新潟へ行く。
これはまあ、結構行っているのだ。なにしろ、米が旨い。魚が旨い。
おまけに、我々のちょっと遠出は、ブルース車で行くことが多いので、埼玉在住のブルース宅近くで集合して関越道を使うと、これで新潟、案外近い。

親分とブルースでも去年ちょくちょく行ってたらしいし、ずっと前に柏崎のトルコ村にみんなで行って、サバサンド喰ったのもいい思い出であろう。

そんな新潟。素敵な新潟。今回は長岡に行ってみる。特にこれといった目的はないが、それでもいい。新潟は裏切らない。
まあつまり、恒例、新潟に旨い魚を食いに行こう!の旅である。
夏の新潟、秋の銚子(さんま)、冬の大洗(あんこう)は、もはや問答無用の恒例行事と化しているのだ。

そんな中、出発1週間前からブルースが言うところには、長岡市のいわゆる名物料理ではない地元食。…つまり我々が常食と呼んでいるヤツだが、そういうものの噂をネットで見つけてきたという。
ほほう。
しかして、その食い物の名は?
「名づけて、“イタリアン”」
…はいはい、解ります。以前も群馬県大泉町(現太田市)まで行ってブラジル料理食べてきましたよね。あの街はブラジル人労働者が多くて、町中のショッピングセンターや飯屋が完全にブラジル直輸入的で…ははあ、なるほど。今度は本場イタリア料理ですか。イタリア人がブラジルほど大挙して日本に出稼ぎに来るとは思えませんが、なにかそういう村おこし的な…なんと言っても新潟は、今は無きトルコ村を擁していた県。今更イタリアがあっても驚くには当たりません。
なんせ、海産物が旨い。イタリアやギリシャのような海鮮の多い洋食は、意外とこういう街に土着するといいのかもしれませんね…

え?焼きそば?
…それって、中華じゃ…
ああ、ソース焼きそばね。それなら日本独自の料理ですよね。まあ、こないだだって、ついに日本三大やきそばを完食してしまった俺ですよ。焼きそばのことならいつでも…じゃなくて、イタリアンの話でしょ。焼きそばはおいといて。

話が噛み合わないので、じゃあ行ってみて喰ってみましょうかということに。
百聞は一見にしかず。百見は一食にしかずの食べまくりバカですから、俺ら。
しかし、新潟はやっぱり米と魚を喰うところという印象が強い。ついでに、町中に「イタリアン」て文字があったら反応しましょ。たまたま胃袋が臨戦態勢だったら対応しましょ。
そんな感じで地魚を食べる話をしているうちに…俺たちはイタリアンのことを忘れて行った…


結果から言うと、今回の新潟旅行もおいしかった。
宿泊した長岡市の名物にお麩がある。ホテル近くの飲み屋は手羽先名物のお店らしいが、そこで喰った車麩の揚げ浸しを是非とも紹介しておきたい。



バラ肉の角煮ではありませんぞ。お麩ですよ、お麩。
しかし、植物性たんぱく質の旨みがぎっちり濃縮されてしっかり作られたお麩料理。その旨みは動物性たんぱくにだって引けを取るものじゃあありません。
参ったなあ。この歯応え、この、口中に広がる出汁と油と麩エキス。…一度食べられたし。


また、2日目には漁港にも行ったのですよ。ブルースと親分は去年にも行ったところ。
二人ともすっかりガイド気取りですよ。
そんなこんなで、市場の上の飯屋で昼飯ですよ。
もういいでしょ。問答無用ですよ。



だってあなた、刺身と煮魚と焼き魚と浜汁ですよ。それが日本海岸の、漁港の、市場の上の飯屋ですよ。
その上飯ですよ。だってここは新潟ですよ?
もちろんおかわりしました。旨いです。でも、まだ夏ですよ?それでもこんだけ旨いんだから、もうね、秋に行ったらどうなるのかと?さて、どうするのか!と。



…と、まあ、いつもどおりの新潟旅行。いつもどおりということは、とっても大満足の新潟旅行と言うことですよ。
ほかにも、青々とした田んぼの間を走るたびに、興奮しだすブルースに釣られて、3人でハイテンションで大騒ぎ。俺らの日本人としてのアイデンティティはやっぱり米にあるんだなあと、毎回毎回認識しなおしたり。
埼玉から近いと言いながら、前日深夜に出発したら早く着きすぎて、途中で仮眠とってもまだ店が開いていなくて、道の駅にいったらまだ開いていなくて大騒ぎとか。

そんなどうでもいいが、心に残る旅の思い出の最後に、話は前後しますが初日の昼飯の話でもしますかな?

しっかりした名物も喰えないまま長岡市まで辿り着いた我々。
「ほれ、あれがあっただろ、俺が調べた…確か、イタリアン」
ここでそれか!
携帯で検索すると、これが意外とヒットする。え、こんなに?ってくらい。

「喫茶フレンド…おや、この店何箇所もあるな。チェーンか?とりあえず、最寄の店はここらへんにあるはず」
すぐに見つかるが、如何にも小さい店。交差点にぽつんと。
中は、喫茶店と言うかむしろファーストフード店だ。カウンターの向こうで鉄板焼きしているのが見える。
狭い店内で、スタンド席がほとんど。
喫茶店の長いの雰囲気じゃねーの。
「イタリアン、カレーイタリアン、餃子、チョコレートサンデー」
突っ込みどころ満載の壁メニュー。おまけにセルフ。
え、餃子?
まずそこで驚くので、次に突っ込むタイミングを取りにくいが、なんなのよ、カレーイタリアンって!?

しかし、親分とブルースは早々にイタリアンを頼んでしまうので、俺は、ここま、カレーイタリアンを食べるしかないじゃないか。

しかしね、店内に人はいないよ。昼時なのに。店員は3人もいるよ。
大丈夫かいな?
と思ったらすぐに謎は解けた。
「イタリアン3つと餃子頼んでたんだけど」
子連れのお母さんが入ってくると、商品を持ってすぐ退店。なんと、この店はテイクアウト主体。次々来るテイクアウト客に、カウンター裏のお姉ちゃんがもりもりと焼きそばを炒めている。
豪快。

そして、客のほとんどがサイドディッシュの餃子を頼んでいく。
イタリアンと、餃子。それがここではスタンダード。「ラーメンと餃子」くらい当たり前。

さて、そんなこんなで注文品が来る。

これがイタリアン



焼きそばにミートソースがかかっている。
ただ、それだけ。

そして、カレーイタリアン



こっちなんか、カレーがかかっているだけだ!!

そして、味か?味は、「ソースやきそばにカレーがかかっている味」だッッ!
まんまだよ。
そっちのイタリアンは?
「ソースやきそばにミートソースがかかっている味だよ」
……やっぱり。

誤解せぬように。
旨いよ、これ。ちゃんと、ソースとそばが合うように庁舎の味の調整はきちんとしていると思う。
発想の転換だが、旨く融合した。そして、あちこちにチェーン展開してご近所の人が買いに来る店になっている。きっと飽きの来ないおいしさなのであろう。
俺たちも、スナック感覚で最後までおいしくいただけた。
肩肘張らない地元の味。これぞ本物の常食だよ。

しかし、一言言わせてもらうぞ。
焼きそばにミートソースかけてイタリアンと言う名前。まあ、いいだろう。
ミートソースは元々イタリア料理だ。たっぷりトマトを使った、マンマミーヤの味だ。
けどな、そこからミートソースを抜いてカレーソースをかけたら…丸々どこにも、イタリアが残ってねえ!
全くねえ!!
インディアンじゃねーのか!!

そして、食べ終わってホテルへ向かう途上。いくつも見かける「喫茶フレンド」
どこもかしこもイタリアン。テイクアウトで、ご家庭で…

長岡で小腹が好いたらフレンドでイタリアン。お試しアレ。

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