最後の焼きそば、横手焼きそばは旨かった。三大焼きそば最後のピースは、いい音を立ててカチリ、と嵌ったのである。

そして、焼きそばシティー横手から、車で30分も移動しないところに、うどんシティ湯沢があった。

果てしなき流れの果てに…俺たちはそこへ辿り着くのか?
彷徨い、流離った。思い起こされる、小麦色の風に吹かれ何処までも行ったあの日々。

最初は讃岐うどんだった。
すごい強行軍だった。今はもう、あんなことは出来ないだろう。
金曜日の夜に新宿から岡山まで深夜バスで移動し、加古川のふなっを呼び出しておいておばあちゃんカーで瀬戸大橋をくぐってからの食べまくり。なんと2日でうどん10食。もちろん、夕飯は別のもの喰って、だよ。
そして、岡山から新幹線で日曜のうちに関東に帰り着く。
すごいねえ。あの時は、宿も飛込みだったし。(カプセルサウナだったけど)

そして、あまりの旨さに当てられた俺たちはうどんに目覚めたさ。
ご当地うどんが多いので、機動力重視で俺とブルースの二人旅が圧倒的に多いが、
吉田うどん、武蔵野うどんは讃岐うどんとともに紹介しているので、みなさん読んでくれたことと思う。(讃岐は食べまくり、武蔵、吉田は新食べまくり)。
特に武蔵野うどんはブルースの地元埼玉(と東京の一部)ということもあり、また、地域が広いためにバリエーションが多いこと、なにより食べた感の強いねっとりうどんであることが俺たちの趣向とヒットして何度も喰った。そのうち日常になった…

その後は横手焼きそばの時にも書いたとおり、群馬で水沢うどんを食し、さて、これであと1つで三大うどんだなと…
いや、秋田遠いよ…のほかにもう1つ、理由があった。
実は、稲庭うどん、すでに喰ってるんですわ、俺ら。
稲庭うどんの店って、探せば関東でもあるから。
「関東の讃岐うどんは看板だけ。現地で喰わなきゃ駄目って言ってるじゃん、お前」

ええ、解ってます。解って言っています。でもね、稲庭うどんって乾麺なんですって。
手打ちじゃないんですよ。

ブルースの地元で稲庭風うどん店に入った時に聞きました。
「稲庭から取り寄せてる本物の稲庭うどんってすっげえ限られてるらしいね」
はい?うどんに本物も偽物もあるんですか?
「稲庭うどんの名前は認可制だからね。昔ながらの製法の老舗しかその名は名乗れない。需要過多で、新しい注文はほとんど受け付けてくれないから、稲庭うどんを看板に書ける店は現地でも他地方でも限られているのさ。それ以外は稲庭風うどんだな」
でも、そんな気取っても地方配送でしょ。味落ちるんじゃない?
「何言ってんだ!稲庭うどんは全部乾麺じゃないか。そう簡単に味なんか落ちないよ。製法も手延べ乾燥で、素麺と同じだ。…素麺は日保ちするだろ?」
でも、このうどん、おいしいけど、うどんというよりも素麺に近い味ですね。
「う…まあ、製法はほとんど素麺だからな。でも、それは言わない約束だ」

そんなこんなで、他地方で食べても変わらない味。だから現地まで食べに行かなくてもまあ、可。よし、俺たちは3大うどんを全部食べたことにしておくぜ。
などと稲庭にも秋田にも断り無く決めてしまったので、永らくこの三大うどんの話は出なくなっていた。
だが、秋田に行く以上は避けて通る意味もなし。
俺たちは意を決して、「どうせ乾麺だから同じ味」のものを食べに行くのだ。


まあ所謂「本舗」って奴ですよ。つまりここが老舗の味。しかしね、たまたまここが空いているときに入ったのは僥倖だった。
なんといってもココは本舗。稲庭を目指すものが日本中から集まる地に相違ないのだから。







そして、俺、天盛り。親分、ぶっかけ。そしてブルース、ぶっかけ天。

ちなみに、この注文が来るまでの間に軽く、大地が揺れている。
む!余震。…数年後、まだこのページが残っていれば、我々は2008年夏に東北で地震があったことを思い出さねばならない。しかし…
「あー、まだちょくちょく余震があるんですよ」
店の人は慣れ切ってしまい、平気の平左衛門。
まあ、そんなものだ。


そして麺だが、これが細い。確かに大き目の素麺?と思わせないことも無い。
その上、表面の滑らかさは人語に落ちない。なめらかに、すするほどに滑り込んでくる、これは。
たしかに、素麺ではない。素麺のようだが、ぎりぎりの一線で、これはうどんだ。歯応えがある、コシがある、しかし素麺のようにするりと喉に飛び込み、しかし、うどんよりも素麺よりも、表面は滑らかである。
あきらかに違う。今まで食べた何とも違う。乾麺だから東京で食べても同じなどと誰が言った!?馬鹿めッッ!!

何故だろうねえ。現地で喰うと旨いよ。
「う〜ん、水と…何よりも今回、ツユが違うね」
あーー、そうか。コレだけ細身でありながら、しっかりしたコクを供給していたのは、これはツユだ。しかし、極端な塩味や甘みは無い。そう、これは。
しょっつるだ!!
秋田名物。これがハタハタの魚醤だ。
だとしたら、もっと刺々しい極端な味を想像していた俺の予想を上回るものだ、しょっつるとは。



こうして、3大焼きそば、3大うどん、どちらも喰了したわけだが。
喰ってよかった。喰いに来て、本当に良かった。「しょせん…」などとひねていた自分達が恥ずかしいのだ。
これは、現地の力。本当に、現地で食べなければ解らない事の、いかに多いことか。
これからも、労を惜しまず出かけよう。衝動に任せ出掛けよう。

…というのが初日のあらまし。2泊旅行の一日目にこれだけの濃い出来事が。
さすが秋田。
2日目に男鹿半島まで足を伸ばしたときの記録を持って、この中編の締めとしたい。

秋田市から海岸線を通って、一路男鹿市へ。
泣く子はいねがー悪い子はいねェがーで有名な男鹿である。

「あっ!ババヘラアイス!!」
道路わきに、パラソル立ててほっかむりしたおばちゃんが座っている。これが、ぽつん、ぽつんと。
昨日、確かにコンビニでアイス自体は食った。しかし、道端でおばちゃんにヘラでかきとって貰ってこそのババヘラアイスではないか?
というわけで、無理やり車止めさせてババヘラへ。
クーラーの中のでっかいボウルに、昨日見たババヘラと同じ2色構造のアイス。これをヘラでかきとって、コーンの上にこすりつけるように盛ってくれた。
なるほど、赤と白の層を交互にこすり付けてカラフルさを出すんだね。
味は、一緒ですよ。甘〜〜い!すげえ、コンビニアイスの再現性。
そのまま、男鹿半島に突入。いろいろと食べまくりと関係ない感動が、そこにはあった…

海辺まで逆落としの断崖絶壁の上から見下ろした光景とかね。斜面にびっちりと緑でね、下が見えない恐怖ですよ。
立ち寄った水族館に白熊がいてね、屋内から見てたらそれほどでもないんだけど、建物から出て見下ろすように熊のプール見てたら、丸太を齧る音とかすごくてね、
まごうかたなく、地上最強の生物の佇まいに恐怖したよ。





昼飯は、海沿いのちっちゃなプレハブの食堂。なんてことはない海鮮丼。
この旨さは理屈ぬき。なんだかんだ言って、最大の現地力とは、海鮮。もうあまりにも問答無用。
だから、ついつい日本海側ばかり行っている最近のおれたち。


おまけ。


薄暗い居酒屋の中なので写真が悪いのはご容赦。これは初日夕飯。秋田料理を散々飲み食いしたあとの締め。

飲み屋で稲庭うどんメニューは当たり前。それが秋田スピリット。
するんと入る稲庭うどんは、最後の締めに最適でした。
本舗で喰ったときよりもさらに素麺感増加。デザート仕様にでもなっているのだろうか…うーん、ロンメル。

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