継続は力なり  

気がつけばもう4月です。「ドッグイヤー」ってご存知でしょうか?犬が年をとるスピードは人間の約7倍に相当することから、「ドッグイヤー」とは通常の世界の約7倍に相当するスピードで変化が起きていることを表しています。変化の激しいIT(情報通信)業界では盛んに使われる言葉ですが、IT業界に限らず、かつてなかったのではないかと思われるくらい激動の時代となりました。

 

日本マクドナルドの創業者で会長だった藤田 田氏が先日同社を退任しました。氏は日本の外食産業を30年余りリードし、最近ではハンバーガー平日半額セールなど、奇襲的な戦略をつぎつぎに打ち立て同社を外食産業NO1に育て上げました。しかし、「デフレの時代は終わった」と、平日半額セールを打ち切ったあたりから客離れが目立ち、売上が落ち込むようになりました。再び前回以上に大幅値下げしたものの客離れは収まらずに、同社は前期(2002年12月期)には創業以来初の赤字に落ち込んでしまいました。つい最近まではユニクロしかりデフレ時代の勝ち組の象徴のようにいわれた同社ですが、「安いだけでは続かない」現在の厳しい消費動向を表しています。

 

 先日、2003年公示地価が発表されました。東京・大阪・名古屋の三大都市圏では平均で6.8%の下落、1991年(平成3年)のピークからするとこれで12年連続の下落です。大阪圏では9.1%と前年同様高い下落率となっています。 東京都 心の一等地など一部では上昇しているところがあるものの、全般的な地価下落の傾向は当分続くものと思われます。かつては土地や建物、設備を豊富に持つ重厚長大型の製造業が高度経済成長時代の日本をリードしてきました。ところが、今はその抱負な資産がかえって重荷になっています。

 

企業の経営指標のなかで、最近上場企業の経営者が最も重視しているのが、売上や利益よりも株主資本利益率(ROE)です。これは、当期純利益(最終利益)の株主資本=自己資本(貸借対照表の資本の部)に対する割合を表すもので、いかに会社の資本を効率よく運用して利益を計上しているかを表す指標です。日本の企業も1970年代の高度経済成長時代には上場企業平均で15%位ありましたが、最近では3%位にまで落ち込んでいます。3%というと、10年前の定期預金の金利並みです。それだけ、収益性が低くなり、過大設備を抱えているといえます。2006年3月期(2004年3月期早期適用可)から適用が予定されている「減損会計」は、これらの過大な不動産や設備などの収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理です。つまり、「投資の失敗」と位置付け帳簿価額を減額する、あるいは、企業が保有する不動産や設備などの贅肉を剥ぎ取って、筋肉質の資産価額に置き換える会計処理といってもいいかと思います。しかし、経済対策上延期の可能性もあります。

 

「会社の平均寿命は30年」とはその昔いわれていました。ところがここにきて中小企業の厳しい現状を目の当たりにすると、それは10年であり、30年継続するのは至難の業かなあと思うことさえあります。一時的によくてもそれを継続して繁栄させることのむずかしさを改めて痛いほど感じます。企業を未来永劫継続させるためには、時代の流れにすばやく軌道修正し得る柔軟さが必要になります。大規模な不動産や設備を抱えていてはそれがなかなかむずかしい。ダイエーとイトウヨーカドーとの比較ではないが、これからは拡大一辺倒ではなく、軌道修正可能な身軽で効率的な経営が求められるのではないでしょうか。

 

「雨だれ石をうがつ」とは、屋根の軒下からしたたり落ちる雨水が、ひとつの石の同じところに落ち続けると、一滴一滴の力は小さくても、やがてはかたい石に穴をあけることができる、という意味です。つまり、小さなことでも継続すれば大きな力となり、どんなことでも成し遂げられるということなのです。こういう時代こそ、日々の弛まぬ研鑽が大きな力になると思います。

 

親の欲目で恐縮ですが、息子が三月の幼稚園の卒園式において「偉大なる」表彰をしていただきました。それは「二年皆勤賞」です。つまり、二年間一日も休まずに幼稚園に通い続けたのです。一年皆勤は卒園児162名中十数名いましたが、二年皆勤はたった二名しかいませんでした。表彰状を受け取るわが子の姿をみて、小さな体が大きく堂々と見え感動したものです。卒園式での園長先生の挨拶のなかで、みんなに「ゆうき」「やるき」「げんき」の3つの木(気)を捧げます、との贈る言葉がありましたが、私自身、3つの気を子供から捧げてもらったような気分です。

 

本文は、今回で丸3年34回目となります。3月は事情があって休ませていただきましたが、「継続は力なり」、今後とも続けて行きたいと思いますので、ご愛読の程よろしくお願いします。  

2003年4月 西野 津