3歩進んで2歩下がる 

《幸せは歩いてこない だから歩いていくんだね 1日1歩 3日で3歩 3歩進んで2歩さがる・・・》

これはご存知水前寺清子さんのヒット曲『365歩のマーチ』です。第41回センバツ高校野球の入場

行進曲にも使われました。実に32年前の曲。この歌を知っているというと年代がわかるというものです

が、今のご時勢、ほんとうに元気づけられる曲と思いませんか。

 

 『どんな苦難な時でも1歩1歩積極的に前にでよう。しかし、前向きはいいが、時には原点に立ち返

ることや、撤退する勇気も必要だね。あるいは、積極的にでた結果失敗することがあっても、行動する前

よりも結果的に前にでていればいいではないですか。』といった自分なりの解釈をしています。私はくじけ

そうになったときは、いつもこの曲を口ずさみ、自分を励ましています。

 

 最近は困ったことに、立ち止まっているとどんどん後退するようなご時勢です。例えるならば、下りのエ

スカレータに乗って上ろうとしているようなもの。下がるスピードより速く上らなければ上にはいけない、

気が付いたらどんどん下におりていたということにもなりかねません。

 

農水省が狂牛病対策費として1,500億円もの国費をつぎこむことについて、日経新聞のコラム「春秋」

ではつぎのように表現していました。

来た、来た、とウソをつき村人を惑わし、本当に来た時は誰にも信用されなかったのがイソップの「狼

少年」だが、来ない、来ない、と言ってきた狂牛病が実は日本にも来た。農水省は、さしずめ「逆狼少年」

だった。欧州連合による日本の狂牛病危険度評価を拒否し、「日本は安全」と言った。感染牛が見つかる3

ヶ月ほど前にはその牛を「焼却処分した」とウソの発表をした。「狼少年」は狼に食われて自業自得となっ

たが、「逆狼少年」はツケを納税者に回した・・・。

 

昨年の雪印の食中毒事件では、食中毒に対する経営者トップの初動対応のまずさから消費者の信用を大き

く失墜させ、雪印離れに拍車をかけました。結果、会社の業績を大幅に悪化させ上場来初の赤字となりま

した。今回の狂牛病騒ぎにおいても牛肉離れから牛肉関連業者の売上が大幅に減少し、経済的損失は相当

なものと思われます。政府の「安全宣言」なるものがだされましたが、「逆狼少年」の言うことには消費者

のほとんどがあまり信用していないようです。トップの初動対応のまずさと危機管理のなさが時には致命

的な打撃を国や企業に与えるということが、過去の教訓として活かされていないように思います。

 

私の応援していた近鉄は残念ながら日本一にはなれませんでした。リーグ戦ではあれだけの打撃を誇った

打のチームが1勝4敗と一方的に敗退。もともと投手力の弱いチームがチーム打率1割代では勝てません

わねー。ヤクルトは古田を中心に守りがしっかりし、投打のバランスが取れていて短期決戦でも底力を感

じさせました。打撃はもともと水物で、近鉄の打線頼りのモロさがでた日本シリーズでした。

 

投打のバランスの重要さは企業においても同様だと思います。経営者の関心はどうしても売上アップ(攻撃)。

しかし、会社の経営である限りは総務・経理などのディフェンス面(特に取引先の与信管理など)も重要です。

それをおろそかにして売上一辺倒では一時的には伸びてもいざというときにはモロさがでるものです。企業

は未来永劫繁栄させて始めて成功と言えるのではないでしょうか。私の知る限り、ディフェンス面をおろそ

かにして繁栄が継続した企業はありません。今のような低成長期には「太く短く」よりも「細く長く」を心

掛けることが大事だと思います。

 

イギリスのブレア首相が今回のテロ事件への対応として、「何もしないのが一番のリスクだ」と言いました。

決して安全はタダではありません。財産や生命の安全神話が崩れつつある昨今、守るためには積極的に打っ

て出ることも必要ではないでしょうか。

 

《・・・人生はワンツーパンチ 汗かきベソかき歩こうよ あなたの付けた足跡にゃ キレイな花が咲くでしょ

う 腕を振って足を上げて 1(ワン) 2(ツー) 1(ワン) 2(ツー) 休まないで歩け それ! 1、2、1、2》

       2001年11月 西野 津