路線価11年連続下落  

「路線価11年連続下落」8月1日の日経新聞夕刊の一面見出しです。相続税や贈与税の計算の基礎となる本年分の路線価が例年より早く国税庁より発表されました。今回はインターネットでも同時発表ということで、発表の当日国税庁のホームページに何回もアクセスしましたが、今回は本年より導入された「相続時精算課税制度」の関係でより注目されているのか、アクセスが殺到し、12メガADSLをもってしてもなかなかつながりませんでした。

 

その路線価ですが、三大都市圏では下落率は縮小しましたが、地方圏は逆に拡大し、都心と地方の格差が益々拡がっています。三大都市圏で最大の下落率だった大阪圏は8.7%の下落率で、東京圏の4%に比べると縮小したとはいえまだまだ下落率は高いようです。東京銀座の一等地では逆に3年連続値上がりし、全国一の1,272万円/uです。一方、大阪の最高は梅田の阪急百貨店前で408万円/u、なんと12年ぶりに下落が止まり横ばいとなったそうです。

 

そういえば、最近 大阪市 内ではマンションの建設ラッシュです。私の事務所がある天王寺区でも高層マンションが次々と建設されています。バブルの時に比べると、周辺地並の価額で売り出されているので求め易くなっていることや、まとまった遊休地では他に有効な利用方法が見つからないといったことも理由としてあると思います。 大阪市 の中心部でしかも駅から数分のところが3000万円台で買える訳ですから、都心回帰というのでしょうか、これらのマンションがよく売れているのもわかります。気の毒なのはバブル時に地方でマンションを購入された方々でしょう。都心回帰の影響で地方は住宅需要が減少し、地価は益々値崩れします。売却してもローンだけが残り、さらに賃貸に住めば家賃も必要になる。「身動きとれないよ」という嘆きをよくお聞きします。これらが、あと10年、20年経ってから中古市場にどんどん放出されることを考えると・・・。

 

最近新聞でよく「ワンルームマンション」の投資の広告を見かけます。大体は利回りが年5%前後。ここで言う利回りとは、年間家賃収入÷物件価格のことです。表面上は利回り年5%と聞くと今のご時世すごい利回りだと感じますが、果たしてそうでしょうか?確かに、大手銀行などの普通預金の金利は0.001%の時代。これは、1千万円を1年預けて100円にしかならない水準です。20%源泉されれば手取りでは80円にしかならず、一部の銀行で土曜日にATMで預金を引き出せば、手数料で吹っ飛んでしまう金額です。定期預金などのペイオフ解禁に伴い、昨年4月以降普通預金の残高が急増しましたが、元本は確実に確保されるので金利は低いのは致し方ないのでしょうか。

 

一般的に、不動産の賃貸には管理費や支払利息、固定資産税、火災保険などの経費が必要です。さらに、所得に対する所得税などの税金も必要になってきます。これらを仮に家賃収入に対して30%かかったとすると、手取り収入で換算すると利回りは年3.5%(5%−5%×30%)に減少します。さらに、建物部分は年々劣化していきます。税務会計上は「減価償却費」として毎年経費に計上するのですが、土地部分についてはどうでしょうか?マンションは一応敷地権として土地部分の持分はありますが、更地と違ってそれは一種の「利用権」のようなものなので、バブル時のような値上がりは余程の一等地でない限りは見込めそうもありませんから、長い目で見れば価値は減少していくものと思われます。仮に20年後に売却するとして、マンションの価額が半分になっていたとすれば年間当りで2.5%の減価、1/3になっているとしたら年間当りで3.3%の減価ということになります。そうなれば、実質の利回りは年0.2%(3.5%−3.3%)となってしまいます。

 

空室になった場合や売却コストなど考えれば、果たしてマンション投資は有利なのかどうか・・・。それなら、流動性が高く利回りが年5%前後ある不動産投資信託(REIT)の方が良いのではと個人的には考えます。経営も投資も「柔軟性(流動性)」「リスク分散」が重要だと思いますので、不動産投資はREITのような証券化が今後主流になっていくものと思われます。しかし、日本人の場合は、農耕民族であるが故土地に対する執着心が根強く、採算性よりも「土地の所有」そのものが目的で、土地を一種の「骨董品」的な感覚で捉える価値観が根強くあるのも事実ですが・・・。

2003年8月 西野 津