早春の候

 

我家の玄関の前は桃畑が広がる。岸和田市包近町は大阪府では有数の桃の産地として有名で、桜の開花とほぼ同時期に桃の花が咲く。今はちょうどちらほらと開花しているが、今のうちに花の間引きが行われ、夏の果実の収穫に備える。3月15日で所得税の確定申告が終わり、一段落ついたと思えばもうこんな時期になったのかと実感する。

 

今年の確定申告は納めすぎた税金を戻してもらう還付申告や赤字申告が目立って多かったように思う。仲間の税理士に聞いても同じような実感があったようだ。赤字申告の場合は「損失の申告書」という特別な用紙で申告するのだが、いくつかの税務署に用紙をもらいにいっても「品切れ」状態で、コピーして使ってくれとのことであった。私の記憶ではこんなことはかつてなかったように思う。こんなところからも今の不況がいかに深刻かが読み取れる。

 

先般2001年の公示地価が発表されたが、予測どおり下落していた。これで1991年(平成3年)をピークに10年連続の地価の下落となった。三大都市圏の商業地に限っていえば1981年(昭和56年)の水準を割り込んだとのこと。銀行の32兆円ともいわれている不良債権処理を日米首脳会談で日本側が「6ヶ月以内に処理する」と公約したと言ったとも言わなかったとも議論されている。その不良債権のうち約1/3が不動産担保のついた債権である。その債権処理のための土地の売却や、住友銀行とさくら銀行の合併に代表される金融機関の統合や大手スーパーのリストラによる店舗閉鎖など土地の売却要因が今後ますます増えてくるので、地価の下落はあと数年続くのではないかと思われる。一方、株式も日経平均株価が先日12000円を16年ぶりに割り込んだ。

 

4月1日の家電リサイクル法の施行に伴い、冷蔵庫・エアコン・テレビ・洗濯機の4品目の4月以降の引取りにはリサイクル料と運送費を消費者が負担する必要があるとのことである。その3月までの駆け込み需要で消費税の税率アップの時以上に家電小売店がにぎわっているようだが、またもや日本人の過剰反応が表れたなあと感じている。リサイクル料と運送費は合わせて3400〜7600円位とのことであるが、そのためにまだ使えるものまであえて廃棄するのはどうかなあと思う。ある調査によると、最近では対象の家電製品の実勢価格は発売後数ヶ月後には2万円以上は値崩れする傾向にあるらしい。今回は駆け込みの反動でより大きく値崩れすることが予想される。不況時であればなおさら倹約思考が働くのかもしれないが、過去にも石油ショックのときや数年前の米騒動のときも割高に大量に買い占めた方が大勢いたが、こういうときこそ消費者にとっても冷静な判断が要求されると思う。

 

春は日本人にとっては大きな節目、新しいスタートのときとなる。選抜高校野球出場の沖縄の宜野座高校は攻撃的バントに徹するらしい。監督は「打撃は才能があってもヒットになるのは3割、バントは能力のある無しにかかわらず練習でうまくなるし、足を絡めれば戦える。」とのこと。打撃不振のわが阪神タイガースにこの言葉を贈り、開幕巨人戦3連勝で勢いをつけてUSJオープンとともに関西経済に大いに活力を与えてほしいとは春眠のささやかな夢なのかな・・・。

 2001年3月 西野 津