常  識

 

「常識」とは辞書によると、「健全な一般人が共通にもっている、または持つべき、普通の知識や思慮分別」、とある。「こんなん常識やろ!」と口癖のように言う人も居るが、相手からみればそれが「非常識」であるかもわからない。

 

ふりかえると、バブル時には、証券業界の特定の得意先に便宜を図るなどの不祥事をはじめ他の業界においても不祥事が続出した。初めは企業単位から発覚し、芋づる式に同業界の他の企業に波及する。問題が発覚すると一般庶民からは「けしからん」ということになり、マスコミがさらに輪をかけて報道合戦をくりひろげ、やがて企業はトップ交代という形で責任をとる。今夏の雪印の一連の問題もそうだった。例えば、回収した乳製品を再利用していたことなどは世間からすれば「非常識」もはなはだしいことで、いままで問題にならなかったのが不思議なくらいだ。それが今回発覚しなかったら依然として「常識」のように行われていたに違いない。今回は業界の他の企業にまでは波及しなかったものの、一企業だけの問題なのかなあと勘ぐってしまう。

 

いずれにしろ、新しく企業に足を踏み入れた新入社員なんかは、「こんなことしてていいの?」と初めは思うに違いない。しかし、習慣とは恐ろしいもので、時の経過と共にだんだんと問題意識は薄れていき、「朱に交われば赤くなってしまう」のだろう。と同時に世間からもどんどん意識がズレてしまい、「業界(企業)の常識は世間の非常識」となってしまう。

 

石原東京都知事が打ち出した、大手銀行のみを対象とする外形標準課税も冷静に考えれば課税の公平という観点からは「非常識」であろう。しかし、都民の大多数が賛成し、もはや「常識」化された。「常識」とは人の置かれる立場においても変わるものなのかなあと思ったりもする。

 

椛蜻n産業は、皆さんもよくご存知の100円均一の店舗を運営する会社だが、いま急成長している。その急成長ぶりを簡単に紹介すると

売 上 高: 1999年度 1400億円(前年度比+600億円) 1995年度 200億円(4年間で7倍)

店 舗 数: 北海道から沖縄まで1600店舗(毎日1店舗増加中)

仕入単位: 100万〜200万個   品  数:4万点 内80%は自社企画 

安さの秘密は大量仕入れによるものだが、その品揃えの抱負さから買い物が楽しく、「こんなものまで100円?」「やればできるんや!」とつぶやきながらついつい買いこんでしまう。矢野社長は「在庫を増やせ」(常時東京ドーム3個分の在庫が有る)がモットーで、それは卸・小売業界においては「非常識」とも思える行為だが、「常識かどうかはお客様が決める」と言い張る。同様の商品を他の店で100円より高く売られているのを見ると「非常識」、と錯覚してしまうのだから不思議なものである。

 

森内閣の不支持率は各種世論調査では70〜80%と低迷していることから、自民党の加藤氏が内閣打倒を掲げ、変革を期待する多くの国民の「常識」とも思える行動をとろうとしたが、国民の代表であるはずの国会議員の間では「非常識」であったようで、ご自身は約10日間の「ドラマの第一幕」の悲劇のヒロインとなってしまった。

 

紅白の出演者が発表され、町にはクリスマスソングが流れる。来年度の税制改正大綱もまもなく決定されるであろう。21世紀を目前に控え、大企業の景気回復の報道とは裏腹に低迷する多くの中小企業は、政府に頼ることなく、「常識」を捨てた経営を行うことに活路を見いだすのかなあ、とさえ思える今日この頃である。