21世紀を迎える

日本税理士会連合会は、2000年10月における全国の特定の税理士を対象にした、主として中小企業の景況感を把握するためのアンケート調査(半年に1回)結果をとりまとめ、発表したので簡単に紹介する。@景況判断(「よい−悪い」の指数)では製造業(-42)がIT関連や堅調な輸出に支えられて大幅に改善しているものの構造的な問題を抱える建設・不動産業(-78)が悪化し、業種間で二極分化した。A経営上の悩みでは「資金繰り」「国内販売不振」「販売価格ダウン」が上位を占めている。B経営上の悩みの解決方法では、「賃金の抑制」がトップで以下「人員削減」「販売の強化」が上位で、それに続く「安価な原材料の調達」が増加したが「販売の強化」が大幅ダウンした。売上増大よりもコスト削減に走った格好になっている。

 

上記経営上の悩みのうち「販売価格ダウン」が前回調査より急上昇しているが、それを裏づける報道がある。東京都区部の2000年の平均消費者物価指数が調査開始以来最大の下げ(前年比-1.0%)となり、初の2年連続の下落とのこと。そういえば日本経済新聞の平成12年ヒット商品番付によるとトップは「マクドナルドの平日半額ハンバーガー」と「衣料品のユニクロ」だそうで、いずれも消費者の倹約志向を反映するもの。大阪府の南部においてはフランス国籍の超大型スーパーが来春オープンする。消費者にとって物価下落は歓迎すべきものだが、特に物価下落の目立つ「被服及び履物」「食料」の業界の方々にとっては益々厳しい状況が続く。

 

大資本のもとではスケールメリットを活かした低価格競争には有利だが、中小企業にとっては大資本に対抗するには「技術とアイデアとフットワーク」を駆使して差別化する以外には手段はないように思う。東京のある携帯電話の電池ケースを作っている町工場は、他では真似できない技術力(薄い・軽い・つなぎ目がない)があるので大手電機メーカーからも大量の注文があり、たった6人の従業員で年商6億円を稼ぐという。その社長は「お金を追わずに仕事を追え」という。「お金はあとからついてくる」とのこと。実績があるだけに説得力がある。

 

日経ビジネスによると21世紀のヒット商品は5つの『K』に集約されるのではないかとのこと。それは、@近距離―地理的な問題を克服して、コミュニケーションを可能にする A感動―技術革新によって趣味や娯楽の世界に生まれる新商品 B簡便―仕事や生活を便利にする C環境―低公害・低燃費を実現するもの D健康―医療や介護、健康増進に役立つもの、に分類される。思えば20世紀はCや一部Dを犠牲にして@やBの開発に走った時代であった。

 

21世紀の日本は世界的にも類がないほど急速に高齢化社会を迎え、2050年にはなんと3人に1人が65歳になるという状況も予測されている。一方、国と地方あわせて666兆円にもなる債務は国民1人あたり500万円を超える計算になる。大きな課題を抱えながら迎える21世紀だが、この歴史的瞬間を迎えることのできる幸運を誇りに思い、常に「ゆとり」をもってどのようなときも「夢」と「希望」と「真心」だけは持ち続けていきたいと思う。

皆様にとりまして21世紀元年がよい年となるよう祈念申し上げます。