第14話「最後の男!!」

 焼け焦げた鉄の臭いと、むせかえる血の瘴気。
 俺は暗黒の淵にいた。平たく言えば死にかけていたのだ。
 警察庁の切り札、重装特務機動隊第七小隊は、まったく相手にもされずに敗れ去った。
 俺たちは、負けたのだ!!
 首から下は生きてるのか死んでるのかも判らない。視覚も8割は死んでいる。辛うじて機能している聴覚が、また仲間の断末魔の声を拾った。
 もう充分だ!耳なんて聞こえなくていい!静かに死なせてくれるだけでいい。友の阿鼻叫喚を聞かされつづける以上の地獄など、あの世にはないだろう。
 だが、聞きつづけなけりゃあいけないらしい。鉄の潰れ、割れていく音、そして中身の肉体が肉片に変わる音だ。
 ちッ!俺の名だ。よりによって末期の悲鳴で俺を呼ぶな!一度呼ばれたら、俺は立たなきゃいけないだろう。
 例え立ちあがる力を100%失っていようが、例え生き残ることを諦めていようが、それでも生きてる限りは立ち上がらなきゃいけなくなっちまっただろ。
 友に助けを呼ばれたら、立ちあがらなくちゃ男じゃ無くなっちまうだろう。
 そして俺は立った。なあんだ、立てるじゃねえか。くそ。
「俺はもうだめだ〜。お前だけでも逃げろ〜〜」
 何てこった!小隊長が敵の足にしがみついて叫んでる!
 泣かせやがるぜ。せっかく立ちあがれたってのに、俺は逃げの選択肢すら失くしちまった。
 あんたが仲間のために死ぬというのなら、俺は正義のために死のう。
「だが、ただでは死なん!!」
 左手は、バルカン砲の気が済むままに弾丸を弾かせ続けた。どうせ、俺もコイツも最期だ。残り弾なんてあったら、心残りで死ぬこともできないだろう。
 くそ、ダメだコリャ。当たらねェんならともかく、当たってるのにビクとも言わねェよ。
 判ってるさ。こいつで倒せるんなら、俺達の第七機兵隊は負けたりしない。13人全員が一編に殉職するワケがない。
 無駄だ。
 こんなのは無駄でしかない。
 だけど・・・くそっ!涙が出てきやがった。他にナニやっていいのか思いつけないんだよ!
 
 夢か現か幻か?燃え盛る業火を身に纏った、4人の戦士が事も無げにテロリズムマシンを破壊していく。
 第七機兵隊の無敵の機動装甲さえ握りつぶしたアームが、日本刀の一閃でなぎ払われた。
 重火器にも持ちこたえた装甲が、蹴り破られた。
 機兵隊副隊長の捨て身の体当たりにもビクともしなかった超重量級のボディが、素手でひっくり返された。
 なんなんだ、なんなんだ、こいつら!
 紅蓮の炎が突進し、パンチの一撃でマシンを破壊した!!

 くそっ!破壊力だ!破壊力が違いすぎる・・・
 俺達にも、この力があれば、一人も死なずに済んだものを・・・
 くそっ!!


 法務大臣亜門昭介の執務室。
 あれッ!?神博士だ!何故こんなところに?まさか・・・
「失態だぞ、神博士。キミの自信作だったSG-05は、不完全な無敵戦隊にすら勝てなかったのだぞ」
「第七機兵隊を倒した実力をお忘れかな?まだまだ、SGシリーズは強くなりますよ。アナタの協力次第でね」

 屋根裏に潜む流北斗。
「やはりな・・・、現職大臣が絡んでやがったか」
 その顔に僅かに笑みが浮かぶ。ピンチになると騒ぎ出す、スリルジャンキーの血が全身を駆け巡った。
「む!殺気!」

「あなたは忘れているようだ。虎の子の第七機兵隊を失った今、私の兵力にどう対抗する気なのかな」
「なにッ!貴様それが狙いで・・・」
「野望を気づかれたのなら、リーダーの首だけすげ替えればよかった。第七機兵隊そのものを実験の生贄に差し出すことは無かったものを、な」
「は、謀りおったな〜〜〜!!  はッ!?」
 亜門と神の頭上で爆発音!
 天井が破裂して・・・深紫の炎を纏い、ファイアーフラッシュ!見ッッ参ッ!
 そして、同じく天井をブチ破って金色の矢がフラッシュを襲う。
 そう、金狼だ!13人衆唯一の生き残り、金狼がフラッシュともつれ合って、10階の窓から外へ飛び出した!!
 空中で激しい攻防があり、2人は受身を取り損ねて立ち上げれない。
 取り囲むロボット兵士軍団。
「余計なことはするなッッ!コイツだけは、俺が倒す」
 金狼の静止などで動きを止めるロボ軍団ではない!
 危うし、ファイアーフラッシュ!危うし、流北斗!
 ドガーン!
 闇からの砲弾が、ロボ軍団を蹴散らす!  地の底から響き渡るようなエンジンの重低音が、そいつの到来を告げた〜〜〜
「な、何者・・・」
「まさか・・・奴らは全滅したはず」
 漆黒のボディの重装バイク。同色のフルフェイスヘルメットの下から名乗りを上げる。
「俺は・・・第七機兵隊!」

以下、次週。

第15話「男の花道は死に場所じゃないッ!」

「て・・・転身できねェーーッ!」
悲鳴のような叫び声を上げながら、天空へ跳ね上げられる雷城太郎。満開のサクラの木の枝に引っかかったままノックアウトだ。
 アッパーの体勢のまま零下100℃の笑みを浮かべるフードマントの男。お前は何者だ!?
「お前のハートはアツ過ぎる。戦時ならイザ知らず、平時に熱気は国のためにならん・・・・・・ムダな炎は、この拳に賭けて掻き消そう」
 2メートルを超える体躯。アッパー一振りで人間を5メートルも吹き上げる迫力。
 コイツは誰だ!?何者なんだ!?・・・・・・いいや、何者だっていい。
 腰を落して、両手を広げた轟太志の意図は明々白々だ。タックル!
「ここは、俺が引き受けた」
 上目に見据えた視線を相手から切らずに、背後の豪徳晶に叫んだ。だから、先に北斗を助けに行け、と。そう言うまでもなく、晶は動き出していた。無敵戦隊は躊躇などしない。
「いい度胸だ。転身もせずに、たった一人で・・・・・・この、武装刑事である私と!!」
 マントを剥ぎ取った下から、鋼鉄の皮膚が現れる。胸の桜の代紋の中央でファイアーエンジンそっくりのマシンが高速回転していた。しかし、そう、逆回転なのだ!!そうか、これが転身を妨げているのか??
「度胸じゃない!自信だ!裸だろうが一人だろうが、俺がパワーで負けるワケがないッッ!!」
 しかしッ!次の瞬間、太志の体も上空高く跳ね上げられていた・・・

「俺は・・・第七機兵隊!」
 漆黒のヘルメットに黒のライダースーツ。暗闇から抜き出たような・・・否、違う!
「まさか!第七機兵隊は全滅したハズ!?」
 そう、亜門昭介の言葉通り、謎の男が名乗った通り第七機兵隊だというのなら、彼は暗闇から抜き出たわけではないッ!
 地獄から甦ったのだ!!
「じ・・・地獄帰りだ、とォ・・・」
 心底悔しそうに、這いつくばったフラッシュが呟く。そう、「男の中の男」に勝る称号がもしあるとしたら、それは「地獄帰り」以外にない!
「そうさ、亜門さんよォ。あんたが恋しくて、閻魔さまに無理言って帰してもらったんだぜ」
 ミサイルランチャーの先端が真っ直ぐに突きつけられた。現職大臣の引きつった顔面を。
「地獄で仲間が待ってるンだ。・・・最期までアンタを信じた仲間達が、アンタに会いたいって言ってるんだよ」
 しかしッ!突如地を割り現われる、巨大な3砲塔の鉄塊、SG-06“オルトロス”。第七機兵隊を殲滅した05よりも強そうだぞ!
 しかし、謎の男は憶さない。甲殻装甲へ変形した重装バイクを装着して立ちはだかるが、駄目だろう!前回は13人かかりで歯が立たなかったんだろ!?
「負け続けた俺の人生・・・・・・真っ赤な死に花で締めくくるのもいいじゃないか」
「違うぞ、それは・・・」
 陽炎を立ち上らせながら、ファイアーフラッシュが立ちあがっていた。

「私の拳を5回も受けて生きている奴は初めて見た。・・・パワーはともかく、タフネスは貴様の方が上のようだな」
「大したヤツとやってこなかったんだな。無敵戦隊にゃあ、この程度でくたばる根性ナシは一人もいやしない」
「ハハハ、一発で動かなくなったヤツがいるじゃないか・・・・・・なにッ!?」
 見上げた枝の上に、城太郎は既にいない。どこだ?逃げたのか城太郎?太志を見捨てて!?
「先刻言ったじゃないか“俺が引き受けた”って」
 その時から、もういなかったのか!?
 視聴者も、武装刑事も、虚を突かれた。気がつくと、両の手首を太志のでっかい手が抑えていた。  これで必殺パンチも撃てまい。
「おめぇは大した悪さしたわけじゃないから骨端微塵投げは勘弁してやるが・・・・・・とりあえず吹っ飛べ!!」
 ハンマー投げで、武装刑事は桜木を超えて飛び去った。

「死に花なんて、あるわけない。勝利以外に男の花道が存在するわけねーだろッ!」
 瀕死のフラッシュの張り手が、装甲の上から叩きつけられた!
「き、効く〜〜!」
 第七機兵隊の目が覚めた。眼の光り方が変わった。これだ、これが男の眼ってヤツだ!
 それを待っていたかのように、2筋の炎が上がった。
 激突爆炎拳と真空無形斬りがSG-06の2つの砲塔を切り落とした。城太郎と晶だ。
 第七機兵隊はホイルスピンで駆け上がり、SG-06の砲塔の亀裂に左手のバルカン砲を突っ込んだ。
「くたばれ!クズ野郎」
 同時に右手のランチャーも火を吹いた。執務室毎、亜門と神博士が消滅した。
 
 SG-06オルトロスが完全に火を吹いて消滅したあと、第七機兵隊の姿も消え去っていた。

 しかし、次の日、亜門昭介はマスコミの前に元気な姿を現わした。
 そして、雷城太郎、轟太志、流北斗、豪徳晶の4人を指名手配したのだ!

第16話「激突!!4対100000000」

 破壊活動、そして大臣暗殺未遂。無敵戦隊のメンバーが全国指名手配をされてから1週間、天に消えたか地に潜ったか、その行方は杳として知れない。
 そんなある日、晶の妹、遥と檜垣の息子、竜の高校へ、武装刑事を先頭とした警察官の一団が乱入した。
「なにしやがる!姉妹だからって関係ねーだろッ!」
 遥を拉致しようとした武装刑事に掴みかかった竜は、アッパー一撃で窓ガラスをぶち破って外に飛ばされた。
「勘違いするな。犯罪者の親族ということでイヤガラセをうけないように、“保護”するのだ」
 白々しいウソだ。そんなことより・・・・・・
「キャー!!こ、こ、この教室は4階なのに・・・・・・」
 なんてことだ!4階の窓から落とされた竜の運命は?そして遥の身柄は?
 いきなり食キングなオープニングだぜ〜〜

 オフィス街、夕暮れの帰宅ラッシュの雑踏の中で、いきなり特殊警棒を振りまわす一団がいた。
「コラ、待てや〜〜」
 巨漢のホームレスがボコボコに叩かれている。
「アリャ、違うぞコイツ。轟太志じゃねェよ」
 ボス格の一言で、あとの4人も手を止めた。
「紛らわしいガタイしてんじゃねーぞ、コラ」
 見るからに地回りの男たちは勝手に腹を立てたまま去った。間違えられた男は暫く立ちあがれない。コレが“無敵戦隊狩り”だ。今、日本中で行われていた。警察もよほどのことが無い限りは見て見ぬ振りだ。
 一般市民も、無敵戦隊への不信感を募らせている。早く捕まってくれないと、自分らも安心できない。今や、二億を越す密告者の目が全国津々浦々にあると言っても過言ではないのだ!!

 ミッドナイトの桜田門前、警視庁ビルを、壁面を!素手でよじ登る影がある。
 檜垣竜だ!生きていたのかッッ!
「こんな絶壁、登るのは大変だろ?手を貸すぜ」
 見上げた竜の額に銃口が押しつけられた。
 武装刑事であった。コイツも壁面に突っ立っている。やはり只者ではない。
「絶壁だと!?俺に絶壁って呼んで欲しかったら、せめてオーバーハングの壁で警視庁作りやがれッッ!!」

 竜の前に引き出された遥は体中に傷を負っていた。女の子になんてコトを!
「強情でね、警察にちっとも協力的じゃあない。目の前で君を傷めつければ言うことを聞くかな?それとも・・・・・・彼女にもう一回聞いたら、君が喋ってくれるのかな?」
 警視の襟章をつけた男の眼がサディスティックに輝いた。こいつ、まともじゃねえ。
 叫びながら必死にもがく竜を尻目に、取り調べ官達の視線が遥に集中した刹那、
ドカーン!
壁ごと、竜が爆発した。
「なに〜自爆した〜〜?」
「逃げたのか!?ヤツは、ヤツはドコだ!?」
 窓の外から風音とともに不敵な笑い声が・・・・・・
 竜巻の風を背に、ファイアードラゴンが窓をぶち破って登場だ〜〜
「フハハハ、2人はいただいて行くぞ」
 遥を奪い返したドラゴンが印字を組むと、湧き起こった竜巻が、内側から警視庁を吹き荒れた。
 外にはそよとも風は吹かない。割れた窓ガラスが吹き落ちるのみ、だ。
「待て待て待て待て」
 武装刑事登場。
「前回はファイアーメガトンに遅れを取ったが・・・今度は手加減せん!」
 武装刑事はボディ後部からリミッターを引き抜いた。そうすると・・・太志とは本来以下の力で闘っていたということか?
 デモンストレイションに打ち下ろしフックを床に叩き付けると、地割れが走りサド警視を飲み込んでしまった。
「本当に女子高生を拷問するやつがあるか!警察の面汚しがッ!・・・・・・さあ、勝負だ、ヘルファイアー!」

第17話「見ろよ無敵のバルカン殺法」

 警視庁25時。建物内で暴れ回る竜巻に庁舎を乗っ取られた警視庁は、近在の警察署に助けを求める。
 桜田門前には近隣の警察署から、パトカーが集合していた。
 まさに、アリの這い出る隙も無い鉄壁の布陣。指揮を取るのは鰐縁阿木斗。“アリゲーター”の異名を持つ鬼警視である。

 一方、建物内ではドラゴンはえらい苦戦を強いられていた。
 リミッターを外した武装刑事の恐るべき速度について行けないのだ。
 遙の居る屋内では、もう竜巻は危なくて起こせやしない。
 どうする?どうすればいい?
「苦戦のようだな、無敵戦隊。なんなら助けてやってもいいぞ」
 廃屋と化した警視庁のホールの暗闇に響き渡る、声?
 助っ人!?・・・・・・・・いいや、違う。これは、コイツは・・・・・・
 地獄の狩人、ヘルハンター、地獄の底より、見ッッ参ッッ!!!
「一難去る前に・・・・もう一難かよ」

「お巡りさ〜〜ん!助けてー!!高速道路に、無敵戦隊がアァァ」
 通報一番、首都高速を往く4人のバイクを追って、西部警察のエンディングばりのパトカー編隊が夜の空に、けたたましいサイレンをこだまさせる。
「ちくしょう、このままじゃあ・・・・・・このままになっちまう。よし、みんな、ココは俺に任せろ!」
 他の3人が返事をする間もなく反転した城太郎はパトカーの群れに突っ込んでいく。
ヅッッガーーン  爆発炎上するパトカーから、警官を抱えたファイアーナックルが飛び出した。
「さあ来い、雑魚ども!(警察官のこと)ここから先は、この俺が行かせないぜ!」
 当たるを幸い、パトカーの群れの中に爆炎拳で突っ込むナックル。ちゃんと中の警官の命は救いながらやっているものの、もう、首都高速は阿鼻叫喚の地獄絵図である。
「ヤメロ!この痴れものめが!」
 漆黒のライダー、第七機兵隊の登場だ。
「いくら無敵戦隊に恩があっても、元の仲間達をここまで虚仮にされて、黙ってられるか!!」
 ナックルに宣戦布告した第七機兵隊、愛車をパワードスーツに変形させて、臨戦体制だ。
 破壊力はナックルが上だが、機動力は第七機兵隊が上だ。道路の上ではその動きに翻弄されて、激突!爆炎拳も空振りを繰り返すばかりだ。
「ええい、しゃらくせい!」
 燃える拳を路面に叩きつけるファイアーナックル。路面を破壊して高速移動を阻む腹だ。
 狙い通り、ひび割れる路面。しかし、道路高架そのものが轟音と共に崩れ落ちていく!!
 効き過ぎだッッ!雷城太郎!お前は街を破壊に来たのかッッ!?
 崩れ落ちるコンクリ塊の間を八艘跳びに飛び移りながら、空中に攻撃をかけ続ける第七機兵隊。
 なんと器用な!これでは、落下しきる前に、ファイアーナックルは蜂の巣だ。
 不恰好ながらも、コンクリ塊の上を飛び移ろうとするナックルだが、更に上から落ちてくる塊とのサンドイッチで押しつぶされてしまう。
 なんと!雷城太郎よ!こんなところで凶悪犯のまま死のうというのか?地獄獣軍団と互角以上に闘って勝ち抜いて来たお前が!!
「灼ッッ!熱ッッ!」
 城太郎は生きていた!叫び声と共に、ナックルを押しつぶしたはずのコンクリ塊が真っ赤に熱を持って燃えたぎる。攻撃の気配を察知した第七機兵隊は塊を飛び移ってナックルの正面から身をかわすが、
「バルカン大爆発!」
無数の溶岩と化したコンクリが四方八方月亭八方に飛び散った!
 火山弾をもろに受け、落下していく第七機兵隊。そして、頭上に爆炎拳をかざした姿勢のまま、力尽きたファイアーナックルもまた、闇の中に消えていくのだった・・・・・

 不敵に登場したヘルハンター。武装刑事を一瞥して、
「まずは、そこの邪魔者に消えてもらおうか・・・・・・秘術、天地返し!」
 天地返し!かつての無敵3人衆、檜垣玄十と暗闇街道が使った技である。しかし、天地返しは幻術のはず。体術使いのヘルハンターに使いこなせるのか?
 なんと、ヘルハンターは空間の裂け目に両腕を突っ込み、そのまま腕力で空間をひっくり返し始めた。なんと力ずくな幻術だ!
 武装刑事が、傾斜した床を滑り、建物外に放り出されそうになる。そして、遙も危ない!
が、なんと、遙の周りの空間だけが回転せずに平行を保っているではないか!?
「幻術、天地返し」
 そう、ファイアードラゴンの天地返しが、そこだけハンターの天地返しを相殺しているのだ。
 檜垣玄十の技をここまで受け継いでいるとは・・・恐るべし、若き天才ファイアードラゴン!
「ククククク、付け焼刃の幻術が、どこまでもつのかなァ?」
 更に天地返しの傾斜を深めるハンターの技に、マスクの下の竜の額から油汗が流れた。限界は近い。いや、すでに超えていると言えるだろう。もはや、精神力だけでもたせているようのものなのだ。
 危うし、ファイアードラゴン。このまま遙と共に漆黒の淵に放り出されてしまうのだろうか?

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