景気敏感業

 

先日たまたま乗ったあるタクシーの運ちゃんと私の会話です。

 

私:最近景気のほうはどうですか?

運:昔は忘年会と新年会はかきいれどきだったんですが、最近は、どちらかだけにするお客さんが多いようで、1月でも暇ですわ。

私:宴会があっても電車のある時間に帰るんでしょうね。JR阪和線なんか、天王寺初の最終の快速は0:34ですからねえ。

運:そうですわー。自分のお金でしたら電車で帰るんでしょうな(笑)。

私:最近は会社の予算も厳しくなって、社用族も減ってるんでしょうね。

運:そのとおりですわ。バブルのときは、正直言うて社用族で稼がしてもらいましたわ。接待用やらで会社からタクシーチケットを何枚かもらっているサラリーマンが多かったんで、最  終電車過ぎてからは遠いところまで帰ってくれたんですが・・・。あるお客さんなんか、神戸で飲んでて、二次会は京都まで高速つこうてタクシー乗って行きはりましたからねー(笑)。

私:へー、なんと羽振りのいい。

運:飲酒運転が厳しいなってから、代行運転ゆうのがいっぱい出てきましたやろ。あれはタクシーより安うて、次の日車取りにいかんでよろしいさかいなー。お客さんにとったら便利よろしいわな。うちの会社もタクシーで代行はじめたんやけど、料金高いんですわ。それにお客さん降ろしたあとで、別のお客さん手あげてもうても乗せられませんねん。もう一人の運転手を営業所まで送っていかなあきませんさかいなあ。でないとその運転手仕事にならんからね。

私:タクシーは既成緩和で競争激しくなって、運転手さんも余ってんと違いますか?

運:そんなことおませんでー。タクシーの運ちゃんなんか、しょっちゅう募集してまっせ。みな、続かんのですわ。せやけど、募集広告見たら「月収40万円〜50万円」書いてますけど、なかなか・・・。僕が思うには、7割位の人は月収の手取りで20万円ないんとちゃいまっか。

私:どういう給与体系になってるんですか?

運:各日出勤で歩合制なんですが、月45万円稼いだらその60%が給料ですわ。その場合27万円になるんかな。手取りやったら、23万円くらいですわ。それ以下やったら、給料の割合がどんどん減らされるんでねー。せやから、一日3万円は稼がなあかんことになるんやけどね。

私:サラリーマンに比べたら厳しいですね。

運:私ら、会社のえらいさんからよく言われるんですわ。「タクシーの初乗りは660円や、なっ。660  円いうたら電車やったらどこからどこまで行けるか知ってるか?JR大阪駅から京都まで43  キロあるけど540円で行けるんやでー、それだけ肝に銘じてサービスせなあかんでー」ってね。

私:単純に目的地に行くだけやったら、その差は大きいですね。でも、週末しか車乗らんような人やったら、車持たんとタクシーを必要な時だけ呼んだほうが、かえって徳かも分からんけどね。しかし、大阪は失業率高いから、余計に商売厳しいんかなあ・・・。

運:お客さんね、大阪は失業率高い言いますけどね、その気になったらタクシーの運転手なんかいつでも募集してますさかいなあ、まあ、二種免許はいりますけど。大阪の人はそれだけ余裕あるいうことちゃいまっか(笑)。

私:なんだかんだ言っても、日本はまだまだ豊かなんでしょうね。餓死する人なんか滅多におりませんしね。もっと、切羽詰まらんと、本気で動かんのかなあ・・・。

 

タクシーの運ちゃんは景気に敏感だといいますが、なるほど、肌でそれを感じているらしく、いい勉強になりました。しかし、実によくしゃべる運ちゃんで、元は建設会社に勤めていて、リストラで転職したとのことです。収入は相当減ったとのことでしたが、趣味 (しゃべること) ?と実益を兼ねたその顔はいきいきして楽しそうでした。彼にとっては天職なのかも知れませんね。

 

ところで、タクシーはいまだにフェンダーミラーなのをご存知でしたでしょうか?運転手さんによれば、ドアミラーより見やすくて安全なんだとか。一般の車ではほとんど見なくなりましたが、安全性よりスタイルや流行に左右されるご時世なのでしょうか・・・。  

2004年2月 西野 津