけ」で注文する。

おおっ!つやつや。
このつやつや感が、すでに麺のコシを約束してくれているような気がする。
・・・うん、約束どおりじゃないの。
つるっと、そしてしこっと。これが讃岐うどん。
これまで喰った5食のなかで、やはり昨日最後の赤坂と一番方向性が近い。
すっかり舌の贅沢に慣れてしまった俺たちは冷静に「結構いける」などと評価しているが、コレ最初に喰ったら「ウマイ!信じられないよこのウマさ!」などと騒ぎ出していたことだろう。

漫画喫茶などで時間を潰し・・・というか腹をこなれさせて、次に向かったのも同じく綾歌郡の「岡泉」。
ここで、俺たちは予告どおり、禁を破る!!
なんたること、この行列!つーても、10人くらいがトコかな?
しかし、並んでまで喰うことはない。なぜならココはうどんの国。ちょっと足を伸ばせばウマイうどん屋なんていくらでもある。
足は伸ばしても、うどん伸ばすな!
「ちょっと待て!」
なによ?
「この、ナンバーを・・・見よ!」
おお、なんと、なんたることよ。駐車している車、近畿、中国はともかく、中部地方のナンバーまである。こいつら、わざわざうどん喰いに日本中から集まって来たってのか?来たってことなのか?
重みが、違う。
ガイドブック片手に近所の有名店に並ぶだけの行列とは、同じ行列でも行列の重み違いまくり。
バカだッ!うどんバカの・・・群れ。
食べまくりバカの行列嫌いは、うどんバカの並んででも食べたい気持ちに敬意を表す。俺たちも並ぶ。そして、喰う。

店内に入ると、手打ちの実演が目を奪う。うどん切りマシーン(麺きり包丁を等間隔にすばやく使える仕組み)など、店内はうどん作りのワンダーランド!
それだけに、不安もある。ココまでのナンバーワンうどん赤坂では、素っ気無い店内、無造作なうどん作りが何故か最高の味の提供になっている。
こういうパフォーマンス的な入れ込みは、「俺、一生懸命頑張ってるから、客がなんて言おうとウマイはずだもん」てな思い込みに陥らないかしらね?心配心配。

心配無用。
ツヤ、歯応え、味、文句のつけようなし。サイコー。
ここまでのうどんで、文句無く最高の完成度。歯にも喉にも素敵な感触。うどんバカの行列は伊達じゃない!



続いて、丸亀市の飯野屋。
看板の通り、肉うどんが自慢の一品らしい。
ならば、その自慢を食すよ、俺は。

ブルースとふなっはぶっかけと納豆ぶっかけ。


ははは、俺だけが喰ってやるぜ、看板商品をな。・・・アレ?今まで感じてた讃岐うどんの絶妙たる歯応えがないぞ。
試しに、ぶっかけをお替りする。・・・よし、これだ。やはり、讃岐うどんをおいしくいただくには冷えているほうがモアベターだ。
しかし、飯野屋のうどんは量が多い。2杯喰って、一杯目は汁物で・・・ヤバイ!俺は、やり過ぎた。

さて、決して悪くはないが、綾歌郡で食べたうどんに較べれば味が今ひとつな飯野屋。
いや、飯野屋は悪くないや。綾歌郡が凄すぎるんだ。次もやっぱり綾歌郡で・・・
ノリノリのブルース、ふなっだが、俺、肉弾頭は体内に破滅の予感を抱えていた。
うどんが・・・うどんが消化されないよぉ!


綾歌郡のうどん店「山下」。少しでも負担を減らすため、冷やしうどんを頼む。
正直、掻きこむのが少し苦痛だったり・・・しかし、そんな状態でもするりするりと喉を滑り降りるうどんの感触は乙なもの。やはり、ウマイ綾歌郡のうどん。

おろしうどんをまた辛い辛いいいながら食べるふなっの声を夢うつつに聞きながらなんとか食べ終える。
胃が塞がっていたせいか、ココのうどん、いままでの綾歌郡では一番ランク下に思われた。ブルースとふなっの意見もそんなところだったので気のせいではないだろう。
だが、赤坂や岡泉と比較さえしなければ、もちろん上位のうどん屋だ。ここだって。綾歌郡のレベルの高さがよく判るぜ。


ココまで来たら、締めも当然綾歌郡。

「前場」
店に入ると、壁一面に小学生と思われる夏休みの自由研究が貼ってある。
テーマは「うどんの作り方」
なんと感心な子供だ!讃岐うどんは次世代も大丈夫。30年したらまた喰いにくるぜ!


・・・・・・・・と!?

た、“タンク”だぁ!
ガクガク、ブルブル。興奮!初っ端いきいきうどんで使い損ねたダシタンクが今ココに。
これがラストチャンス!使うぞタンク、入れるぞダシ。
頼むのはもちろん、うどん玉のみ

コックを捻ると、湯気と共に薄い琥珀色の液体が注がれる。そして、
イリコのしつこいまでに濃厚な香り。
ふわあん。食欲が回復する、素敵な香りだ。
香りとコクは強いが不思議とエグみの無いダシが絡まって、うどんは胃に収まった。

すこし、麺のコシが弱い感じはしたが、ブルース曰く、午後遅く行ったんで、店じまい前の時間経過を差っぴくと、俺らは前場の本当のポテンシャルを知らないだろうということ。
なるほどね。次回に宿題ができたな。ニヤリ。


さて、今回のうどん食べまくりは以上。取りとめはないが素敵な、そしてうどん観がコペルニクス的転換を果たした旅行であった。
さて、今回のベストうどんは?
ブルース・・・断然「岡泉」。総合的に文句なし。「赤坂」も良かったが、やっぱり「岡泉」

ふなっ・・・「岡泉」の方がうどんうまいかも知れないが、おばちゃんのパフォーマンス込みで「赤坂」に軍配

肉弾頭・・・コシと弾力、総合力ではダントツ「岡泉」だが、粉自体の旨みがあった「赤坂」を押したい

戻る