UMA(Unidentified Mysterious Animal)つまり未確認生命体とでも訳すべきか。
ネッシーやビッグフットの例を挙げるまでもなく、人類は未知の生物に対する好奇心を募らせてきた。
人類全体は言い過ぎだが、知性を建設的なことよりもアホらしいことに使う時にこそ惜しみない情熱を注ぐ一部のバカものたち、つまり俺や諸君らのような人間たちにとって、UMAはロマンそのものであったといえよう。
しかし、ここは食べバカである。旨ければ親兄弟でも喰ってしまおうという食べバカの記録である。
宣言しよう。これから俺は、UMAの、肉を、喰う!
ネッシーでもイエティでもない。俺がこれから喰う動物、それは

エクゥウス・カバッルス
である。

今回はブルースは登場しない。ブルースファン諸氏には伏してお詫びしよう。
今回の冒険の相棒は肉弾頭の姉である。
俺が渋谷でしか公開されていないインドネシア製アクション映画を見に行く途上で、姉の電話を受けたのが始まりだ。
耳を疑う一言。
「これからUMAの肉を喰わないか」
いや、これから映画だから……
「よし、終わったら帰って来い」
帰って、て何処へ?
なんと、UMAを喰わせるみせ「一心」は川崎駅徒歩1分のところに実在した。
そんな!?超地元じゃん!



細かいことは置いておいて、刺身盛り合わせから物語は始まる。
これは5種盛り。
定番のロース以外にハツ、レバなども刺身で食べやすく出来ている。
薬味も、ショウガ、ニンニク、ワサビと好きなものとあわせられるように種類豊富。どれも歯切れがよくねっとりした食感で旨い。
最近、生肉を無駄に規制する法律が増え、生肉喰いとしてはつらい限りだが、UMA肉は官憲の規制の手を逃れ、生肉の代名詞としてますます活躍の場を与えられているのは不幸中の幸い。
乾杯のときに焼酎を一杯頼んだあとはすぐ、擬態をかなぐり捨てて正体を現し、大盛りライスをいただいているわけだが、刺身は白飯に合うねえ。
どんどんと進んだ。



ここで、今回の目玉。
「レバテキ」である。
実は、これが紹介したくって、正式な協会認証を受けていない今回の非公式の食べバカを敢えて追記することにしたのだ。
つまりこれ、実にUMA臭い。そして、とてつもなくレバ臭いのだ。
ついさっき、レバ刺しを喰った。それと同じ肉であろう。そして、「テキ」(テキはステーキのテキ)の名に反して、ほとんど火を通していない。表面をカリッ焙っただけのタタキ状態である。これが、
生の時には発していなかったUMAの風味、レバの風味をふんだんに発散しているのだ。
UMA嫌い、レバ嫌いにとってこれは攻撃と呼べる臭さである。
ほんのちょっと焙っただけで、風味は数倍になる。それは、生でも、完全に火を通しきったウェルダンでも味わえないその素材の本来の匂い。
生きている時にはきっと、こんな匂いだったのだろう。
俺は、UMAの生き胆を喰らっているのだ……
という感慨に浸っている間にもオカズは進むし飯も捗る。あちこちで酒のおかわりが連呼される店内で、何種類もの酒と焼酎(おもに九州地方の)を揃えているこの店で、俺は目立っているだろうか。
「すんません、大盛りご飯おかわりで」



まあ、次に来たのはおつまみである。流石に飯でなく、まだ余っていた芋焼酎でいただく。
よく解らないので「一番臭い焼酎を」と頼んで店員さんに選んでいただいた焼酎だ。
臭いので、いままでの肉弾頭エフェクトと同じく、『却って飲みやすい』
サラミにスモークタン、そして左は動脈のこりこりした、もちろん全てUMAの肉だ。
まあ、多少の臭みはあるが、普通に旨いおつまみである。これなら特にUMAということもなく普通の人でも楽しめるのではないか?
と、いったところでおかわりが来た。
いや、丼飯ではない。第一、一杯目のドンブリは下げられていない。なぜなら、


おひつだ〜〜〜〜!!
漆塗りのおひつとしゃもじが出てきたのだ。
おまえデブだから、好きなだけ自分でよそって食べろよ、ということ?
持ってきた店員がにやついているのはそういうこと?

お心遣い、感謝します。
正直、負けた気分。
やるぜ、この店。地元だし、何度でも来るよ、レバテキ喰いに。



最後にごく普通でありながら、とてもおいしかった霜降り馬刺しを盛り合わせでなく単品で注文したら、自然石の上に盛られてきた。
これ、素手で割れってこと?

というわけで、UMA料理一心。また来るよ。


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