群馬!群馬!ぐんぐん群馬!

と、言うわけで、行って来ました、また群馬。
以前、食べバカで敢行した、群馬強行軍
このうちの、太田やきそばの項でいきなり酷いこと書いてますな、俺。
「失敗」だって。

いろいろあって、ついに日本三大やきそばを一通り食べた俺たちの感想。
富士宮やきそば…大絶賛  横手やきそば…大いに満足
しかしながら、もう一つの太田やきそばにのみ、「行って失敗」の烙印!…たしかに酷い。だって、2食しか喰って無いんだよ?太田やきそば全体を語るには早計でねーのかと言われたら、確かに否定はできない。

しかし、ただ単にやきそばだけのために行くには、もう太田やきそばにはそれほどの求心力を感じぬ俺たち。無理やりにもう一つの目的をひねり出した。
「太田天神山古墳」
太田市にある、関東有数の前方後円墳だという。これならば、古代史好きの俺、モニュメント好きのブルースにとって、共通のモチベーションたり得る。
よし、心の準備は整った。さあ行かん、ぐんぐん群馬へ!!

…しかし、いきなり挫折。
群馬へ入る前にすでに脱落。
太田市へ入る前に、埼玉県内でうどんの魔力に負けた。
めぬま道の駅に何気なく立ち寄った俺たちは「山菜肉汁つけうどん」の看板のまえに平伏した…思う存分太田やきそばを喰いまくろうと空けておいた胃袋の最初のスペースを、うどんに明け渡してしまったのだ!!
なんという裏切り。



しかし、後悔は無い。写真を見てもらえれば解ると思うが、
だって、うどん、おいしかったんだもの。

上品な白い色のうどんではあったが、この粘りと小麦粉感はまさに武蔵野うどんのもの。山菜の風味もいいし。
いわゆる新鮮な発見とかそういうのは無かったわけだが、しかし、旨いは正義。問答無用なのだ。

まあ、気を取り直してとにかく太田市に行かん。順番は変わったが、古墳でも見ていれば腹も減るだろう。



天神山古墳はたしかに大きかった…

国道を挟んで斜向かいに、二回りほど小さな帆立貝式古墳の女体山。そして、こちら、写真のは前方後円墳の天神山古墳。
せっかくコレだけの遺跡が揃っていながら、しかし、見学者を呼び寄せるための設備は看板が一枚きり。
駐車場も無いし、女体山古墳は田んぼの真ん中にぽつんと浮かんでいるだけだし、この本命天神山古墳ですら、道路脇に野ざらしというか、入り口も何もなし。野ッ原の真ん中に草木が茫々で手入れなし。俯瞰しても山にしか見えんし、中に入っても壊れかけた社と鳥居があるだけの、ただの森。
「群馬県の教育委員会は何やっとるかァーッ!!」
議員どもも道路ばっかり作る金があれば、文化遺産の保護啓蒙にそのホンの一部でも回してみせい、とブルースが吠えた。
最近コイツ怒ってばかりだな。
でも、そうなのだ。コイツの地元埼玉でのさきたま古墳群の見事な整備状況と較べると、ここ群馬はお粗末に過ぎる。
俺の地元川崎ですら、加瀬山の遺跡などはそれを含んだ公園にして動物園などの施設とともに保護に努めている。
遺跡を子供に見せる努力をしない行政はだめだ。

また、群馬の印象が悪くなった。
今日、本当に俺たちは太田やきそばを見直すことができるのだろうか?

旅は続きます。


というか、このあとゲームセンターでバーチャファイターをやっているうちにもう夕飯の時間になっていたことにお気づきだろうか?
いや、俺たちがね。
ブルースのここ数年のもう一つの旅テーマ「日本全国VIRTUA行脚」(カード登録されたバーチャファイターのプレイ記録はオンラインに残るのだ。彼は日本中にそのプレイ記録を残したいらしい)
久しぶりに、地元のプレイヤーと清々しい勝負をとおして交流できたブルース。その群馬印象がちょっとだけ上向いたところで、いつもの、ヤツ特有のバクダン宣言。
「あのさ、もう、やきそばはいいよな?」
何を言う?貴様がやきそばに復権の機会を、と言うから来たんじゃあないか!うどんの魔力に負けた罪は俺も共犯としても、あと2食くらいは喰ってやってもいいだろ?太田の名誉の為に。
「ふふふ…お前、アレを見ても、まだそんなことが言えるのかな…」
アレ?…アレとは?アレとはなんだ?
持ったいぶったブルースの指す先は、ああ、アレは…緑と黄色!

ブラジルの旗だ!



気が付いたら、ゲーセンのとおりの反対側にあるドンキホーテに入っていた。
その2回にあるブラジルレストラン「ブラジリアン」に入っていた。
メニューのマスコットキャラ、牛君はかわいらしく俺たちを迎えてくれる。

「でもな、裏はこんなにリアル、だぜ〜」


おわ、シュール。
擬人化されて、手に牛肉料理持った可愛らしい牛の絵も良く考えるとグロだが、それをわざわざ再確認させてくれる牛の解体見本図も、俺には素敵。食欲湧いて来たぜ〜!

ところで、何故、俺たちは太田市でブラジルを食べているのか?前回の群馬強行軍の締めをとったブラジル料理は群馬県大泉町。そこに作られた日系ブラジル人のコミュニティのなかで、俺たちは本場のブラジルを堪能したものと記憶しているが。
「大泉は太田市に合併吸収されたのさ」
なにッ?するとブルースよ、お前は知っていたのだな。もはや太田の名物はやきそばでは無いと!ブラジルであると!?
「いいやァ……そおんなことァねえぜ。ただ、この店が、本場のシュラスコやってるってことをちょいと、な。この地獄耳が挟んで来ちまってた、とただそれだけのことさァ」
なに、シュラスコ?
う〜ん、悩むなあ。俺、前回の旅でフェイジョアーダのファンになっちまったんだよ。でも、本場っぽいシュラスコも食べたい。なんせ、名物だからな。
「そんなアナタに朗報でーす。この店のメニューは、ただ二つ。肉なし食べ放題…980円。肉あり食べ放題…2980円。そして満腹感、プライスレス」
そうか、つまりこの店は客を痩せたまま帰すなんて恥だと考えている一味の仲間だと言うことなんだな。
いいだろう、見せてやろう、デブの心意気。教えてやるさ、肉好きの魂を!!



フェイジョアーダは豆の煮込み。ブラジルの代表的な家庭料理だ。これを米にかけて喰うと旨いぞ。
しかし、このフェイジョアーダ、肉をぶち込むと豆や米のさっぱり感では決して拭いきれないほどのしつこさを有するようになる。
いや、そうなるまであえて肉をぶち込み続けることこそがブラジルの流儀。肉も、牛も豚もモツも腸詰も、相性気にせずガンガン叩き込む。遠慮などしたらブラジルとは言えねえ!…そんな作り手の思惑が脂に姿を変えてたっぷりと溶け込んでいる。それがフェイジョアーダだ。
自由にお取り下さいの鍋には、もう、匂いで解る。さっぱり豆煮込みの茶色いフェイジョアーダ、こってり肉豆、黒いフェイジョアーダが、二つの鍋が覇を競っている。
この主食を足がかりに肉食べ放題を攻略するには、もちろん、さっぱり豆を取るべきだ。
しかし、
「おまえ、ホントに肉煮込みの方取って来たの?」
俺の皿を見てびっくりするブルース。ちゃっかりヤツは茶色い豆だ。
「だってよ、しょうがないじゃん。旨そうな煮込みの味なんだよ?」
「お前、これから来る肉の攻勢に備える気が無いのかよ!肉を大事にしない奴なんか大嫌いだ!」
まあ、確かに。肉は“命”と読み替えることも可能だもんな。でも、
俺は焼かれた肉も煮込まれた肉も、俺は等しく愛したいだけなんだ。
肉が好きなんだ!
大好きなんだもん

まあまあ、赤カブの漬物や野菜の煮たのも取って来たから、コレで何とかなるよ。

それにしても、隣の席でさっきから皿山盛りの米とフェイジョアーダぶっかけを何倍もおかわりしているブラジル人コンビがすげえ。
おそらく、980円で今日の夕食を済ますけど、胃袋に節約は感じさせないぜ!という信念で行っているんだろう。
さすが、ブラジル人はすげえ。
と、いうか、
ひょっとして回り全部ブラジル人?

日系で血筋的にはほぼ純粋な日本人、なんて人も多いからブラジル人を見分けるのは困難な場合が多いけど、実際、周りにはもろモンゴロイド顔も多いけど、
けど騙されねーぞ。
お前らみんなブラジル人だろ?
そんなに喰う日本人はいねえ。

奥の席の集団なんか、皿にはさっきの節約ブラジリアン並の山盛りしながら、それでも肉待ってるっぽいもの。

だって、それは女もだぜ?男も女も無く、全員が確実に俺以上のペースで肉喰ってるんだぜ。
うわあ、ここ、食べまくりバカの吹きだまり。
居心地いいのか悪いのか?


とか言ってるうちに、ついに肉の巡回が始まった、ぜ〜!


まずは串焼きの兄ちゃんが俺たちのテーブルに回ってきた。
あれ、日本語通じない?
ええい、別に必要ねえよ。にっこり笑って串に刺さった鶏を指す兄ちゃん。思いっきり首肯しながら皿を差し出す俺ら。
だって、それだけで十分じゃあないか!

おお、ジューシー。



次は、ワゴンが来ましたよ。盆の上にはグリルされた豚ロースだ。
何故なんだろう。何故俺たちは肉の塊を見るとこんなに心躍るんだろう?
包丁とトングを構えたおっちゃん。もちろん喰うんだろう、てな殺意のこもった満面の笑みが嬉しい。
ああ、もちろん喰うさ。



おお、香ばしい。
脂分の少ないおとなしい味だが、この、均一に火が通っていながら、それでも断面、ほんのり、ホントほんのーり桜色。豚の赤みを旨く喰う、この絶妙の焼き加減。
最初の印象を覆し、やはりブラジル、大雑把ではない。

次は豚腿だな。串に刺した塊を誇示しながらゆっくりと迫り来る。
はやく、早く来い。それも、これも、喰いたいよ。
しかし、さっきとは違う。俺たちにトングを持つことを強要するのだ。ゼスチャーと片言の日本語で。
あんた、客にこんなもの持たせてどーすんの?



あ〜〜!!こういうことかあ。
嬉しい〜。楽しい〜。なんか知らんが盛り上がってきた。なんだ、この高揚感。ただ肉を喰っているだけなのに…
うむ、腿肉は脂が口で跳ねて、こりゃたまらん。
こんな食べ方してたら、最後まで持たないかも知れんが…ええい、後先考えるならシュラスコなんか頼んでねえ。
矢でも鉄砲でも持ってきやがれ!!…でも、その前に牛でも豚でも鶏でもなんでも持って来てから、な。

と、ここで米が尽きた。おかわりを取りに行かねば。だって俺、お米の国の人だから。お米が無いと満足に肉も喰えない体だから……
「ちょっとまて、お前、まだおかず食べる気でいるの?」
大丈夫だ!
「大丈夫って、お前……」
だってほら、次は肉が煮込んでない豆だけのフェイジョアーダだもの。これで口の中をさっぱりさせて、肉を喰う!
「と、飛ばしてやがる……」


おお、次も串だ。これが串から取り外したベーコン巻き。一体いつの時代の誰なんだろうな?肉で肉を巻くなんて考えた野郎は?
旨いよ、コレ。中挽肉だから、噛み占めるとジュワーッと来る。ベーコンの脂も一緒に来る。これは痺れる。とにかく来る。
しかし、そろそろブルースがグロッキー気味。回ってきた兄さんに、半ば謝るようにしてこれを辞退する。
勿体無いよ、ブルースさん。この肉、アナタの好きな肉汁大王なのに!
MOTTAINAIですよ!



次も串焼き。しかし、近くで見ると、なんと骨付き。これは、これは、スペアリブ様ではありませんか。お久しぶり。
なんといっても、肉は骨の周りが一番旨い。歯でこそぎ落とすように骨にこびりついた筋のところまで食べるといいですよ。これが正式なマナー。少なくとも俺の肉憲法の中では。
と、いつの間にかブルースが齧っている。
もちろん、正式なマナーで。
流石、我が食友。骨付き肉を見過ごすほどの鈍ではない。



しかし、復活の兆しを見せたブルースも、次の串でついにダウン。

ええ、串とはいえ塊肉です。ベーコンとタマネギでサンド。見事にバーべキュウ風ですね。
救いと言えば、脂身が無いこと。牛の腿の赤身でしょうか。しかし、じっくり噛み締めるごとに肉の旨みが広がります。
確かに、肉に食傷になったブルースはこれは喰わない方がいい。ある意味、この味は「肉の権化」だから。

とは言え、俺もそろそろ肉の濃さにやられ始めた。
ここで小休止して……



「バカ野郎〜〜〜!!お、お前……ここで死ぬ気か?」
大げさな。
甘いものは別腹という言葉を知らないのか?
隣の席の、俺よりも肉を喰う日系ブラジル人っぽいお姉さんが旨そうにもりもり喰っていたデザートを、俺も取って来た、ただそれだけ。
なのに……
「ブラジル人と付き合いのある俺は知っているぞ。そのデザートは……」
うわッ!何コレ!
「な、ベタ甘だろ?」

甘いプリン。さらに、甘いプリンに甘いゼリーを絡めたプルプルデザート。この甘さ、、、
「効く〜〜」

砂糖が甘みをリセットした。まだ、もうちょっとだけ続けられそうなんじゃよ。
「俺、今日ちょっとお前を尊敬したわ」



そして、ブルースが最後に求めたものはパイナップルであった。
焼きパイナップル。
ああ、これは良いね。真剣に、これは肉の脂を中和してくれる。



果物の福音でリタイアしたブルースの見守る中、俺だけのラストバトル。
まず、ハツ。
脂っぽい肉をパスしたあとやってきた、このこりこりしてさっぱりして滋養たっぷりの内臓肉をいただくことに。
素晴らしい後味。くどすぎた肉バトルの最後を占めるに相応しい、命そのものの象徴、心臓。
俺は命を食べた。それが肉を食べると言うこと。
ガツガツ食べた。しかし、おろそかに食べたものは一つも無い。それには自信がある。ブルースもそうだ。
無理に詰め込んだんじゃない。おいしいから食べたんだ。最後までおいしく食べたんだ。
それを、最後に感じさせてくれる命の味。それが、ハツ。

「そうだな、俺たちはこの店で素晴らしいものをもらった。腹は苦しいが、心は澄み渡っている。……さあ、帰ろうか、もういいだろう?」


いいや……
まだだ!
俺はまだ、アレを喰っちゃいねえ!

イチボー。最後は肉の塊で締めるって、最初ッから決めていたんだ!

牛の尻の肉。俺の大好物。コレが、肉の塊の魅力。
塊を切り分けるおじさんに、俺はあくまで自分の性分を主張。
ココだ。ココを切ってくれ。

「おい、そこ、うわっまだ行くか……すげえ脂!」



どど〜〜ん。

これぞ、肉。
あの日から、おれのPCのデスクトップはずっとこの写真。
脂、ジュワー。
肉汁、ジュワワー
やっぱり、なんだかんだ言ってもレアが好き。大好き。
生よりも、ウェルダンよりも、そこそこに熱が通って、でも火が全然通りきっていないこの焼き加減が大好き。
肉汁、ジュワーーー
ああ、もう、この肉が大好き。
塊で焼いてから切らないと、それも焼き立てを切りまくらないと、これは味わえない。こういうときしか喰えない。これが、これこそが、肉。
みんなも肉喰おう。たまには我を忘れて肉喰おう。
肉は命。肉は栄養。肉は力の源。でも……
最後にはそんなことも忘れて肉喰おう。

だって、肉はこんなにおいしいから。

戻る