ファインプレー  

今年もタイガースが絶好調です。今のところ、ダントツの首位!しかも、昨年の日本一、あの強いジャイアンツに開幕5連勝の負けなしです。実に19年ぶりとか。あの日本一になった1985年の前年以来となります。思えば、当時はバブルの始まりで日本は活気に満ち溢れていました。

 

野球の守備の「ファインプレー」(美技)は壮快です。特に外野手からバックホームへのクロスプレーが一番迫力あり、ハラハラするシーンです。サッカーでいえば、ゴールに攻め込むドリブルシーンのような、正に野球の醍醐味。高校野球で記憶に残るのは、1996年の夏の甲子園、 松山商業 対 熊本工業 の決勝戦。同点で迎えた延長10回の裏、熊本工の攻撃。一死満塁でライトへの大飛球、だれもがタッチアップでホームイン、熊本工のサヨナラ優勝を確信した。ところが、この回から守備に入っていた矢野選手のバックホームは山ボールで一瞬暴投のように見えたがみごとストライク、限りなくセーフに近いアウトでした。結局、延長12回、6−3で松山商が優勝しました。この送球は後に「奇跡のバックホーム」として語り継がれるようになりました。

 

あと、内野手が横っ飛びに好捕するシーン、外野手が背走しジャンプして大飛球を捕るシーンなど、思わず拍手したくなるプレーには感動します。一方、現役時代の長嶋のように、横に飛ばなくても充分とれるボールをわざ?と飛んで「ファインプレー」に見せることも、これまた観ている方としては面白いものです。外野手が正面のライナーをダイビングキャッチでアウトにすれば「大ファインプレー」ですが、抜ければ長打となり、無謀なプレーとなります。「ファインプレー」と無謀なプレーは紙一重でもあるわけです。

 

高校野球でもPL学園のような一流校は、キャッチャーの構えたコースによって、内野手が1球ごとに守備位置を変え、外野手にもサインで守備位置を支持しています。これは、ピッチャーのコントロールがよいという前提でないと出来ないことです。風、バッターの振り、打順、過去の打球コースなどで野手があらかじめ予測される打球の位置に構えていれば、ダイビングキャッチも必要ないかもしれません。「いいところをまもっていました」とは、地味ですが真の「ファインプレー」かもしれませんね。

 

経営ではどうでしょうか。手形決済を期日ギリギリに資金を工面して落とした。確かに、その部分だけ見れば、「ファインプレー」かもしれません。ところが、なぜギリギリになったのか、そもそも手形を切らずにすむ方法はなかったのか、など、突き詰めていけばいろんな問題点があるはず。それらを事前にキチンと対応しておけば、直前に「ファインプレー」をする必要がなかったはずで、資金の循環もスムーズに日常が「ファインプレー」だったかもしれません。

 

ある身近な中小企業の社長が、「このままでは経営が続かない。今だったら会社を閉め、借金を返しても自宅だけはなんとか残せる」。との決断を下し、社員全員に話したそうです。「会社を閉めるつもりだが、どうしても存続させるとなると君らの給料を今の1/3にしなければならない」。ところが、社長の予想に反し、社員全員が会社に残ることになった。「会社を辞めても他に行くところがない。それよりもこのまま留まって力を合わせ、元の給料をもらえるまで会社を建て直すべく頑張ろう!」と。社員は給料が大幅に下がってからの方がむしろ一生懸命仕事し、業績も急回復しているそうです。極端な事例ですが、結果オーライということでしょうか。

 

タイガースがジャイアンツに開幕5連勝したのが19年ぶりなら、日経平均株価が8000円を下回り、商業地の地価と共に20年前の水準。さらに日経平均株価は50年移動平均を下回り、長期金利が配当利回りを下回ったのも、日米の平均株価が逆転したのも50年ぶり。問題先送りでなかなか真の改革に踏み込めない政府。不況、不況といっても日本には「もの」があふれ、まだまだ豊かで、そのせいかなかなか「意識改革」が出来ない多くの国民。先の社長のように大胆な「ショック療法」でもしないと企業は立ち直れないものでしょうか。そして、18年ぶりのタイガースの優勝こそが「大ファインプレー」、関西の景気回復の起爆剤になるものと信ずる今日この頃ですが・・・。

2003年5月 西野 津