税理士試験

もうすぐ税理士試験(8/1〜8/3)である。私もつい2年ほど前までは現役の税理士の受験生であったので、この時期は最後の追い込みをかけることと、あせり、不安な日々を送っていたことを思い出す。私の場合は、会計事務所に勤務しながらの受験だったので、受験前といえども緊急や期限直前の仕事があれば仕事を優先しなければいけないので、受験のことが気になりつつも遅くまで残業していたこともよくあった。

まとまった時間がとれない中でどうやって受験勉強の時間を確保したのか思い起こしてみると、結局は机に向かう時間より日々の細切れの時間を活用していたように思う。通勤電車の中、就業前、昼休み、移動中(電車・自動車・歩行中)、待ち時間等結構あるものである。私の場合一番活用したのが電車の中であった。なにしろ、電車で勉強するためにあえて遠方の勤務先を選んだようなもので、毎日往復で90分、一週間で7.5時間にもなる。それ以外の細切れの時間をあわせると、一週間で15時間くらいは確保できていたような気がする。一月では60時間で、新書なら20冊位読める計算になる。自動車での移動中でも、カセットに理論を録音しそれを聞きながら運転をする。歩きながらでも二宮金次郎のごとく本を開くなど、とにかく寸暇を惜しんでやったものである。

人間の集中力はそんなに続かないので、暗記中心の受験勉強は、一項目ずつ20〜30分集中し、休む、の繰り返しが効率的である。例えば、「今日は一日勉強するぞ」と意気込んでも、結局集中できずにダラダラしてしまうこともあるが、電車では「終着駅までにこの項目を暗記しよう」といった具合に目標設定もでき、かえって集中できたりもする。

それに、毎日やっていると習慣になって、電車に乗ったとたんに無意識に参考書の縮小コピー(満員電車では本は開きにくいので、暗記しようとしているページだけ縮小コピーしていつも胸ポケットに入れていた。)を開いていた。さらに、暗記に夢中になるとつい口ずさんでブツブツくちが動いたりもする。なにか呪文を唱えてるように見えるのか、いつのまにか周りに人がいなくなっていることもあった。(時々電車でそういう人を見かけたら、「受験生だなあ」という一定の理解をしてあげてください。)それに受験勉強でなによりも大事なのは、「なんとしても合格するぞ」という強い意志と続けることの粘り強さである。

人生論で有名なイギリスの作家ベネットは時間の使い方に関して、「一日はトランクのようなものだ。上手にやれば、その中に2倍のものをつめられる。はじめから真ん中にものを投げ込まず、四隅からスキ間をつくらないように詰め始め、最後に真ん中に押し込む。このように四隅の時間をムダなく使えば、あなたも一日を2倍使えるだろう」と語っている。また、ナポレオンは、急ぎの重大な任務ほど、仕事を多く抱えた忙しい人物(忙しがる人ではない)に任せたそうだ。多忙な人は優先順位の判断にすぐれており、飛び込みの仕事をどう組み入れ、処理すればいいかを心得ているからだそうだ。

時間は人間に平等に与えられた貴重な資源である。私らの仕事は勉強が仕入みたいなもので、仕入がなければ当然売上も立たないわけだから、特に変化の激しい時代を生き抜いていくためには時間の活用というものが益々重要になってくる。今後も細切れの時間をうまく活用して自己啓発に励みたいものである。但し、仕事で疲れた時は電車で居眠るのもこれもひとつの活用法では…。(これを在庫調整といいます。)