高 校 野 球

 夏の高校野球の地区代表が出揃い(ちなみに私の母校は一回戦であえなく敗退)、いよいよ8月8日から全国大会がはじまる。私は元球児(ちなみに高校の現役時代、夏の大阪大会でベスト8まで勝ち進んだ。参考までに、そのとき後の巨人の吉村選手らを要して選抜大会で全国優勝したPLはベスト16で敗退した。)で大の高校野球ファンであり、毎年のように甲子園には足を運んでいる。中でも忘れられないのは、8年程前の星陵の松 井選手(現巨人の4番打者)の5連続ファーボールである。

松井選手は大会前から怪物バッターとして話題になり、星陵も優勝候補に挙がっていた。対戦相手は明徳義塾で、徹底して松井との勝負を避け、ランナーがいない時も敬遠ぎみのファーボールを出し、後半の打席時には星陵応援席から「勝負」「勝負」コール。にもかかわらず敬遠したのでメガホンなどがグランドに投げられ、試合が一時中断するなど異様な雰囲気になっていった。松井は結局一度もバットを振らしてもらえず、試合は2:3で星陵が負けたが、明徳義塾の校歌斉唱時にはネット裏からも「帰れ」「帰れ」コール。私もその時ネット裏で観戦していたが、高校野球では勝利チームに対しては通常手拍子が起こるのだが、正に異常な出来事であった。

この事件については、賛否両論あって、「高校生らしくない」との意見が大半だが、私はそうは思わない。「松井のホームランを観たい」、観客はみんなそう願う(わたしも実は松井の豪快なバッティングを観たさにいった)。プロ野球はある程度は観せることも必要だと思うが、高校野球は観せるためにやっているのではない。夏の高校野球大会はトーナメント方式なので負ければ明日はない。特に3年生は「高校野球」の締めくくりとなるので毎試合が真剣勝負、なにがなんでも勝ちたいと思う。ましてやこのような一点を争うゲームでは松井のソロホームランで勝敗が決まってしまう可能性がある。スポーツだから当然ルールを守り、特に高校野球はフェアプレーでなければいけない。しかし、ファーボールで敬遠するのは立派な戦略で、決してラフプレーではない。相撲でいえば小柄な「舞の海」が体重が倍ほどの巨漢の力士にまともにぶつかれば負けるのはあたりまえで、それを、背中にまわったり、ジャンプしたり、股をくぐったりして見事に勝つこともある。これもまた立派な戦略である。

明徳義塾はこの試合後嫌がらせや批判などで辛い思いをしたようだが、その影響もあってか次の試合では大敗した。この事件は議論を重ねても尽きないであろうし、その後の高校野球についていろんな教訓を残した。しかし、あれだけの野次や非難のなか、信念を貫き通して見事優勝候補に競りかったのはすばらしいことだと私は思うのだが・・・。

高校野球のあのひたむきさは夢と希望と勇気を与えてくれる夏の風物詩である。今のような明るい話題が少ないなか、今回もすばらしい熱戦(PLと横浜が今年も代表なので、一昨年の延長17回のような)を期待したい。今年も一度は甲子園に足を運んで、あの感動を生(ビールも)で味わいたいものである。

ところで、松井選手はタイガースファンであった。松井の希望通りドラフトでタイガースに来ていれば、私の上記の話の展開も変わっていたかも・・・。