秋田はたいがいなんでも旨い。それも凝った旨さじゃない、素朴な味だ。
しかし、ただ単純に素材のよさに頼り切っているわけじゃない。奥の深さも垣間見せるぜ。

さて、秋田編もこれで完結。初日、焼きそばとうどん。二日目、男鹿の海鮮。その間にもババヘラアイスだのといろいろ常食を楽しんでしまったわけだが、もちろん夕飯にはどっしりした秋田名物もいろいろ味わったよ。

さて、男鹿の水族館で白熊を見て海岸沿いの絶景を楽しんで、ひたすら新鮮な海鮮丼を頂いたあと、しかし、残念ながら親分はココでタイムアップなのだ。
三連休の明け月曜日に仕事の入ってしまった親分。男鹿半島から帰ったその足で、今度は秋田駅から東北新幹線で無言の帰宅。…あ、いや、無言では意味が違う。無念の帰宅。
しかし、心残りはない様子。焼きそばもうどんも旨かった。飲み屋の魚も軒並み旨かった。白熊はでかかったし、海鮮は海鮮だった…
その上、大好きな新幹線で帰れる親分は晴れ晴れとした背中を俺たちに見せたさ。

思えば密度の濃い旅だ。埼玉、群馬、栃木、福島、宮城、岩手を一晩で駆け抜け、焼きそばとうどんを喰らい、地料理を喰らい、男鹿半島を一回りし、白熊と出会い、海鮮を喰らい…しかしまだ俺たちは立っている。
確かに、これでもう十分目的は果たしてあるのだ。あとはただ…のんびりと喰って、寝て、帰りの秋田、岩手、宮城、福島、栃木、群馬、埼玉の強行軍に備えるのみ。

このあと本屋に入る。ココでしか買えない本とかないかなと思ったが、出版にはそういうシステムは基本的にない。郷土史の専門書が一部書店にあるくらいで…
しかし、「超神ネイガー」のコミックスが平積み。どこでも買おうと思えば買えるだろうが、平積みはここだけ。ご当地気分に浸って、とりあえず買う。
ネイガーは現代のナマハゲとして生まれた秋田のご当地ヒーロー。ローカル番組で実写アクションもしているらしいぞ。
俺が買ったのはそのコミカライズ版。
まあ、俺たちが創作した「秩父レンジャー」「銚子レンジャー」「川越ボイジャー」「ダイナマイト侍」などと同種のヒーローだと思ってくれればそれでいい。
問題は、ネイガーも元々は同人ヒーローだったくせにやたらとカッコイイということだ。
ネットで検索すると出てくるよ。
ちなみに、日本一カッコイイ同人アクションヒーローはバトル野郎!


えー、閑話休題。マンガ読んでちょっと休んで、それでそろそろ夕飯の時間。前日はホテルから川を渡ったあたりで飲食店が固まっていることが判ったので、そこの繁華街を適当に歩いて地物の魚がいっぱい上がっていそうな店を見つけて入った。
さて、今日は、もちろん地魚が旨いのは当たり前としても、秋田料理、って感じのものを食べたいな。
看板にでっかく「秋田郷土料理の店」
あ、ベタだ。
そういえば、看板に国名や国旗のでっかく出ている店は鬼門だったはず。その解釈が、地名に広げられるとすると…
「この店、入ろうか」
ドフー!
俺らルールも何も無しなブルース。
だって、あんまり店並んでないし、時間が遅くなるとまた焦って彷徨うことになるぞ…だと?
確かにそうだ。

後日、その日のことを聞くと、どうやらブルース、もう秋田は堪能しきったからと、例えココで凡庸な観光地食に当たってしまったとしても、今日はがつがつせずに気持ちよく酔えればそれでいいじゃないかと、わりと達観状態にあったらしい。
久しぶりにお前と酒飲んで話したかったしな、と。
そういえば、このところ車移動ばかりで一緒に酒飲む機会もなかったのは確か。昨日はまだ、秋田っぽいもの食べる気満々でのんびり感が足りてなかったし。

しかし…参ったな。
この店、当たり。
すげえ秋田っぽい。その上地元っぽい。
初日から、俺にとっての当たりはいぶりがっこ。ようするに沢庵の燻製だ。


そうそう、こんな感じ。
スモークすると、ただの沢庵がコクが出て、なんか、肉でも食べているような濃厚な旨みすら錯覚する。
地物料理と言うことで、囲炉裏の上に沢庵釣るしとくだけで自然に出来るらしいね。



あんまり気に入ったので、お土産も買って帰りました。地元で食べた方が燻し度が高くて濃厚だったけど。



秋田なので比内鶏。小細工無しで、塩とレモンで焼き鳥いただきました。うめえ。
ただ単にうめえ。
そういえば、比内鶏は天然記念物で喰えないんだっけ?食べるのは、食用に飼育した比内地鶏だったかな?
まあ、とにかく、そういう名物とか喰ってるとさ、やっぱ地酒だよね。三種盛りとか、いろんな酒をいっぺんに呑ませてくれるメニューとかもあるんですよ。呑み比べ。
ビールから入ったし、最近酒飲んでないからすぐに効くようになっちゃってて、でも、それでも嬉しいじゃないですか。こういう、ウチとこの名物少しでも多く召し上がってって下さい、的なもてなし。
誰ですか、さっき、「郷土料理」をでっかく売りにしてる店は怪しいとか言った人は…俺だ!
このあと、金沢や新潟に行ったあと、ブルースが言ったものだ。
「地方都市の…駅前の郷土料理って看板出してる店。アレはいいね!ムードも飯も、その土地ならではと楽しませてくれる」
おい!裏返るの早ええッ!

と、秋田名物といえばまだ、ハタハタを食べてねえ。ここまでにハタハタから作った魚醤「しょっつる」のうまさは十二分に堪能させてもらったが、そういえばまだハタハタの身は喰ってないよな?
実は昨日、メニューにハタハタあったのだ。ハタハタ鮨。
でも、頼もうとしたらブルースが止めやんの。
「いや、寿司ってどこでも一緒じゃん。もっと新鮮で旬の焼き魚でも頼めよ」と。
まあね、まあそうなんだけど、でも、せっかく秋田じゃん。喰おうよ、ハタハタ。
今日の店でもハタハタは鮨で出ているぞ。
うん、じゃ、ハタハタ鮨1つ!
「お客さん、大丈夫ですか?これ、熟れ鮨なんですよ」
え!?握りじゃないの?
「だから、なれずし…」
ああ!もう!!熟れ鮨だって判ってたら、頼まないわけないじゃないの!昨日だって知ってたら、もう、絶対頼んだのに!もう!もう!
親分はこれを喰わずに帰って行ってしまったじゃないか…

身がとろけるほどには漬かりきってはいない半熟れくらいの鮨らしい。なんにしても、俺たち熟れ鮨好き。滋賀に鮒鮨喰いに行って、鮒よりうまい鯖の熟れ鮨喰って以来、その情熱はとどまらなくなった。
その土地の代表的な魚が熟れて出てくるのなら、これほどの喜びはないではないか。



その前に、やってきましたきりたんぽ。これも、いわずと知れた秋田名物だよね。
ただ、俺、実はきりたんぽ鍋ってあんまり好きではない。鍋に溶け出した米のどろっと感がちょっと違う感じなんだよねえ。
と言ったらブルースが反論。あのどろっとがいいんじゃねえか。
なんにせよだ、この焼ききりたんぽは文句なくうまいということだ。
タレが甘いんだけど、香ばしいからキレがいいんだよねえ。
そして、とにかく米が旨いからそのまま焼いて食べて、旨くないわけはないんだよねえ。
ああ、秋に来ればもっと旨いんだろうなあ。こんなに遠くなければ、また冬に来て、今度は比内地鶏ときりたんぽの鍋、文句言わず食べるよ。もちろん、味付けはしょっつるだよ。
そう思うだろ、あんたも…



と、ここで来たぜ。
これが日本食文化の精髄。一方の極。熟れ鮨だ。
米や麹で(時に糠なども)魚を漬け込み、発酵させてアミノ酸分解の旨みべろべろ状態に仕立て上げる、動物性蛋白の旨みの濃縮食だ。
実際、これがなければ生ハムを擁するヨーロッパの文化に、俺は逆らえないだろう。
肉の旨みの極?だがこちらには…魚があるぜ!
ってな感じで。

能書きはコレくらいで、さてハタハタ鮨。
ん、まだ身が硬さを保っていて、歯応えがある。酸味も、鮒鮨みたいにつーんとくる感じじゃなくて、丁度ままかりくらいの適度な酸味。
しかし、ハタハタの淡白な旨みが、熟成されてしっかりと蛋白な旨みに変わっているぜ。
そして、当たり前だが、さっき頼んでおいた地酒3種セットがここで映える。
実によくあう。熟れ鮨には土地の酒。これ、日本海岸の常識。
それにしても、ハタハタの上品さを昇華した、きつくない、しかし十分濃厚な旨み。
なるほど、ここから抽出されるしょっつるが旨いわけだ。これはいい。

ああ、ごめん親分。
だってわるいのはぶるー…

この辺りからね、結構ほろほろ酔いでテンションが波打っちゃってました。


だってさ、なんだこれ頼んだかわからないじゃない。
これ、だって、バクダンだよ。彦根の飲み屋で同席したおっちゃんが、「ココでしか喰えんからな。こりゃあ…夜、眠れンでェ〜」とか言いながら5個も6個も注文してくれたバクダンじゃないですか。
なぜ、秋田に。彦根でしか食えないものが…
知るか!ただのにんにく丸揚げじゃねーかッ!

まあなんいせよ、こうして秋田最後の夜も大満足のハイテンションで過ぎて行ったのでした……

となれば、とーぜん締めはこれッッ!





またかよ、とかゆうなよ。

旨かったんだよ、やっぱり。

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