税制改正
しし座流星群は皆さん観られましたでしょうか。私はその日は早目に寝て、午前2時に目覚しを合わせ、
1時間ほど毛布を巻いて窓から東の空を眺めていました。あれだけの流星を観るのは生まれて初めてで
感動しました。ここ200年間では最大の流星とも言われています。あの流星の一つ一つ、暗いニュース
が燃え尽きているんだという願いを込めながら幻想的なひと時を過ごしました。あれ以来、無意識に夜
空の星を眺めてしまうのは私だけでしょうか・・・。
来年度の税制改正についての報道が頻繁にされるようになってきました。税制改正は例年、年末に税制
改正大綱(改正の大枠)が政府・与党により決定され、それに基づいて財務省が法案を作成し、年明けの
通常国会で審議され3月末位に可決・成立するというスケジュールになっています。税制改正大綱は今
年も昨年同様、より経済界が早く対応できるように12月中旬には決定される予定となっています。
今回の中味ですが、目玉は法人における「連結納税制度」の導入でしょう。現在の株式会社や有限会社
などの法人における法人税は法人ごとにもうけを表す課税所得金額を算出し、税金を計算する方法です。
しかし、ここ最近では、企業の構造改革により分社して独立採算制の導入、あるいは持株会社の傘下に
事業を統合するなどの動きが活発になっています。現在の税制では法人単位課税が原則であるので、分
社した子会社が赤字の場合は親会社の黒字から控除することが出来ないため、その場合分社することに
より増税となってしまいます。こういうことでは企業の構造改革を進める上で税制が足を引っ張ることに
なってしまうので、100%親子関係の法人間は事実上一体であることから一つの法人とみなしてそれぞれ
の課税所得を通算、つまりいずれかに赤字があれば他の法人の黒字から控除できるようにしようというの
が「連結納税制度」の概要です。
ところが、最近になって「連結納税制度」の導入を先送りしようという発言が財務省からでてきました。
表向きの理由は「法案の作成が間に合わない」とのこと。過去に消費税を導入する時は新税をあれだけの
短期間でまとめたという実績もあるのに。本当はこの制度を導入することにより、8000億円もの税収減に
なる財源の手当てがつかないということが大きな理由のように思います。しかし、この制度導入により企
業の構造改革が促進され、業績が上向き税収が増えることも充分考えられます。この制度はもともと今年
度に導入予定が来年度に先送りされた経緯があり、さらにもう1年先送りしようという。結局経済界の猛
反対で来年度中に法案を成立させ、来年4月に遡って適用という異例の措置でなんとか落ち着きそうですが。
税制というのは、しばしば政策的に使われるものですが、振返ってみれば地価抑制のために平成4年に導
入した法人・個人に対する土地重課などの一連の土地税制が記憶に残っています。地価は平成3年をピー
クに下落傾向にあった。ところが、一連の土地税制が下落に拍車を掛ける形になり、土地税制が本格的に
緩和されたのはようやく平成10年になってからで、このときすでに3大都市圏の商業地ではピークから
1/3位にまで落ち込んでいました。その後も下げ続け、今のところ10年連続下落で、同地域では昭和
55年位の水準まで下がっています。今だ下げ止まる気配はうかがわれません。地価の下落が不良債権の
更なる増加を招き、今の不況の大きな要因となっているので、税制の対応の遅れが傷を広げたといっても過
言ではないと思います。ところが、一連の土地税制のなかで今だ緩和されずに放置されている「個人が投
資用マンション等を借入金で取得した場合の利息の一部が所得から控除できない」制度もあります。
今の緊急事態だからこそ税制によって相当踏み込んだ内容が必要となるのに、上記の先送り論や、発泡酒
たばこの増税など、小手先で構造改革に逆行するようなことばかり政府はやろうとしています。例えば、
新規取得した土地の固定資産税を一定の期間免除とか、現預金の祖父母や両親からの贈与による贈与税
を大幅に非課税にするとか、大胆な税制で景気てこ入れを期待したいものです。発泡酒愛飲者としては、
発泡酒の増税は泡(アワ)てないでほしいですネー。
2001年12月 西野 津