秋田さんが秋田県に飽きてうちに来た。それを見た子供が「あ、来た」と言った。

で有名な秋田県に行って来ました。

何故秋田か?
記憶が定かでない。あんな遠くまで。失礼だが、最果てのイメージすらつきまとう。
いつもどおり、俺とブルースの雑談からいつの間にか決まってしまったのだが。
もっとも、いままでも、秋田の話が全く出ないということではなかった。

「富士宮…太田…あとは秋田の横手やきそばを喰えば日本3大やきそば食べ比べたことになるよね〜」
…そんな、やきそばのためだけにあ、秋田まで?
それもそだね。

「讃岐…水沢…あとは秋田の稲庭うどんで3大うどんコンプリートだなァ」
…そんな、うどんのためだけにあ、秋田まで?
それもそだね。

あきたこまちが…
ハタハタが…

そんなことがいろいろあったから、「秋田」って単語が、確かブルースの側からかな?とにかくその言葉が発音された瞬間に思ったのですよ。
「あわせ技一本!!」

もうね、正直「遠い」とかそういうのが障害になるのは決まるまで!なんですよ。決まってからはね、もうそんなことよりも期待と準備に振り回されてね、もうそんなことなんの困難にもならないんですよ。2泊で食べまくることを決めてしまうまでの早いこと。
夏休みだってんで意外と宿埋まってたりね、親分がやっぱり日程調整無理で行けないなんてなったりね、ところが直前に1泊だけなら可能なんて電話かかってきたけど、いくらなんでももう無理と断ったりね、電話切った直後にネット予約試したらもう一部屋取れたりね、慌てて親分に電話したりね。

まあ、とにかく3人旅ですよ。2人より飯も喰えるし変化もある。4人より身軽。
強行軍にはある意味最適な人数で秋田に行くわけですよ。
以前、「2人旅の機動力はこれ、最強」とか「やっぱり食べまくりには4人いないと駄目!」とかそういうことも書いているけど、まあ忘れろ。本編では3人最強説で行く。これはニケイア会議でも決まっていることなので反論は異端とみなす。

金曜日の夜中の12時に出発です。土曜の朝に飽きた到着予定です。埼玉に集合。そこからブルースカーで秋田まで。俺と親分はそれぞれ神奈川と千葉から参集。…これで、地方とか外国とか行って「いやあ、東京の方から来ました」って、どこの詐欺だよ。だれが東京在住だっての?

もうね、正直「遠い」とかそういうのが障害にならないのは出発まで!なんですよ。出発してからはね、もうそんなことよりも疲労と睡魔に振り回されてね、もう期待なんてなんの慰めにもならないんですよ。車で秋田に着くまでの遠いこと。
夜出発だってんで道はすいてたりね、栃木が意外と広くてまだ関東かよ!とか毒づいてみたりね、福島がまたどこまでも福島で嫌になったりね、高速から見てたら仙台周辺って意外と都市化してなくてビックリしたりね、というか、気づいたら岩手だよとか妙に遠出感が増したりね。




そう、そして、ここはもう横手市。横手といえば横手やきそば。そして、駅前にはちゃんとやきそばの幟が。

しかし、地方都市の休日の朝は遅い。夜中を突き通して埼玉、栃木、福島、宮城、岩手……そして秋田へと明日なき爆走した上に途中で2時間ほど仮眠をしても、しかし、まだ飯屋が開く時間ではないのだ。



駅の案内所で調べた、横手やきそばの店。とりあえず駅前だから行ってみたが、当然まだ開いていない。
現在午前9時。こいういう店が開くのは、たいていは11時ころ。これが讃岐うどんのときはまずチェーンの「いきいきうどん」で朝飯にありつけたものだが…

「おわッ!あれ、あれ、ああいうセンスがたまらねえな。こういうもの見つけられるから、旅行に来た甲斐があるよなあ」
一人、ツーリストハイに入り込むブルース。彼の示す先には、



「おんち貴族」!!

3人、バカ受け。
たしかに、こういうズレたセンス、これが旅行の醍醐味。
世界中、どこでもズレたモノには事欠かないが、自分の生活圏のズレには慣れてしまって意外と気づけないもの。だから、旅に出る意味がある。
国内でも、足を延ばせば互いに異文化なのだ、多分。

ほかにも、駅から10分ほど歩いたところに「横手やきそば館」なる施設があることを案内板で確認。
早速向かってみる。
「横手やきそば館ゆう」


早い話が「ゆう」なるやきそば屋ではないですか。普通の店です。だからこそ、まだ開いていない。

てなわけで、店が開く時間まで、横手市を楽しもう、と歩き回るが、ここで俺たちは「東北地方」に裏切られる。
秋田県は東北地方。更に言えば北東北。名前のイメージを裏切って、夏はやはり暑い!
そりゃあさあ、2008年は猛暑だよ?だからって、関東と同じくらい暑くされたら参るって。
涼むところ…涼むところ…
無い。店が開いていない。公共施設も土曜の朝で、休みが多い。
あ、図書館発見!………ドフゥ!!
窓、全開。クーラー切ってやがる。やっぱり、今年の暑さは計算外なのだな。きっと、まだ冷房入れちゃ駄目とか、規則があるに違いない。

俺たちはアイスを買って川べりで食べることに決定。もはや、それくらいしか策は無い。

コンビニ発見。流石に涼しい。しかし、まさかココで涼むわけには行くまい。予定通りアイスを買って川にゴーだ。
さて、カキ氷系にするか、クリームにするか?少し贅沢してハーゲンダッツに手を伸ばしかけた俺に、ブルースが言う。

「お前はコレにするんだろう?」
何を言う?俺は小銭を消費してでもハーゲンダッツを喰う覚悟を決めた男。この決意を変えられるアイスなど、存在し得ないだろう。
「おい、これだよ、コレ」
まったく、しつっこいなァ…



ドワオ!!
ババヘラアイスだ〜〜〜!!!


この食べバカでもお手本の一つにしている、マンガ「駅前の歩き方」(森田信吾著)に出てくる、秋田の常食の一つだ。
「駅前の歩き方」は変わり者の作家と編集者のコンビが日本各地で取材旅行の傍ら、その土地のご馳走的な名物ではなくて、地元の人が普段食べてる当地の人には当たり前だが、しかし他では食べられない「常食」を食べてゆく物語である。
マンガに出た食べ物は、伊那のローメン、富士宮のやきそば、大泉のブラジル料理を食べに行っている。
行田のふらい、静岡のかき揚げそばはすでに別件で食べている。
しかし、このババヘラアイス。凄くうまいというわけでも無さそうだし、そのためだけに秋田まで?という感じで、今の今まで忘れていた。
そうか、これは秋田名物だったっけか?

川べりに座って、アイスをいただく。



アイスというよりもシャーベットに近い固さ。食べる前にさじで削りながら川からの風を受けると、確かに涼しい。
「ひゃあ〜ヌシだなや〜」
またもや、ツーリストハイのブルース。川にヌシがいると言い出す。
…そう、ここ横手市は釣りキチ三平の故郷として売り出しているらしい。図書館にもポスターが貼ってあったし。
釣りキチ三平の魚紳さんの大ファンであるブルースには、もうそれだけで旅気分ご満悦。
このあとも、秋田県内で川といわず海といわず、水を見ると「ヌシがいそうだぜェ」と言い続けたブルース。俺はヌシといったら沼の印象が強いんだけどね。

さて、ババヘラアイス。
「うわ、あああ甘ぁぁ」
これは、進化した今の日本人のアイス観にはすでに取り残された30年代の味だ。
確かに、コレを目的に旅するほどではない。しかし、目にしたら一度は挑戦してほしい。コレがアイスの原型なのだろう。

などということをしている間に店の開く時間。
「横手やきそば館ゆう」に開店時間ジャストに店に滑り込む俺たち。ホントはまだ準備中ぽかったんだけど、中で待たせてくれた。ありがてえ。

やきそばの大盛り2つと普通1つ頼んで待つと、カウンターの奥から、さっそくジュウジュウ炒める音ですよ。



おお、これが日本3大やきそば(俺にとって)最後の1つ横手やきそば。
つけあわせは紅生姜じゃなくて、福神漬け。そして、目玉焼きがぽっかり乗っているのが特徴。
これが横手やきそばの特徴なのだろう。目玉も黄身がレアでとってもおいしそう。
富士宮でも、駄菓子屋のおばちゃんの焼きそばはこんな感じだったなあ。



青海苔かけて、いただきます。
ソース甘めで、そばもしっとり。優しい味わいで、長旅で疲れた俺たち(特にブルース、お疲れさん)の舌と胃をやさしく労わってくれる。
ソースのとんがった感じも全然無くて、それで、驚いたことに福神漬けがよく合うよ。
カレー以外にも合う食材があったとはな。
卵は崩して、白身は具として、黄身はソースとして絡めていただきました。
最後まで、しつこくならない程度にコクが効いていて食後感がサイコーにいい。
おしいな。近県に住んでれば頻繁にくるのに。
片道8時間は、なあ…?

続いて2店目。さきほどのおんち貴族の1階の店舗ですよ。



おや、何か、張り紙が…






横手やきそばグランプリ!
そんなものが毎年開かれているとは!
なお、この食道楽駅前店が2007年のグランプリらしいですよ。



で、さっそくやきそば。今度は流石に大盛りにはしなかったけど。
福神漬け、目玉焼き、等見た目はさっきの店とほぼ一緒。やはりこれが横手やきそばスタンダードなのだな。
さて、味は?


驚くほど、さっきと違和感が無い。
甘めできつくないソース。しっとりとした麺。するすると入る感じのなんか完成された感じのやきそばだ。
本当に、コレが横手やきそばだ、と思っていいんだろうな。

ただ、ここがグランプリ店らしいけど、俺は同じ系統でほぼ同じおいしさながら、さっきの「やきそば館ゆう」のやきそばの方が好み。さっきのがコクがちょっとあって、目玉の火加減が絡めて食べるのに一番適した固さだったと思うし。

まあ、好みの問題とか、あとは本当に甲乙つけられない程度の差だしね。
グランプリベスト4に入ってない「ゆう」さんにしても、それだけの実力。この、横手市というあまり大きくない都市(失礼)の中で、それだけのやきそば層の厚さを見せるとは。
この街の人たちは本当にやきそばが好きなんだろうなあ。


さて、2食だけとはいえ、やきそばを堪能して三大やきそば制覇を達成した俺たち。
しかし、まだまだ旅は始まったばかりですよ!
次も三大だ!3つ目のうどんだ!

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