イエローカード  

<<初めまして、お忙しいところお尋ねしたいことがございます。ホームページのなかで人間の可能性

について書いておられました。そのなかで言語訓練教室が天王寺区にあるとのこと、急ぎ教えていただき

たく宜しくお願いいたします。娘は大阪に住んでいます。4歳6ヶ月の男の子を一度先生に見て頂いて、

少しでも可能性をひきだせていただけたらと、ささやかな願いを、そのためでしたら、私の出来る事精一

杯したいと思います宜しくお願いします。>>

 

先日このようなメールを私の事務所にいただきました。ここにあるホームページというのは、本誌の2000年

9月号のなかで、私の事務所の近くにある言語訓練教室を紹介したもので、見ず知らずの方が私のホーム

ページをご覧になって、関心をもってこのメールを送ってこられたのだと思います。すぐに連絡先を調べて

返事を差し上げました。微力ながら、お役に立たせていただいたことを喜んでおります。文面を見る限り、

この方のお孫さん(娘さんの子供)が言語に障害を持っておられるのだと推測できるのですが、祖父母さんの

必死の思いが伝わってくるようです。一日も早いご回復をお祈りしたいと思います。

 

 ところで、今話題はサッカーのワールドカップのことで持ちきりですが、国際的にはインドとパキスタン

の紛争が緊迫化しています。両国とも核を保有しており、米国防省は偶発核戦争が起きた場合は1200万人も

の死者がでると予想しているようです。米国はこの危機を打開するためにラムズフェルド国防長官を近々に

両国に派遣するとのこと。その一方で、米英を始めとした欧米諸国は自国民に両国からの避難勧告を出して

います。

 

イスラエル・パレスチナ紛争も泥沼化しています。米国の仲裁にもかかわらず、イスラエル軍からの激しい

攻撃に対し、パレスチナ側は銃撃や自爆テロ戦術を展開し、両者の憎悪は深まるばかりです。自爆テロはこ

の1年半で50件以上と激しさを増し、今年1月には長い自爆テロの歴史の中で初の女性殉教者が現れ、現在

まで計4人の自爆が確認されています。

 

自爆テロの直前に今の心境やこれから行うことの正当性を誓うかのようなビデオが撮られていて、20歳前後

の若者たちが命を捧げていく。これらの事実を多くの皆さんが、理解不能で狂信的だ、と感じると思います。

しかし、これらの自爆した女性はイスラム原理主義者などではなく、宗教色のない活発な女性でした。

 

一人の女性は、ボランティアの救急隊員で、ボランティア先のキャンプで同胞である子供達の痛ましい姿を

日々目にして、いたたまれなくなったことがきっかけと言われています。二人目の教師を目指していた大学

生は、1ヶ月前に兄弟を、一週間前には婚約者をイスラエルの攻撃によって亡くしたそうです。今夜寝ると

きに明日生きているかどうかわからない、という極限状態が毎日のように続いている状況のなかで、身内の

痛ましい姿を次々と目にする、このような状況で果たして冷静な判断ができるものかどうか。一方、イスラ

エルにも民間人の犠牲者が多数発生しており、双方長い長い歴史的背景が根深くあります。ワールドカップ

の完全生中継を自宅に居ながら楽しめる平和日本で改めて考えさせられるものがあります。

 

5月に政府による「景気底入宣言」がされましたが、それを待っていたかのように日本国債が大手格付会社

によって2段階引き下げられ、これで米英などの最上級から5段階下のA2、イスラエルや南アフリカと同

水準まで落ちてしまいました。財務省はこの格下げに対して抗議しているようですが、確かに格下げの理由

説明が不十分で根拠に疑問を感じますが、莫大な財政赤字は確かに異常なものがあります。これは、あまり

進まない構造改革や景気対策に対して、「景気底入宣言」で手を緩めないようにとの「イエローカード」

(警告)と謙虚に受け止める必要があるのではないでしょうか。

 

しかし、ベルギー戦は実に、オシカッター!                        2002年6月 西野 津