消費税率2ケタへ  

消費税率2ケタが現実のものとなってきました。先日の政府税調中期答申のなかで、「少子高齢化社会では極めて重要な税。将来は・・・2ケタ税率に引き上げる必要もあろう。」とハッキリ明記されています。一方「・・・食料品などに対する軽減税率の採用の是非が検討課題・・・」という複数税率の採用も検討するようであります。

 

日本の消費税は、平成元年に当時の竹下内閣の時に税率3%で導入されました。その前の中曽根内閣の時には「売上税」というものが5%の税率で導入されようとしましたが、結局廃案に追い込まれ、政局が混迷しました。平成6年に当時の細川内閣の時に「国民福祉税7%」抗争がありましたが、単なる茶番に終わりました。その後、平成9年に当時の橋本内閣の時に税率が3%から5%に引き上げられ、景気後退の大きな要因となってしまいました。小泉首相の在任中は消費税率は上げないと宣言していますが、このように過去にも消費税引き上げ論争というのは繰り返され、そのつど政局混迷を招いてきました。過去の経緯からすると次は7%くらいになりそうですが、将来は原則10%以上、食料品などは非課税又は軽減税率ということになるのでしょうか。

 

日本の税制は共産主義的な考え方があって、所得税、法人税、相続税などの直接税は「お金持ち」から多くの税金を徴収し、広く国民に分配するという労働意欲が失せるような不公平なものです。実際、サラリーマンの25%、法人の70%、死亡者の95%は各々それらの税金がかかっていませんし、税収が景気にもろに影響を受けます。将来の年金や医療費などの財源問題を考えると、公平で安定した財源はもはや消費税に頼らざるを得えない状況です。しかし、「足りないから頂戴」では国民は納得しません。歳出面を見直し、ムダな支出を充分切り詰めることが先決です。

 

民間企業が生き残りの為に必死に組織再編や改革に取り組んでいる中、行政と民間との間にはまだまだ温度差があると思います。ちなみに日本の公務員数は国と地方合わせて440万人います。さらに、公団などの特殊法人を加えるともっと増加します。これは、建設業の従業者数に匹敵する人数です。実に国民の28人に1人、それだけ国民に手厚い?と言えなくもありませんが・・・。ただ、私たち行政サービスを受ける市民も、ムダな税金を使う必要のないよう一人一人の心がけが必要だと思います。一例をあげれば、家電リサイクル法の施行に伴い、家電品の不法投棄が増加しました。道路には空き缶や吸殻の投げ捨てが絶えません。この後始末はすべて税金が使われます。

 

今般の消費税法改正では、事業者免税点売上が3000万円以下から1000万円以下に下がります。さらに、商品やサービスの価格の表示が来年4月以降は「税込み」で値札などに表示しなければならなくなります。それに伴い、メニューやカタログ、レジなどのやり変え費用がかかります。よく行く飲食店のご主人が、「うちも消費税納めなあかんようになるわ、値段上げたらまたお客さん減るしなー。どないしょう」と嘆いておられました。売上が1000万円を超えているのでしょうか・・・。

 

コスト削減余地が少ないのにさらにコスト削減を図ろうとすることを「乾いたぞうきんを絞る」という表現を使いますが、トヨタ自動車の首脳が「ぞうきんはまだまだ湿っている」ということを言っていました。トヨタの連結ベースでの直前期の売上高が16兆円、経常利益が1.4兆円と史上最高を記録していますが、まだまだ、コストダウンの手を緩めません。今年は昨年に引き続き賃金のベースアップはゼロ、但しボーナスははずむとのこと。トヨタは人件費の変動費化を目指しており、固定費の増額につながるベアは抑えて、高業績にはボーナスで応えようということだそうです。

 

現在快進撃を続ける阪神タイガースは、昨年6月は4勝13敗と大きく失速し鬼門とされましたが、今年は15勝5敗と大きく勝ち越し、球界史上初の6月中の50勝達成。それでも星野監督は、浮かれることなく、「一つ一つ闘うだけ」と気を引き締めています。思えば、日本もバブルに浮かれることなく、気を引き締めていれば今頃こんなことには・・・と思う今日この頃ですが・・・。

2003年7月 西野 津