将来不安

 

今夏は前半冷夏でしたが、盆すぎ位から猛暑で季節がスライドしているようです。いつまでこの猛暑は続くのでしょうか?今年は6万年ぶりに火星が地球に大接近。過去の歴史上、火星が接近したときは、偶然かも知れませんが、地球上では戦争などの災いが起こっているとか。そういえば今年は、イラク戦争を初め、SARS、世界的な異常気象など災難が多発しています。しかし、6万年というと気の遠くなりそうな期間ですが、我々人間の一生というのは長い歴史から見ればほんの一瞬だなあと感じます。短い生涯、どうせなら、充実した日々を送りたいものです。

 

内閣府が先日発表した国民生活に関する世論調査によると、日常生活で悩みや不安を感じている人は昨年に比べて3.9ポイント増え、過去最高の67.2%、実に3人に2人だとか。「景気の悪化が続き、少子高齢化が進む中で、年金や医療などの社会保障制度の将来像がはっきりしないことが背景にある」と内閣府では分析しています。特に、不安を感じている年代は働き盛りの40歳代から50歳代が70%以上と最も多いそうです。不安を感じる項目では最も多かったのは「老後の生活設計」次いで「自分の健康」です。バブル絶頂期の1991年(平成3年)では、生活に不安と答えた人が半分に満たなかったことを考えれば、景気マインドが大きく影響しているものと思われます。

 

自営業者などが加入する国民年金の納付率が約60%まで落ち込み、約40%もの人が納付していないという。いろいろ事情があるかと思いますが、以前は60歳からもらえた年金が、今は原則65歳以降になり、さらに少子高齢化の影響で将来67歳とか、あるいは70歳以降でないともらえなくなるのでは、保険料が今後もっと高くなり給付が下がるのではないかとか、「納付した保険料が、将来キチンもらえるのかどうか」という不安要因が一番大きいと思われます。確かに国民年金は強制加入であり、対象者は全員保険料を納める義務があるのですが、これだけ未納者が多いと正直者がバカを見るという事にもなりかねません。厚生労働省では、滞納者に対しては今後資産の差押など厳しい措置をとるようですが、ただ単に義務だからではなしに、加入者のメリットとか、これだけもらえますよ、などと不安を取り除いてあげるようにもっとPRすべきではないかと思います。

 

私も国民年金加入者で、恥ずかしながら実は数年前は納付していませんでしたが、次の理由から納付するようにしました。 @厚生年金加入期間と国民年金加入期間合わせて25年以上納付しないと将来年金が1円ももらえない(厚生年金の期間が15年ほどあり、あと10年足りなかった)  A国民年金の保険料は税務上全額所得から控除することができる(事実上税金の軽減額で保険料を補助してもらえる)  B国民年金基金という国民年金の上乗せの制度が国民年金加入者でないと加入できない(当時基金の利回りは年4%もあった、今でも年3%もあり、基金の掛け金は全額所得控除できる) <詳細は本文 2002年3月号参照>  C万が一の場合遺族給付や障害給付がもらえる D国民年金は1/3が税金で補填されているが、将来は1/2に引上げられる予定  などのメリットを考慮し、若干の不安があるものの、未納付だった年分を遡って現在一生懸命納付しています。

 

話は変わりますが、本年の税制改正で新たに導入された「相続時精算課税制度」は、景気対策の一環として、相続を待たずして高齢者から若年者への財産移転をスムーズに行い、消費活動を活性化させようとの趣旨ですが、実際はどうでしょうか。税務上言えることは、 @将来相続税がかからない方 →  実質無税で2500万円(住宅資金3500万円)までの財産を移転できるのでメリット大  A将来相続税がかかる方 → アパートの建物部分など収益を生じる財産や業績向上の自社株など将来値上がりの可能性のある財産の贈与はメリットあるが、値下がりの可能性ある土地などは慎重に、と私は考えます。当然、多額の贈与をする訳ですから、一度贈与すると元に戻すのが困難になりますので、後継者問題にけりをつけ、子供間で公平になるよう贈与する必要があります。

 

しかし、政府のもくろみとは裏腹に、高齢者の方にいろいろ話を聞くと、「預貯金を安易に子供に贈与するのはいかがなものか」という意見が多いです。それは、「無駄遣いする」「一生懸命仕事しなくなる」「娘婿の立場がなくなる」などの理由からです。中には、「今、お金を沢山渡してしまうと将来面倒を見てもらえなくなるのでは・・・」と、「金の切れ目が縁の切れ目」とまでは言いませんが、切実なる将来不安もがあるようで・・・。

2003年9月 西野 津