根気よくコツコツ  

今年は年初から異常に寒い日々が続いています。確か、この冬の長期予報では暖冬になるといっていたような気がするのですが、景気と同じで天気も予測がむずかしいのでしょうか。

 

昨年は暗い話題が多い中での数少ない明るい話題は、ノーベル賞の日本人ダブル受賞です。中でも田中耕一さんは注目の的です。田中さんは気取らない言動やしぐさが受けて連日テレビで紹介され、いつしか「癒し系」「日本一有名なサラリーマン」とまで言われるようになりました。しかし、肝心の受賞理由まで知っている人は少ないのではないでしょうか。

 

受賞理由は、「タンパク質などの生体高分子を分析する方法の開発」。通常、タンパク質にレーザー光をあてると熱によりタンパク質が分解されてしまうのを、田中さんは補助財を使うことによって熱を吸収させ、タンパク質を分解させることなく測定させる方法を考案しました。この測定方法は新薬の開発、病気の診断、食品検査など幅広い分野で活用されているそうです。

 

田中さんは幼いころから素直、真っ直ぐな性格で、自分が当たり前と思って言ったことでも笑われることが多かったそうです。持って生まれた感性が普通の人とは違っていたのかもしれません。一方、幼い頃から、ノコギリの刃を研ぐ職人であった父親(実の父親ではない叔父にあたる)の背中をみて育ち、「根気よくコツコツ」とすることを信条としてきたそうです。マイペースな日々の地道な努力が才能を開花させたのかもしれませんね。

 

私の仕事も日々の地道な研鑽が重要です。「先生はよく勉強してますねー。」と言われることが多いのですが、私らにとって「勉強が仕入」なのです。物を売る商売では、物を仕入れ、陳列してお客さんに提供する。当然、仕入がないと物も売れない訳ですが、売れない物を並べてもこれまた商売にならない。いかにお客様のニーズにあったものを仕入れるかが重要です。

 

私らも同じで、膨大な税制で基礎的なあまり改正のないものは当然勉強し身に付けて置く必要がありますが、毎年変わるのも税制です。特に、政策的な税制は納税者にとってメリットのあるものが多く、情報提供するためにはアンテナを張って注目しておく必要があります。中でも毎年暮れに発表される税制改正大綱は非常に重要です。税制改正大綱の原文はいつもカバンにいれて持ち歩いています。

 

今回は特に相続・贈与税で大きな改正がありました。一定の贈与の非課税枠を2500万円とし、将来の相続時に贈与財産を合算して相続税を計算するという「相続時精算課税制度」が導入される予定です。これはある意味、相続税がかかる人にとっては相続税の基礎控除(5000万円+法定相続人×1000万円)の先取りとも言えるものですが、相続の時期は事前に予測できないのに対し、贈与だと計画的に行えるというのが最大のポイントです。相続税がかかる人は現在では約5%しかいません。他の95%の方にとっては、将来相続税がかからないので結果的に2500万円の贈与はまるまる非課税となります。しかも、両親各々では5000万円まで贈与税がかからないということになります。ちなみに、現行の5000万円の贈与の場合は約2590万円とほぼ半分も贈与税がかかってきます。

 

一方、現行の年110万円の贈与税非課税枠も引き続き存続します。これは、将来相続時に加算しなくていい(相続の3年前の法定相続人に対するものは加算)もらいきりの控除ですので効果的です。例えば、4人の相続人に110万円の財産を10年で4400万円、20年で8800万円、30年では13200万円も税負担なしで移転できるわけです。これはやるとやらないのでは大違いです。相続対策も、長年かけて「根気よくコツコツ」やる必要があるということですね。

 

昨年大晦日のレコード大賞は浜崎あゆみさんが2年連続受賞しました。過去大賞を2年連続受賞した次の年は景気が回復しているそうです。一方、私の元旦の京都清水寺でのおみくじは大吉でした。「・・・よく信心して、心正直ならざれば不しあわせなるべし」との忠告とも思えるような文言もちゃんと記載してありました。「商売は、ゆるゆるすべし」との文言は、「根気よくコツコツ」という意味に思えます。皆さんにとって、今年は良い年になるよう願っています。

2003年1月 西野 津